【Royal Enfield Classic 350 試乗インプレ!】 日本車にはない英国カルチャー単気筒の逞しさ Part2(このバイクに注目)
Part2では、RIDE LECTUREでお馴染みの平山ことみさんに、Classic350を試乗してもらったインプレッションからはじめよう。その馴染みやすさは圧倒的で、発進しやすい半クラッチも手伝って、走り出してそれほど経たないうちに楽しそうにシフトアップやコーナリングを楽しみだしていたほど。
どちらかというと、カーブには警戒心が強い平山さんだが、楽しめるほど気持ちが軽くなった理由はふたつだった。
ひとつはコーナリング中の安心感だという。路面には必ずある程度の凸凹など小さな不整でも、警戒心が強いうちは伝わってくる振動が気になる。
それがClassicではほとんど伝わってこない不思議な安心感に浸れるのだ。確かにこのバイクの前後サスはよく動き、柔らかい印象に終始する。とくにフロントは前輪のタイヤ踏面が路面の不整を拾っているのを遮断しているようなフィーリングだ。
しかし遮断されてしまうと、逆に不安になったりしないだろうかと思われたかも知れない。
そこがこのバイクの秀逸なところで、路面の小さな振動は吸収しつつ、前輪のグリップ感となるややアンダーステア気味な手応えがシッカリある。
もちろん、そんなキャリア・ライダーの感性が平山さんにあるわけではない。しかし前輪のグリップ感は、傾いたままでも横方向へ微動だにしない安定感として伝わるのだ。よくわからないけれど、安心感があって怖くない、そういわせる理由はたとえキャリアが浅かろうがココに集約されている。
しかも19インチという前輪の、ある種の反応が穏やかで曖昧さが功を奏してもいるのだ。’60年代に黄金期を迎えていた英国ビッグツインの、誰でも馴染めて楽しめるハンドリングの原点はいまも健在なのを再確認させてくれる。
とりわけ前後のサスのリバウンドの長さ、つまりライダーや車重で沈み込んでいるストロークが、ひっきりなしによく動いて、エンジンの重心位置やステアリングヘッドの位置や角度、さらにはリヤスイングアームのピボットと後輪接地点との関係など、設計時のアライメント通りにライダーが操作できない状況でも、曖昧に緩和する効果でリーンするときなど常にバランスの良さをキープできていて、大きな安心感としてライダーに伝わっているのだ。
これはかなりのハイアベレージで攻めたときに、そろそろやめといたほうが無難ですサインで自身でも確認していた基本特性で、ペースがもっと遅いときでも破綻方向へ操作した場合のアラートとして、ゆっくり曲がりにくくなるのを平山さんも感じていた。
じつはこれが平山さんのふたつ目ではなく、彼女は何とシッティングポイントを変えると、小さくきついカーブと、大きめの緩いけれどスピードがやや出ているカーブでの曲がり方で使い分けられると言いだしたのだ。
じつは調子に乗ってカーブで膨らんでしまい、そこから慎重に走ったら前寄りだと小さいカーブ、ちょっと後ろに引くと大きめのカーブで最初に曲がりやすいというのに気づいたという。まさに仰る通りで、こうした特性こそ一朝一夕ではつくり込めない積み重ねが必要だ。世代が刷新されても、同じ単気筒を搭載する車体との組み合わせを積み重ねたノウハウなくしてこうはいかない。
日本車が経験しなかったノウハウに脱帽!
Part1でお伝えした概要で、もう少し突っ込んだ解説が必要なひとつが単気筒のエンジン。日本製シングルスポーツは、中型クラス以上は生産台数の関係でオフロード系バイクと共有する宿命にあった。これが何を意味するかといえば、オフロード系エンジンは瓦礫のような滑りやすい箇所を走るとき、バランスをとるためにクイックなスロットル・レスポンスが必要なことからビッグボアでショートストロークに設定するのと、大きなギャップの乗り越えでエンジンの底を衝突から護るためロングストロークを避けるのが大前提だ。
つまりロングセラーだったSR400や、かつてマニア好みだったGB400もオフ系と共有する単気筒のためショートストロークで、最近ロイヤルエンフィールドと同じインドのマーケット向けに加わったGB350が、ボア70mmでストロークが90.5mmの、日本車としては珍しいオンロードスポーツ専用のロングストローク単気筒ということになる。
対してロイヤルエンフィールドは、戦前からの単気筒の歴史に積み上がるカタチで1949年にデビューしたBulletがこの系統のルーツ。その発展型が2009年にClassicと命名され10年で300万台もの成功を収めた。
この新車で買えるビンテージとも呼ばれたClassicを、最新の厳しい規制であるユーロ5をクリアする、完全刷新をはかったばかりのNewエンジンが今回のモデルに搭載されている。
最新の燃料噴射から点火系まですべて電子制御されたロングストロークの単気筒は、70年以上のノウハウから最重要ポイントでもあるクランクまわりの慣性力、俗にいうカウンターバランサーとの構成から設定まで、実に絶妙な按配となっていて、イージーな発進を可能にしている粘りと、繋がってからの加速でライダーの感性に馴染みやすい、湧き出るような増え方をする逞しいトルクが何とも絶妙。つくづく積み重ねたノウハウの厚みを感じずにはいられない。
たとえば単気筒であれば、パルシブな鼓動を感じるものの、それは振動や音だけで評価されがちだ。しかし頼れる単気筒の奥深さは、エンジンのトルクやパワーが常に2次曲線的に盛り上がる、ある種の生命体的な弾力といったら良いのだろうか、身を託したくなる感性に尽きる。何やらこむずかしい言葉を並べてしまったが、何を言わんとしたのかは、Classic350を試乗されれば数分で理解されるはずだ。それほど、明確な違いをこの単気筒はアピールしてみせる。
そしてPart1でも触れた、停車寸前までフラつかない安定感など、キャリアが浅くても、そしてベテランでも気疲れしにくい親近感がイイ。
走行写真をご覧のように、ライダーが乗っていても350の中型クラスを思わせない大きさも好感が持てる。何もムリしてビッグバイクに乗らずとも、より楽しめる身近さを優先するのも正しい判断だと思う。
バイクを手に入れたら、早く馴染んでより遠くへ、そして山々を駆け抜けるバイクならではのエンジンやフットワークでライディングを楽しめるようになるほど、この素晴らしい相棒とのバイクライフが人生を豊かにするのを噛みしめられる。
そんな良き水先案内ができるバイクの1台であるのは間違いない。
Royal Enfield Classic 350 試乗インプレ、Part1はコチラをチェック!
SPECSpecificationsROYAL ENFIELD CLASSIC 350エンジン空冷4ストロークOHC2バルブ単気筒総排気量349ccボア×ストローク72×85.8mm圧縮比9.5対1最高出力19.94hp/6,100rpm最大トルク27Nm/4,000rpm変速機5速車両重量195kgサスペンションF=テレスコピックφ41mm正立R=スイングアーム+2本ショックタイヤサイズF=100/90-19
R=120/80-18全長/全幅/全高2145/785/1090mmタイヤサイズF=120/70ZR17 R=200/55ZR17軸間距離1390mmシート高805mm燃料タンク容量13L価格57万7,500円~