社説で東京オリンピック中止訴えた朝日新聞 ホームページでスポンサー継続の方針示す - 岸慶太
※この記事は2021年05月26日にBLOGOSで公開されたものです
開幕まで2ヶ月を切った東京オリンピック・パラリンピックをめぐり、オフィシャルパートナーを務める朝日新聞社が26日付朝刊で、「夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める」と題した社説を掲載した。
新型コロナウイルスの感染収束の見通しが立たない中、新聞社が社説として東京五輪の中止を訴えるのは、長野県の信濃毎日新聞(23日付朝刊)を皮切りに西日本新聞、沖縄タイムスのブロック紙・地方紙だけだった。全国紙が五輪中止論を前面に押し出した社説を掲載するのは初めてとみられる。
報道機関が五輪スポンサーを務める弊害がかねて指摘されてきた中、中止を訴える社説を掲載した朝日新聞は同日、公式ホームページ上で「東京2020オフィシャルパートナーとして」とする文書を公開。オフィシャルパートナーを務める意向を示す一方、「五輪に関わる事象を時々刻々、公正な視点で報じていくことに変わりない」と表明。「社説などの言論は常に是々非々の立場を貫く」と説明している。
オフィシャルスポンサーは継続 ホームページで表明
文書は、26日にホームページ上に「お知らせ」として掲載された。
オフィシャルパートナーに名乗り出た経緯について、オリンピック憲章の理念に共感したことに加え、「多様性と調和」を掲げた大会ビジョンに賛同したことを挙げている。大会の開催に賛否がある現状に言及しつつ、「感染状況などを注視し、オフィシャルパートナーとしての活動を続ける」とした。
五輪スポンサーとなったことで、大会運営への批判など報道機能が十分に果たされないことを懸念する声は大きい。この点について、2016年1月に大会組織委とオフィシャルパートナー契約を結んだ当時に「オフィシャルパートナーとしての活動と言論機関としての報道は一線を画す」としたことを振り返り、今後の報道について「多角的な視点からの議論や提言に努める」と誓っている。
社説ではオリンピックの中止を訴え 自社の立場について言及見られず
朝日新聞社は26日付朝刊で、「夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める」とした社説を掲載。通常は2本の社説が載るスペースで1本を大々的に載せる“一本社説”の形で、社の意見が強く打ち出されている。
東京都などに出されている緊急事態宣言について、再延長が避けられない状況であると現状を指摘しつつ、「冷静に、客観的に周囲の状況を見極め、今夏の開催の中止を決断するよう菅首相に求める」などと強く五輪中心を訴えている。
自社が五輪オフィシャルパートナーを務めていることに関する言及はない。
週刊誌報道が影響? 推測する意見も
社説は同社ホームページ上で26日午前11時半現在、無料で全文が公開されている。社説にもかかわらず同社の「アクセスランキング」で1位に躍り出るなど、近年では異例の事態になっている。
Twitter上では今回の社説について、「姿勢に賛同する」「インパクトは想像以上に凄まじい」などと評価が目立つ一方、「周りに押されて社説は価値がない」「遅すぎる」との意見も目立つ。
小学館のNEWSポストセブンが22日、『五輪スポンサーに雁首揃える大新聞6社に「開催賛成か」直撃』と題した記事を公開し、新聞社の回答に批判が集まったことが影響したのではと推測する意見もあった。