右から飯尾氏(イベント・運営担当)、川又氏(広報・デジタル担当)、千葉氏(デジタル担当)、矢野氏(マーケティング・FRM担当)【写真提供:横浜F・マリノス】

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【短期連載│第1回】準備万端⁉ チームと一緒に僕らもベトナムへ飛び立ちます

 横浜F・マリノスでマーケティング担当を務める矢野隼平氏が、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)2022の裏側を伝える短期連載をスタート。

 第1回は、クラブ内や関係各所とのやり取り、「スリーブバッジ」が届かないハプニングをはじめ、出発前の準備に奮闘するスタッフたちの様子をお届けする。

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 こんにちは。そして、帯同記を覚えてくださっている方はお久しぶりです。横浜F・マリノスがAFCチャンピオンズリーグ(ACL)2022に出場することに伴い、約1年半ぶりに短期連載でACLの裏側をお伝えすることになりました、横浜マリノス株式会社 マーケティング担当の矢野隼平と申します。前回はカタールにて開催されたACL2020の裏側をお伝えさせていだきましたが、今回も私なりの目線でお届けしていきます!

 ちなみに、ACLでは「チームマネージャー」というポジションを担当しております。このチームマネージャーという役割は、選手・スタッフの移動や滞在するホテル、練習、試合といった滞在中に訪れるさまざまなセクションを管理・調整します。

 ACL2022は、まずグループステージ6試合が集中開催で実施され、F・マリノスが所属しているグループHはベトナム、ホーチミンでの開催となります(4月16日に初戦を迎えます)。まだ出国前ですが、今回はACLに向けた準備について取り上げていきます。

最初のネタの提供者? 多くの人に愛される緒方ホペイロの戦いはすでに始まっている

 試合に向けて、用具の準備、選手が着用する練習着やスパイクのケア、ロッカールームの準備など、数多くの業務をこなすホペイロ(用具係)。F・マリノスで、そのホペイロを担当しているのはファン・サポーターの皆さまの間ではお馴染みの緒方圭介です。多くの選手がリスペクトを口にするほど信頼の厚いスタッフである彼から3月下旬に電話がかかってきて、「大変です。帯同記のネタができました!」ということで、急いで彼がいる倉庫へ。

 到着すると、約100箱のACL用荷物が入った段ボールが届いていました。この山積みになった荷物の中身は、ユニフォームや練習着など、選手が着用する一式です。引っ越しを経験したことがある方は分かると思いますが、100箱の段ボールの中身を確認して整理していく作業の大変さは並大抵のことではありません。緒方くん曰く「畳むだけで丸3日かかります」とのことで、選手・スタッフが試合や練習で綺麗なユニフォームやジャージで挑めることは、決して当たり前ではないのだと再認識しました。

 そして彼は作業をしながら、常に“感謝”の言葉を述べていました。というのも、コロナ禍や社会情勢の影響により海外からの出荷が遅れており、今回届いた物品一式も例に漏れずの状況でした。そのなかで、サプライヤーであるアディダス様やマーキングを担当してくれている業者様が最大限のサポートをしてくださり、ACLに間に合わせてくれました。チームマネージャーの立場からも厚く御礼を申し上げます。

 大変な状況下で多忙な仕事と向き合う緒方くんですが、自らが大変であるということはほとんど口にしません(しきりに眠いとは言っていましたが……笑)。代わりに周囲への感謝を日頃から語ってくれており、そのような姿勢を崩さない彼だからこそ、多くの人に愛されるのだと思います。ベトナムで奮闘する彼を始めとする裏方スタッフの姿も伝えていこうと思いますので、今後をご期待ください。

情報共有は重要 関係各所とのミーティングは国際大会では重要ミッションの1つ

 国際大会であるACLは連絡を取り合う社外の関係者が多く、その分、クラブ内でも多くの人間が携わっているので、各々が担当している情報を社内で随時共有することはとても重要です。F・マリノスで言うと、チームマネージャーである私が選手スタッフの登録関係、現地でのスケジュール調整(主にトレーニングや食事)、レギュレーションに沿った競技関連資料の提出・管理を行い、旅行代理店の担当者がVISA関連、ホテル・航空手配を行い、各事項の方向性の策定・決定をチーム統括本部や監督・コーチが行います。また、私の担当範囲で言うと、各事項によって連絡を取り合う担当がAFC(アジアサッカー連盟)なのか、ベトナムサッカー協会なのか、それともJリーグなのか、ホテルなのか等々、分かれてきます。

