小説家の鈴木光司が、自身が手掛けたABCテレビのドラマ『OTHELLO(オセロ)』(ABCテレビ毎週日曜24:50〜、テレビ神奈川毎週火曜23:00〜※TVer・GYAO! にて見逃し配信あり)の見どころや誕生秘話を語った。

鈴木光司氏 (C)ABCテレビ

同作は、『リング』『貞子』シリーズで「ジャパニーズホラー」というジャンルを確立した鈴木氏による完全オリジナル作品で、大阪の小劇団「ENGINE」(エンジン)の劇団員たちが1本のVHSビデオテープをきっかけに次々と怪奇現象に襲われるというストーリー。主演を生駒里奈が務める。

第3話(ABCテレビ21日、テレビ神奈川23日)には、怪しいテレビ局プロデューサー役として森脇健児が出演。怪奇現象の数々が劇団の売名行為になると企む劇団の主宰者・重森(橋本じゅん)が、知り合いのテレビ局プロデューサー・斉藤(森脇)に「幽霊騒動」を特集してもらおうとお願いするのだが、斉藤の登場によりさらなる不可解な現象が巻き起こる。森脇はテレビプロデューサーという役づくりを「こんな人、おったな〜」を想定してと語り、撮影現場を「何度もリハーサル、自主トレをしてお芝居を固め、アドリブなども飛び交う和やかな雰囲気でした」と振り返った。

現在、第1話・第2話は22日(24:55)までTVer、GYAO!で無料配信中。第4話に謎の霊能力者役でカメオ出演する鈴木氏のコメントは以下の通り。

■鈴木光司

――『OTHELLO』誕生秘話をお聞かせください。

企画は昨年(2021年)。この作品が放送される頃にはコロナ禍も収束して世間は明るいムードになっているだろうと考えていたんです。ホラー作品ではあるけれど、みんなで楽しくなれるような作品にしよう、と。僕は 「ホラー」をよくジェットコースターに例えるんですが、傾斜角が急であればあるほど興奮するでしょう? この作品では“怖さと笑い”その感情の振り幅を急傾斜であっちこっちに揺さぶって、観た後には突き抜けたような開放感を味わえる作品を目指しました。ホラーの “あるある”には決して陥らない、新しいホラー作品ですよ。

――物語は、劇団の稽古場で怪奇現象が起こる……というものですが、この設定というのは?

僕自身、作家になる前に劇団で文芸演出部に所属していたんです。そのときの経験がモチーフになっています。 実は、登場人物の遠山(須賀健太)は、劇団時代の僕がモデルでもあるんですよ。 僕自身は怖い体験をしたことはないんですが(笑)。ただね、劇場や稽古場って怪奇現象の宝庫でもあるんです。逃げ場もないですし、古ければ古いほどいわくつきの話が出てくる……。ホラー作品にふさわしい場所を考えるときに、“暗くて狭い場所”というのがあると思うんですね。それに加えて水気のある場所ということで井戸を舞台に設定したのが『リング』。『OTHELLO』では、逃げ場のない場所ということで劇団の稽古場でさまざまな怪奇現象が起きるという設定にしました。

――4話のカメオ出演、霊能者・太田無軌道のモデルは?

2000年頃に岐阜で“幽霊マンション騒ぎ”というのがあって、連日のようにワイドショーで取り上げられていたんです。その当時、僕は現地へ取材に行って、住人のみなさんに直接お話を聞いたんですよ。そうしたら、3階のバルコニーにいないはずの人が歩いている影を見たり、いきなりお皿が割れるラップ現象が起きたり……そうした怪奇現象がいろんなお宅で起きている、と。そのときに面白かったのが、全国から霊能者を名乗る人が「我こそは!」と、たくさん集まってきたという話で……。「怪奇現象の原因はこの木だ」と言ってその木を切るんだけど、怪奇現象は収まらない。次に現れた人は「この石が原因だ」と言ってその石を持ち帰るんだけど、また怪奇現象が起こる……。その都度、その霊能者たちは退場させられるんです。そんな霊能者の着想を得て、太田無軌道が誕生しました。

――お話を聞いていると、時代背景や、鈴木さんのこれまでのご経験といったエッセンスが盛り込まれた作品となりそうですね。

作品というのは、自分の経験から創作の種が生まれるものなので、かなり盛り込まれています。そして、ホラー作品ではあるけど、最終話まで観ていただけると元気が出る作品になっています。『OTHELLO』というタイトルの意味をみなさんそれぞれに感じていただきながら、最後は明るく楽しい気分になってもらえたらと思っています。