マスマーケティングは、主流のポップカルチャーを否定し、ニッチな文化を受け入れるZ世代には効果を上げにくいことが、調査で明らかになった。そして、こうしたトレンドは、かつてないほど速く進行している。

メディアエージェンシーのホライゾン・メディア(Horizon Media)が、傘下のソーシャルコンテンツエージェンシーであるブルーアワー・スタジオ(Blue Hour Studios)と行った最新調査「The Gen Z Field Guide(Z世代フィールドガイド)」は、マーケターがTikTok世代を理解する手助けを目的としたものだ。Z世代が各種の人気アプリ上で生成した1000件以上のコンテンツを調査し、新たに生まれているテーマやグループを探った。聞き取り調査と合わせて、Z世代の興味を引いている5つのカテゴリー、計12種類のサブカルチャーが特定された。

「(Z世代は)もはや単純にひとくくりにはできない」と、ホライゾン・メディア傘下で文化および社会行動の調査を手がけるWHYグループ(WHY Group)の文化情報担当シニアバイスプレジデント、マキシン・ギュアビッチ氏はいう。「ただその細分化が、これまでよりもはるかに激しくなっている。私は、彼らのパッションポイントは何か、彼らがどんなことをして、どのように集まっているのかについて理解を深めたいと考えた」。

ギュアビッチ氏は、今回のガイドについて、よくあるオーディエンスの分類にとどまらず、Z世代に関する継続的な調査を提供し、これらのグループの進化に伴い更新していくことを目指したものだと、米DIGIDAYに述べている。WHYグループは手始めとして、特定のバーティカルやビジネス機会に注目するのではなく、Z世代の「パッションポイント」に焦点を当てることにした。

メインストリームは存在しない



調査によると、18〜25歳の大多数(91%)が、「主流」のポップカルチャーは存在しないと回答している。その代わりに、Z世代の消費者は、「ゲーマーガール」やストリートウェアから、コスプレイヤー、さらには男性用グルーミングやビューティトレンドのインフルエンサーである「カバーボーイ」まで、サブカルチャーやニッチなコミュニティを受け入れている。今回のフィールドガイドは、ソーシャルメディアのアルゴリズムの変化が速く、追いかけるのが容易でないZ世代の消費者とつながりを持つためのロードマップをマーケターに提供するものだ。

「マーケターが本当の意味でZ世代と出会うためには、彼らが進化し続け、流動的で、はっきりと捉えるのが難しい存在だと理解することが重要だ」とギュアビッチ氏はいう。「しかし現在、これまで以上にZ世代の(ソーシャル)アルゴリズムを理解する必要がある。彼らのアルゴリズムは、彼らの心を揺さぶり、彼らのパッションポイントを定義するものであり、また彼らを詳しく説明するものだ」。

そして成長するにつれて、Z世代はますます求められる消費者となり、トレンドのインフルエンサーとなっていくだろう。調査およびアドバイザリー企業のジェネレーションZプラネット(Gen Z Planet)によると、Z世代の購買力は2021年に推定3600億ドル(約53兆6500億円)に達している。彼らの嗜好やコミュニティを理解することは、ブランドが市場を生き抜く上で重要になるだろう。

以下に、ホライゾン・メディアによる主な調査結果と、特定されたZ世代のサブカルチャーについてまとめた。

調査によると、Z世代の消費者の64%が、パーソナライズされた体験をブランドに求めている。
彼らはまた、何かを発見するのにGoogle検索よりもソーシャルメディアに頼る傾向がある。そうしたアプリには、彼らのさまざまな興味に合わせたTikTok、YouTube、Discord(ディスコード)、テレグラム(Telegram)、Twitch(ツイッチ)が含まれる。
Z世代の約94%は、優れた番組や映画は「人間のダークサイドを暴く」ものだと考えている。これは、ホラーや犯罪系のコンテンツに心の解放を見いだすことへの関心の高さを物語っている。
調査に参加したZ世代の100%が、「新しい経験やスキルを得ること」は従来の学校教育よりも価値があると回答している。
ダイバーシティとインクルージョン(多様性と包摂)が重要――調査に参加したZ世代の82%が、自分には男女両方の性質があると思うと回答している。

Z世代のサブカルチャー



ゲーム:ホライゾン・メディアによると、このカテゴリーにおけるZ世代の潜在的なオーディエンスは推定1430万人。ゲームのサブカルチャーとして取り上げられているのが、「ストリートウェア×ゲーマー(Streetwear X Gamers)」と「ゲーマーガール(Gamer Girls)」だ。前者はMTV、eスポーツ、ファッション、音楽カルチャーを寄せ集めたようなもので、後者は、インクルージョンやライフスタイルの変化を背景とする。これらグループの年齢中央値は、20〜21歳だ。ブルーアワー・スタジオで戦略担当バイスプレジデントを務めるマット・ヒギンズ氏は、次のように述べている。「ブランドは、女性に焦点を当てたeスポーツチームを立ち上げ、この分野のオーディエンスが求める視覚的要素の強いソーシャルメディア体験にならい、アニメにインスパイアされたアパレルや、YouTubeやTikTokでの共同ブランドのコンテンツチャンネルを提供することで、コミュニティとファンダムを構築できる」。

エンターテインメント:このカテゴリーに属するコミュニティを、ガイドでは「ホラーヒーラー(Horror Healers)」と「ポエティックコネクター(Poetic Connectors)」と呼び、潜在的なオーディエンスは合わせて2550万人と、5つのカテゴリー中で最大のグループを形成している。ガイドによると、ホラーヒーラーは、ディストピア的な発想や犯罪物のコンテンツに一種の「逃避セラピー」効果を見出すサブカルチャーだという。ポエティックコネクターは、癒しや個人的な苦悩、手を取り合うことに関するコンテンツを愛好する。

教育:このカテゴリーに属する「サイエンティフィックエデュテイナー(Scientific Edutainers)」と「アダルティングハッカー(Adult-ing Hackers)」は、潜在的なオーディエンスが2440万人に上るという。アダルティングハッカーは、DIYなど従来の学校教育の枠を超えた自己学習を楽しみ、技術ツールやライフハック、実用的なアドバイスなどを愛好するグループだ。サイエンティフィックエデュテイナーは、実験の場を教室からソーシャルメディアへ移し、物事の仕組みをテーマに人々とつながり、それをエンターテインメントにする。

ファッション:このカテゴリーでは3つのサブカルチャー「マキシマリスト(Maximalists)」「リアルタイムファッショニスタ(Real-Time Fashionistas)」「アップスリフター(UP-thrifters)」が特定され、合計で1610万人のオーディエンスがいると推定される。これらのZ世代コミュニティは、自己表現、派手なトレンド、TikTokのバイラルスタイリスト、サステナビリティ、DIYファッションを好む。

ビューティ:「カーストコスプレイヤー(Cursed Cosplayers)」「ビューティーASMRティスト(Beauty ASMR-tists)」「カバーボーイ(Cover Boys)」の3つのサブカルチャーが、合わせて1150万人のオーディエンスを形成している。これらはファンタジーなメイクアップアート、独創的なコスプレ、感覚を刺激する体験、男性らしさを再定義する男性向けグルーミングなどのトレンドを好むグループだ。

[原文:Why mass marketing will not work on Gen Z - it’s all about subcultures]

Antoinette Siu(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:黒田千聖)