超希少な血液型が発見される、30年来の謎が解けたと専門家
血液型というと、A・B・O・ABの4つに分類するABO式血液型が有名ですが、赤血球にある抗原という物質の細かな違いによる詳細な分類では、これまでに40種類以上の血液型が見つかっています。新たに、原因不明の血液異常により赤ちゃんを亡くしてしまった母親の血液が非常に希少なタイプであったことから、44番目の新しい血液型が特定されました。
Missense mutations in PIEZO1, encoding the Piezo1 mechanosensor protein, define the Er red blood cell antigens | Blood | American Society of Hematology
NHS scientists discover new blood group system - NHS Blood and Transplant
https://www.nhsbt.nhs.uk/news/nhs-scientists-discover-new-blood-group-system/
September: er-blood | News and features | University of Bristol
https://www.bristol.ac.uk/news/2022/september/er-blood.html
UK Scientists Discover Ultrarare Blood Group System | Tech Times
https://www.techtimes.com/articles/281447/20221004/uk-scientists-discover-ultrarare-blood-group-system.htm
今回の研究のきっかけとなったのは、胎児の血液に異常が見つかったことから緊急で帝王切開をすることになった母子の事例です。赤ちゃんはその後、輸血などの懸命な医療介入もむなしく亡くなってしまい、原因も分かりませんでした。
このケースの原因究明のため、イギリスのブリストル大学と国立血液サービス(NHSBT)を中心とした国際研究チームが母親の血液サンプルを分析したところ、「Er型」という非常に希少な血液型であることが判明。これが原因で胎児と母親の血液が適合せず、母親の体が赤ちゃんの血液を攻撃してしまった可能性があることが突き止められました。
Er型に関しては、これまで「Era」という抗原が30年以上前に見つかっており、さらに「Erb」「Er3」の合計3つの抗原が特定されていましたが、サンプル数が少なく一体どのような物質なのかの詳細は不明なままでした。そこで、研究チームが遺伝子編集技術を用いて細胞からタンパク質を除去したり再導入したりする研究を行ったところ、既知の3つの抗原や新しく発見された2つ抗原「Er4」「Er5」が「Piezo1」というタンパク質と結合することが証明され、Er型が新しい血液型の系統であることが確認されました。
NHSBTのNicole Thornton氏は今回の研究結果について、「この発見は、血液型の遺伝的背景に関する30年来の謎を解くものですが、私たちにとって最も重要なことは、悲劇的に赤ちゃんを失った母親たちに答えを届けることができたことです」と話しました。
研究チームによると、この研究により珍しい血液型を調べるための検査方法が確立されたため、今後はまれな血液型を持つ患者にも最善の治療を提供することが可能になったとのこと。また、今回特定されたタンパク質は細胞の表面にごくわずかにしか存在しませんでしたが、そのようなケースでも抗原性を持つことが分かったため、輸血医療の上でも大きな発見だったということです。