Twitterを買収し、その直後に経営陣を一斉に追放したイーロン・マスク氏が、2022年10月中の全社的なレイオフを命じたことが報道により判明しました。

Elon Musk Is Said to Have Ordered Job Cuts Across Twitter - The New York Times

https://www.nytimes.com/2022/10/29/technology/twitter-layoffs-musk-jobs.html

The New York Timesに情報を提供した関係者4人の話によると、マスク氏は早ければ10月29日付でレイオフを開始すべく、管理者に向けて削減する従業員のリストを作成するよう命じたとのこと。レイオフの具体的な規模は明らかになっていませんが、7500人いる従業員の半分が対象になる可能性があります。

マスク氏によるTwitter買収の資金を融資した投資会社・Gerber Kawasakiのロス・ガーバーCEOは「マスク氏のファミリーオフィスの代表者から、50%前後の人をレイオフする予定だと聞かされました」と話しました。

マスク氏は以前、Twitterの従業員の75%を解雇する計画を発表していましたが、Twitter本社を訪問した際には「75%を解雇するつもりはない」と述べています。

イーロン・マスクはTwitterの従業員の75%を解雇することを計画 - GIGAZINE



レイオフが10月中と極めて迅速に行われるのは、11月1日に実施される従業員への「株式交付」を避けるためだと思われます。通常の場合、報酬の一部として実施される株式交付は従業員の給料のかなりの部分を占めます。マスク氏は買収契約の条項により、株式交付が行われる従業員には株式の代わりに現金を支払うことになっていますが、株式交付の前に従業員をレイオフすることで支払いを回避することができます。

マスク氏はまた、解雇したTwitterの元幹部にも手厚い退職金を支払わない可能性が高いとされています。企業の買収や合併により解任された役員にはゴールデンパラシュートと呼ばれる割り増しされた退職金が支払われるのが一般的で、今回の買収契約ではパラグ・アグラワルCEOらに2000万〜6000万ドル(約30億〜90億円)が支払われることになっていました。

しかし、マスク氏は以前アグラワル氏らを「ソーシャルメディア・プラットフォーム上の多数の偽アカウントについて自分とTwitterの投資家を誤解させている」と非難しており、今回の解雇が「正当な理由」と位置づけられれば買収契約の条項の対象外になる可能性が高いと、2人の関係者は述べました。

マスク氏が「参加自由の地獄絵図にはしない」と語る今後のTwitterに対しては、さまざまな反応が起きています。アメリカのテレビプロデューサーであるションダ・ライムズ氏は「イーロンの計画には付き合いきれません。さようなら」と述べて、Twitterを離れる意向を示しました。



また、SNSにおける偽情報の拡散などを監視しているNetwork Contagion Research Instituteの調べによると、マスク氏がTwitterを掌握した直後から黒人を差別するNワードを含むツイートが約500%増加、つまり6倍近くに跳ね上がっているとのこと。



これを受けて、人気プロバスケットボール選手のレブロン・ジェームズ氏はTwitterで「イーロン・マスク氏のことは知らないし、正直に言って誰がTwitterを所有しているかなんてどうでもいいです。しかし、もしこれ(差別的なツイートの増加)が本当なら、彼と彼の部下がこのことを非常に真剣に受け止めることを望んでいると言いたいです。ヘイトスピーチを言論の自由だと言っているろくでなしがたくさんいますから」と述べました。



こうした騒動のさなかにも、マスク氏は「焼きたてのパンとペストリーは、人生の大きな喜びのひとつです」とツイートした上で、「#FreeSpeech(言論の自由)」のハッシュタグを付けて「ついに『炭水化物は素晴らしい』という真実を、このプラットフォームで言えるようになったのです」と語りました。