 3月下旬、各担当がマリノス本社へ集まり、現状の擦り合わせを実施しました。主な議論の流れとしては、私と旅行代理店の担当者が現状の共有を行い、そこに対する整理やチームからの新たな要望をチーム統括本部から受けるというもの。さまざまな議題はありましたが、特に食事メニューに関しては、カタールでACLが集中開催された一昨年の経験を基に、最も活発な議題となりました。ホテルとの擦り合わせとは別に、日本で準備できるもの・できないものを区別する作業を行いました。また、コロナ禍は続きますので、出国前と帰国後の対応、現地でのPCR検査スケジュールの確認、どのような体制で感染症対策を行うかを詰める作業も行いました。

 この会議の1番の目的は、チームが勝利する可能性を少しでも大きくすること。選手・スタッフが不自由なく快適にベトナムでの日々を過ごしていけるよう、引き続き関係者間で調整を進めていきます。

飛び立つ前からトラブル続き? スリーブバッジが届かない!

 ACL出場に際して、ボールやキャプテンマークなどさまざまな備品の提供を受けますが、そのなかに「スリーブバッジ」があります。これは、ACLに出場するクラブのユニフォーム袖にある大会ロゴのバッジのことで、このバッジが届き次第、選手着用分・グッズ販売分のユニフォームに取り付けていきます。ACLに出場する各Jリーグクラブは利用するバッジの数が多く、無料提供分では圧倒的に数が足りないため追加で購入しますが、その追加購入分(1000枚以上)がいつになっても届かないというトラブルが起きました。

 1月中旬に発注して、「3〜4週間待ってね」と言われてから音沙汰がなく、何度も催促を行い、ようやく4月5日に到着しました。海外とのやり取りではトラブルが頻発しますが、これは本当に焦りました……。「試合に間に合わなかったらどうしよう」「ご購入していただいたお客様に届かなかったらどうしよう」という不安が頭をよぎる毎日でした(笑)。

 前述したように、コロナ禍や社会情勢により海外との物理的な移動を伴うやり取りは不安定なので、スケジュール引きが難しいと痛感した次第です。いずれにしても無事に4月16日の初戦に選手の手元へも、ご購入いただいたお客様の手元へもユニフォームが届くよう関係各所で作業を進めています。

いよいよベトナムへ ビジネスマンという立場でもエンブレムを背負いともに戦う

 特に海外遠征となると、選手・チームスタッフのみで試合をこなしていくことが難しく、さまざまな方々のご協力が必要となりますが、フロントスタッフもしっかりとチームをサポートしていきます。写真の4名は事業(フロント)スタッフとして働いており、ベトナムに帯同します。普段は普通の会社員ですが、ACLだけは特別。日頃行っている、“どのように利益を生み出すか”、“どのように来場者数を増やすか”、“どのように事業を回すか”などの考えは一旦置いておき、練習も試合も胸にエンブレムを付けて、ただチームの勝利をサポートできるように動きます。

 とは言え、会社員である我々にはもちろん、ACL以外の通常業務も山積みになっています(笑)。日本に残る仲間にもサポートしてもらいつつ、試合・練習・食事・睡眠を除く時間は、しっかりとホテルの自室でパソコンと向き合っていく所存です(笑)。

 現地では4人で力を合わせて、広報・メディア対応、デジタル企画の対応、スタジアムにご来場されるファン・サポーターの対応、試合・練習のサポート、ホテル滞在時のサポートなどを行いますが、名もなき会社員がチームとともにACLという舞台に立てることは何物にも代えがたい経験ですよね。この環境に感謝をしながら、ベトナムでの日々を過ごしていきます。

横浜FMクラブ創設30周年のメモリアルイヤーにアジアを勝ち獲る

 今回の帯同記はここまでとなります。今年は横浜F・マリノスにとってクラブ創設30周年のメモリアルイヤーです。先日の4月2日に日産スタジアムで行われた30周年記念試合では見事に勝利し、ACL前の最後のホームゲームで2万人を超えるファン・サポーターの皆さまとともに喜びを分かち合いました。まだまだ続くコロナ禍で海外遠征をできることに感謝をし、出発までの準備を進めていきます。

 次回は出国、入国、ベトナム現地の雰囲気、初戦・2戦目についてお届けする予定です。お時間がある際に是非ご覧ください!(横浜F・マリノス マーケティング・FRM担当・矢野隼平 / Shumpei Yano)