松本明子インタビュー 後編

登山などのアウトドアにハマったタレント・松本明子さんが、"副業"として始めた軽キャンピングカーのレンタル店。芸能活動の合間をぬって、電話番や清掃、見送りなどを自ら行なっている。お客さんの笑顔がうれしい松本さんは、ついつい利益度外視のサービスもしてしまっているようで......。インタビュー後編では、徐々に認知度を広げつつあるレンタカー事業の運営や苦労について聞いた。


軽キャンピングカーのレンタカー事業を始めたタレントの松本明子さん 写真提供/松本明子

【若い客は「松本明子を知らない(笑)」】

ーー自身も店舗の運営に携わっているのですか?

松本明子(以下、同) 掃除と予約受付の電話番、車の点検、お客さまのお見送りとお出迎えは、芸能の仕事がない限りやっています。あと、お客さまのスマホで、車の前で一緒に記念写真を撮るサービスもしています。外国人の方はもちろん私のことなんて知らないですし、若い方にも「店員さんと写真撮れるサービスなんて珍しいですね」って(笑)。

 40年前にアイドルデビューした時の親衛隊が借りに来てくれることも。40〜50代のお客さまには「本当にいるんですね!」とおっしゃっていただけるんですが、やっぱり10〜20代は全然。もっと頑張らなきゃいけないですね。

 この間、大学生に「テレビ番組の『電波少年』って知ってる?」と聞いたら「知らないな」って。タレントだと伝えると「おばあちゃんに聞いてみます」と言われました(笑)。


インタビューに答える松本さん 撮影/山本雷太

ーー「タレントの松本明子さんの店」ということをいっさい知らずに車を借りる方もいるんですね。

 むしろそういう方のほうが多いですよ。純粋に車を気に入ってくださって、インターネットで予約をしてくださるというがほとんどです。そもそも、店で扱っている小さいサイズのキャンピングカーのレンタルって少ないみたいです。大きなキャンピングカーと違って初心者や女性でも運転しやすいところが人気なのかもしれません。

ーー利用するのはどういう方が多いですか?

 いろんな方がいらっしゃいます。50〜60代のシニアのご夫婦から、ファミリー、女性ひとりのお客さまも多いです。この間は、大学生の男の子4人が「四国一周してきました」って楽しそうに帰ってきました。行き先は北海道から九州まで全国各地です。

 最近は外国人も増えています。この前はシンガポールからカップルの予約があって、約1週間、関西方面に行ってきたとおっしゃってました。ドイツやイギリスの方もいましたね。

 事業を始めてあらためて実感しましたけど、日本人は働き者でお仕事の優先順位が上という方が多いですよね。「仕事ありきで、休みがとれたら予約します」という感じ。でも、外国人は長期の休みをとって日本に来られたり、パソコンさえあればどこでも仕事ができるとワーケーションに使う方も多いです。

【「松本明子のレンタカー」よりも「車がかわいいから」】

ーー料金はどれくらいなんですか?

 最大定員2人の「ザ・バグトラ」は9時間で3773円〜、24時間で5390円〜。定員4人の「ブギーライダー」は9時間で7623円〜、24時間10890円〜です。

 最近、冬の車中泊の寒さ対策に大きい電源バッテリーを買ったんですが、そのレンタル料金がバグトラより高くなっちゃって(笑)。レンタカー料金は安く提供しようと、スタッフ3人で相談して決めました。お客さまが喜んでくださって、またリピーターになってくださるのが一番ありがたいですからね。


ルーフテントがついた「ブギーライダー」


軽トラックの荷台にテントを設置した「ザ・バグトラ」

ーー利益は大丈夫なのですか?

 1年半前のオープン当初は、黒字にならずなかなか厳しかったです。ただ今年になって、芸能界の方が紹介してくださることが増えたり、徐々に知ってもらえているようです。

「松本明子のレンタカー」というよりも「車がかわいいから」と、テレビディレクターの方から「番組で使うので貸してほしい」と連絡いただくようになりました。

「私は?」って聞いたんですけど、「松本さんは結構です」と丁重にお断りをされました(笑)。

 その他にも、キャンプ系のYouTubeに取り上げられたり、ロッチの中岡(創一)さんやアンガールズの田中(卓志)さんなど事務所の芸人がテレビなどで言ってくださったり。本当にありがたいですね。

 その他にも、キャンピングカーの展示の依頼、自主映画の撮影、引っ越しなど、本当に多用途でいろいろなご連絡をいただいています。

ーーそれでは、今は順調に経営されているのですね。

 いやいや! 実はそんなことないんです。必要経費が何とかトントンで、黒字になればいいという程度。初期投資分はまったく返せていないです。事業1年目は年末年始も休みなくフル稼働で予約を受け付けていました。

 今は車3台ですが、ゆくゆくは車の台数もまた増やせたらいいですね。将来的には、地球に優しいエコカーも取り入れて展開していくのが夢です。

【過剰サービスでスタッフに怒られる】

ーータレント活動との両立は難しくはないですか?

 事業を始めてから2年目。とても忙しくて時空がわからなくなるくらいの時もありましたが、充実した濃い毎日を過ごしています。コロナ禍でタレントの仕事が急減した不安から始めた事業でもありましたが、ピンチをチャンスに変えられたかなという手応えもあります。

 芸能活動だけで40年間やってきて、この世界しか知らなかった。そんな自分が、いろんな方に協力していただいて、違う分野のつながりも増えて人脈も広がりました。振り返れば、初めての体験ばかりでした。


趣味の登山が事業を着想したきっかけだったという

ーー事業を始めて、うれしかった瞬間は?

 帰ってきたお客さまが「本当に楽しかったです」と言ってくださるときの笑顔が本当にたまらなくて。それが元気の源で原動力になっていますね。

 それで、望まれてないかもしれないんですけどついつい過剰サービスをしちゃうんです。私の顔写真入りのうちわも作っちゃって、お客さまに全員にもれなくお渡ししています。

 あと、延長料金をサービスしちゃったりしたことも。スタッフ2人に「その何百円が切実なんだ!」とよく怒られています(笑)。

おわり

インタビュー前編<松本明子が事務所社長に「どうかやらせて...」と直談判。車4台を一括購入してキャンピングカーレンタルの副業を始めた理由>

【プロフィール】
松本明子 まつもと・あきこ 
1966年、香川県生まれ。1982年、日本テレビのオーディション番組『スター誕生!』で合格し、翌年、歌手デビュー。その後、『進め!電波少年』『DAISUKI!』など人気番組に出演。現在まで、バラエティー番組、ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。コロナ禍で登山などのアウトドアに傾倒し、2021年、副業としてキャンピングカーレンタル事業をスタート。東京・方南町にオフィスアムズ(バンライフレンタカー東京杉並店)を構える。