新築やリフォームで、理想のキッチンを実現してみませんか。今回はその手本となる、実力派のオリジナルキッチン3例+システムキッチン1例を紹介。数多くのキッチンを取材してきた編集部が振り返り、収納や作業動線がすぐれたものをピックアップしてみました。

Case1.L字型にテーブルを組み込んだ、作業効率に配慮したキッチン

Jさんの家 京都府
設計/ALTS DESIGN OFFICE(アルツデザインオフィス) 撮影/川隅知明

「食事をつくる時間、食べる時間をいかに心地よく過ごすか」を、大切に考えたJさんがたどりついたのは、L字型のキッチンにテーブルを組み合わせたオリジナル。

通常のL字型キッチンでは、くぼんだ内側に立って作業をしますが、このキッチンでは、くぼみ部分に背の高いカウンターテーブルが組み込まれています。台所仕事をするのは、キッチンの外側から。

キッチン本体の一辺にシンク、もう一辺にガスコンロを設けてあり、ステンレスのワークトップでつなぐレイアウト。住まい手が絶対入れたかった、食洗器や大型のオーブンレンジもビルトイン。

「好みのものを自由にレイアウトできるので、必要なものは手の届きやすい場所にあります。だから、調理中の動きもスムーズでラク」(Jさん)。

調理器具もハンギングするなど、見せる収納のお手本のようなレイアウトで、美しさと使いやすさを両立しました。

 

頻繁に使う調理器具は、見た目がきれいで使いやすいハンギング収納で。窓側にはポールを据えつけ、換気扇フードには磁石つきのフックをつけ、キッチンツールをつり下げています。

 

窓下カウンターは小さなキッチンガーデンに。ハーブなどを栽培。

 

Case2.横並びのストレート動線で、料理も配膳もあと片づけもスムーズに

Sさんの家  宮崎県
設計/COGITE 撮影/中村風詩人

「娘たちと一緒に料理できて、外の景色も楽しめるキッチンが理想」という、妻の希望が実現した家。LDKは2階に設けて、約3mの天井高がある大空間とし、大きな窓から光がたっぷり入ります。

 

LDKの中央には、長さ1.8mのダイニングテーブルにアイランドキッチンを組み合わせたテーブルキッチンを造作。全長は4.6m強あります。タモ材の天板は、汚れてもふくだけですむようにウレタン塗装に。食器や鍋などは、すべて扉つきの収納に隠されています。電化製品は、壁をくぼませたスペースに収めてすっきりさせました。

シンクはダイニングテーブルの近くに設置したため、水はねに配慮しつつ、大鍋などもサッと洗える深めの大型サイズに。

 

生活感が出にくい隠す収納に徹し、食器、鍋などの調理道具、ストック食材などはカウンター下に収納しています。

作業スペースを広くとったので、娘たちも率先してお手伝いするように。オープンタイプは、子どもたちへの声がけもスムーズ。キッチンは、料理する妻の周りに娘たちが集い、手伝い、味見する、ほほえましい場となりました。

 

床を1段下げて、キッチンに立っているときも、家族と目線が合いやすい工夫を。

 

油はねの対策として、IH調理器を採用。フラットなので掃除もラクです。

Case3.ハーフオープンスタイルで、しまい込まずに使える家事ラクキッチン

高木さんの家 神奈川県
設計/トトモニ 撮影/滝浦 哲

周囲の自然を生かし、森にたたずむようなキッチンを希望した妻。シンク前の窓からは庭が望め、「ここに立っている時間が好きです」と語ります。

キッチンは、ナラ突板の面材とステンレスの天板で構成された、L字型のオリジナル。水切りプレートつきの広いシンクは、夫が釣ってきた魚をさばくときにも大活躍します。

引き出しの取っ手は、「繊細に見えるけど、丈夫で使いやすいものを」という妻のこだわり。コンロ回りの壁にはシャモットタイルを採用しました。「油を吸い込んでも、べたつかずサラッとしているので気に入っています。掃除もラク」と妻。

キッチンのプランは、斜めの壁や床の段差によって、ダイニングやリビングと適度に仕切られたハーフオープンスタイル。内部が丸見えにならないように、配慮されています。この間取りを生かし、調理器具などは使い勝手を重視して「しまわない」収納を多用。

出し入れしやすく、調理や片づけがてきぱきこなせるキッチンになりました。

 

調理家電を出したままにしておけるコーナー。外からは見えないプランに。

 

磁石を使って製作した、木製マグネット式包丁ホルダー。サッと道具が使えて便利です。

 

調理器具はS字フックでつるして収納しています。

 

シンク上のつり戸棚は、ザルなどが乾かなくてもしまえるように、水切りつきにしました。

 

Case4.入れるものを想定し、緻密に考えた、お気に入りのシステムキッチン

Fさんの家 宮崎県
設計/COGITE 撮影/中村風詩人

築30年以上の古家を購入し、フルリノベーションした家。デッキテラスにつながる気持ちのいいLDKが実現しました。

キッチンはリビングダイニングが見渡せるように対面式に。「キッチンを選ぶためにさまざまなメーカーのショールームを回りましたが、収納の位置や数、デザインとこまやかな仕様が気に入ったので」と、妻はパナソニックのシステムキッチンを選びました。

 

背面収納については入れるものの寸法をすべて測り、なにをどこに入れるか完全にシミュレーションして寸法を出しました。ロボット掃除機が使えるように床はフラットに。

おかげで、キッチンはすっきりと美しい眺め。家族も気持ちよく団らんの時間を過ごせます。「キッチンからも、家族みんなの様子がわかってうれしいですね」と妻。

 

デッキテラスに近いキッチンなので、バーベキューなどの準備や片づけもしやすい動線になっています。

 

食器類は背面カウンターの引き出しに収納。妻のアイデアで、大きなお皿などは出し入れしやすいように、市販のケースで仕切って縦にしまっています。

※情報は「住まいの設計2022年4月号」取材時のものです