春はうつの危険性が高い季節。呼吸や温活、覚えておきたいセルフケア
気温が徐々に上昇し、気持ちが弾む季節が来ましたね。新生活もあり、いろいろ気合を入れたくなるものの、春にはじつはメンタル不調を起こしやすい、と指摘するのはうつ専門メンタルコーチで、公認心理師の川本義巳さん。うつ状態になる前に、この春心がけたいことを教えてもらいました。
春は自律神経の乱れに注意!うつになる危険性も
今年も春がやってきて、桜が楽しめる季節になりました。気温も上がり、コートもいらなくなり、なんとなく身軽に感じます。そんな心地よい季節になったにも関わらず、調子を崩してしまうことがあります。
●そのだるさ、自律神経の乱れ?
なんとなくだるさを感じたり、息切れや軽いめまいがあったり、頭痛や胃腸の具合が悪くなるなど、春先になって急にそういう症状が出始めます。睡眠にも影響が出たりする人もいます。
これらの症状について、たびたび出てくるキーワードがあります。それが「自律神経の乱れ」です。自律神経とは、呼吸や消化、血圧などが正常に働くように24時間やすみなく働いている神経です。自律神経には交感神経と副交感神経があって、昼間など活動的な時間帯には交感神経が優位になっています。なので興奮とか緊張が高めの状態。副交感神経は、その反対で夜に休んだり睡眠をとったりするときに働きます。こちらはリラックスさせるための神経と言われています。
私たちの体は環境に適応するために、体温や血流など体の機能を変化させます。じつはこの春先の時期は、気温の差は激しい時期でもあります。朝夜の気温差もありますが、日によって初夏のような暑さがあったり、冬に逆戻りしたような寒さがあったりもします。これに自律神経は対応しようとするのですが、何らかの理由でこのバランスが崩れるときがあります。そのときにさっき書いたような症状が現れてきます。この状態をよく「自律神経失調症」と呼ぶことがありますが「聞いたことある」という方も多いことでしょう。
●ストレスによっても乱れやすい
この自律神経の乱れですが、気候変動だけでなく、ストレスによっても引き起こされます。
例えば仕事でストレスを抱えている場合、体はずっと緊張をしています。そしてその緊張は夜寝る前にも続いています。つまり交感神経優位な状態が長く続くわけですね。
じゃあ眠ってしまったらそれは解除されるかというと、そういうことではなくて睡眠中も交感神経優位になってしまうことがあります。その結果、眠りが浅かったり、夜中に何度も目が覚めたりということが起こります。うつ傾向の人から「朝起きるとすごく体がだるい。ちゃんと睡眠をとっているのになぜ?」と聞かれることがありますが、これは筋肉の緊張が取れずにずっと体がこわばったまま睡眠をとっているからです。夜中ずっと筋肉に力を入れているわけですから、それは疲れますよね。
●うつが増えるのも春の特徴
じつはうつ傾向の人が増えるのもこの時季です。なぜなら日常的に抱えているストレスに加えて、気温や天気の変化に頻繁に対応しなければならないからです。うつ傾向の人は日常的に「不快な感覚」に対して敏感です。そのため、少しでも不調があるとそれが気になって仕方なくなります。その結果、そのことばかりを考えるようになり、さらにメンタルの調子を落としてしまうという結果につながっていきます。こうなるとますます状態は悪くなってしまいますよね。
これを避けるためにどうすればいいか?
これはいろんなところで言われているので、ご存知の方も多いと思いますが、「リラックスする時間を強制的に設けること」。これが一番効果的です。
自律神経が乱れている場合、体の緊張がありますからそれをほぐすことがよいです。そのためにできることとしては、「ゆっくり過ごす時間をつくる」「軽い運動をする」などがよいと言われています。半身浴やマッサージも効果的とされていますね。
●深い呼吸や、体を温めることも有効
私の経験では「呼吸を整える」ことと「体を温める」ことが効果的だと思います。うつ傾向の人で呼吸の浅い人が結構いらっしゃるのですが、呼吸が浅いとそれを自律神経が補おうとしますから、どうしても乱れやすくなります。日頃から深い呼吸を意識するようにしてみてください。猫背になりやすい人は、その姿勢が原因で呼吸が浅くなりますから背筋を伸ばすことを意識するとよいでしょう。またアロマなど自分が好きなにおいを嗅ぐことで鼻孔が広がり自然と呼吸が深くなりますのでそういう環境をつくるのもよいでしょう。
体に関しては体質もあるので難しい面もありますが、やはり温かいものを口にするのがやりやすいです。ちなみに、私自身、自律神経が乱れて手足どころか体が異常なくらい冷たくなってしまったことがありました。もちろん体調は最悪でした。そのときはハーブティーを飲むことで改善していきました。「中から温める」というのは、結構正しいかも知れないと思った記憶があります。
いずれにしても早めに自分の不調に気づいて、できる範囲内で対応するのが望ましいです。ここを無理してしまうとそのまま不調が続くことにもなりかねません。そしてこれは忘れてはいけないことですが、不調が続くようであればお医者さんに診てもらうことも忘れないでください。