Amazonが新たに反競争的慣行の疑いでイギリス競争・市場庁の調査を受ける
Amazonが、自社とつながりのある小売業者と、プラットフォーム上で商品を販売しているサードパーティ小売業者の2つの扱いに差をつけているという疑いについて、イギリス競争・市場庁(CMA)が調査を開始したことを明らかにしました。
CMA investigates Amazon over suspected anti-competitive practices - GOV.UK
https://www.gov.uk/government/news/cma-investigates-amazon-over-suspected-anti-competitive-practices
https://news.sky.com/story/amazon-being-investigated-in-uk-for-practices-which-may-give-customers-worse-deal-12646765
Amazonで販売されている製品のいくつかはAmazonまたはAmazon独自の小売業者を通じて供給されていますが、大部分はサードパーティの小売業者によって供給されています。しかし、Amazonは両者の扱いに差を付け、自社の利益に直結する小売業者をプラットフォーム上で優位に立たせているのではという指摘が以前から行われており、欧州連合や欧州委員会などが大規模な調査を実施していました。
2020年、欧州委員会は調査を行った上で「Amazonが販売データを活用してサードパーティの小売業者に損害を与えた」と非難しました。この販売データには収益や出荷情報、販売者別の購入数などが含まれており、例えば「Amazonは自社の小売業者だけに顧客のオファーを集中させることができた」などというのが、欧州委員会などの主張でした。
こうした流れを受け、CMAも新たに同様の調査に乗り出すことを今回明らかにしました。CMAは欧州委員会を始めとするEUの規制当局と協力し、独自の調査を実施するとしています。
CMAは3つの主要な調査目標を掲げています。1つは「Amazonがサードパーティの小売業者のデータを収集して活用する方法」で、これは上記と同様、Amazonが販売データを活用して競争上の優位を保っていたのではないかという懸念に応えるものです。2つ目は「Amazonはユーザーが製品を購入する段階で自社小売業者の製品を優先的に割り当てていたのではないか」というもので、Amazonはこのことを利用して自社小売業者が扱う製品を目立つように配置し、「今すぐ購入」などのワンクリックオプションで顧客からのアクセスを容易にしていたのではないか、という懸念が持たれています。これは欧州委員会なども問題視した点。
3つ目は「小売業者がプライムラベルを付与して製品を販売するために設けられた基準」について。小売業者はプライムラベルを得ることで、Amazonの有料会員サービス「Amazonプライム」のサービスである配送料無料などのオプションを顧客に提供することが可能になりますが、これを得るための基準にある種の反競争的慣行が含まれているのではないか、とCMAは懸念しています。また、Amazonの配送ネットワークを小売業者に提供するサービス「フルフィルメント by Amazon」についても調査が行われる予定。
CMAの法務統括責任者を務めるサラ・カーデル氏は「Amazonが自社の小売業者や自社の配送ネットワークを使用する小売業者を不当に後押ししているかどうかを、慎重に調査することは正しいことです。イギリスの何千もの企業がAmazonを使用して製品を販売しており、競争の激しい市場で事業を展開できることが重要になってきます。不当な競争は消費者に本来より高い価格や低品質な製品を表示する事につながりかねず、正式な調査によりこの問題を検討していきます」と述べました。
なお、前述の欧州委員会などの調査についてはひとまず終止符が打たれており、Amazonは小売業者により多くのデータを提供し、購入者に幅広い製品の選択肢を提供することでEU規制当局との合意に至ったことが報じられています。
Amazon to share more data with rivals after EU antitrust deal | Financial Times
https://www.ft.com/content/a6b5032f-1913-40e3-a5fc-0ea26dd48b8b