腰はズラしたほうがイイ?【教えてネモケン095】(教えてネモケン)
A.一般公道ではタイヤの幅でちょっとズラすほうが曲がり方が安定します
細いタイヤだとこぶしでひとつ、ワイドなタイヤではふたつほどズラすと曲がりやすく感じます一般公道では、曲がりくねったワインディングでも、サーキットのように膝を擦るほど深く腰をズラす必要はありません。なぜならサーキットのように数秒間とか、長い時間と距離を旋回したままということはあり得ないので、そこまで重心を下げても旋回が強まるまでの効果がないからです。
それに下半身に次いで上半身も大きく移動する動きが、右から左へと忙しくリーンを繰り返す操作でプロでなければ車体を揺すったりしやすく、百害あって一利なしだと思います。
もちろんGPライダーの真似を楽しみたい気持ちもわかりますが、アクションに気を取られて曲がりきれなかったり対向車を驚かせたりしないよう重々注意してください。
冒頭のイラストを見てください。バイアスタイヤなど、ナロウなタイヤのバイクであれば、腰を全く動かさないリーンウイズのままリーンしても問題ない……と言いたいところですが、ほとんどのライダーが腰を捻ったり上半身を内側へ入れるなど、身体の態勢で車体を傾けようとしているため、この無駄な動きでリーンがはじまるまでのタイムラグを生じます。
そこで腰をこぶしひとつだけ、曲がろうとするイン側へ直前にズラしましょう。そしてイン側の下のほうへ身体の重心が移動するように下半身のチカラを抜きます。これで最初からタイヤのエッジを中心に曲がりはじめるのでタイムラグがなくなり正確なライントレースが可能になります。
スーパースポーツのようにロープロファイル(扁平)でワイドなタイヤでは、こぶしをふたつほど少し多めにズラします。タイヤが太いので、それだけ横移動しておいたほうがすぐにリーンをはじめることができるからです。
ただあらかじめ腰をズラしたとき、アウト側のお尻に体重を載せておき、リーンと同時にイン側の下半身をダラッと脱力するように全体でチカラを抜きます。
どちらもイン側のステップへ体重を載せず、下半身のホールドはアウト側の太ももで燃料タンクのニーグリップ部分とシート座面で押さえる感じにしておきます。
また腰をズラす動きはシート座面を滑らせるようにスッと小さく素早く済ませましょう。腰を浮かして動くと、体重が抜けたり加わったりで車体が上下に揺れて、リーン直前の安定性を損ないます。
リーンの直前に腰をちょっとズラすアクションに慣れてきたら、この態勢をコーナー手前の減速をする区間からあらかじめ身構えておくと、ブレーキングで腰がシートの上を滑って両腕を突っ張って支える必要がなくなります。
こぶしをひとつ、もしくはふたつ腰をズラした姿勢で、アウト側のブーツでステップをちょっとだけ前に蹴るようにして、アウト側の膝で太ももからお尻を後ろへ突き出す感じにするだけで、腰は減速Gでシートの上を滑っていかなくなります。
基本はリーンウイズで、無駄のない美しいフォームで走りたいと思っているライダーには、いつもアクションを伴わないとまともに乗れないのか、といぶかしがられてしまいそうですね。
リーンウイズの人車一体で颯爽と駆け抜けるのは、ひとつの理想であるのは間違いありません。
ただリスクのないアベレージで走っていても、カーブの大小や対向車など状況は刻一刻と変化します。そうした状況へすぐ対応できる含みも込めて、ちょっとだけ体幹で車体を操作する重心移動のアクションを心がけていたほうが良いように思います。
微動だにしないリーンウイズも可能ですが、傍から見て何もしてないようで、ベテランのリーンウイズはそれこそこぶしひとつの重心移動を身体の中でやっていたりします。カンタンではないので、いずれ身につけるのを目標に、小さくクイックに車体を揺すらない重心移動をまずは覚えていきましょう。