by Mike Peel

欧州宇宙機関(ESA)がロシアの国営宇宙企業・ロスコスモスと共に進めている火星探査計画が「エクソマーズ」です。ESAのヨーゼフ・アシュバッハー長官が、「ESA評議会は、ロシアとウクライナの戦争が続いていることを受けて、エクソマーズにおけるロスコスモスとの関係を公式に断ち切った」ことを発表しました。



ESA terminates Russian cooperation with ExoMars rover - CNN

https://edition.cnn.com/2022/07/12/world/exomars-terminated-russia-european-space-agency-scn/index.html

Europe Aborts Joint Mars Mission With Russia - The Moscow Times

https://www.themoscowtimes.com/2022/07/13/europe-aborts-joint-mars-mission-with-russia-a78284

エクソマーズは「火星での生命の痕跡の探査」「水分と表土物質の科学的分布の特定」「将来的な有人探査における危険性の特定」などの目的を掲げ、複数の探査機械を火星に送りこむ計画です。計画そのものは2005年にESA評議会で承認され、2009年からはNASAも参加したものの、2012年にNASAはエクソマーズからの撤退を発表しています。

エクソマーズの火星着陸探査機・カザチョクは2018年に打ち上げが予定されていましたが、開発の遅れから2020年に延期。さらに新型コロナウイルスの世界的流行を受けて、2022年に再延期されたばかりでした。



by Kirill Borisenko

また、自走型の火星探査車であるロザリンド・フランクリンも、2020年7月に打ち上げられてミッションが開始される予定だったものの、新型コロナウイルスのパンデミックによって2022年に打ち上げが延期された状態でした。



by Cmglee

しかし、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻したことを受けて、アメリカやヨーロッパはロシアに対する経済制裁を実行。これに伴い、ESAは「ヨーロッパの価値観を完全に尊重して宇宙計画を開発し実施することを義務付けられた政府間組織として、私たちはウクライナへの攻撃の人的被害と悲劇的な結果を深く嘆いています」と述べ、エクソマーズを2022年3月に一時停止すると発表しました。

ロシアの軍事侵攻により欧州宇宙機関の火星探査ミッション「エクソマーズ」が停止、ロシアに代わるパートナーの検討も - GIGAZINE



そして、アシュバッハー長官はTwitterで、2022年7月12日付けで「ESAの評議会が、一時停止されているロスコスモスとの協力関係を正式に終了するように命じました」と明言しました。これにより、カザチョクもロザリンド・フランクリンも、打ち上げの計画が一度白紙に戻ることとなります。

アシュバッハー長官はCNNに対して「地政学的にはロシアとの関係を断ち切る必要があることは明確で、この決定はESAの加盟国によってなされました。足かけ40年間も火星探査ミッションに取り組んできたすべての科学者とエンジニアにとっては本当に残念なことですが、他に選択肢はありません」とコメントしています。

今回の決定でロシアのロスコスモスとの協力関係が断ち切られることは明らかとなりましたが、エクソマーズそのものが完全に終わったかどうかは不明です。アシュバッハー長官はTwitterで、詳細については2022年7月20日に開催されるメディアブリーフィングで発表するとしています。