ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている@inu_10kg。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。第45回は、日常で犬によって発見される「いい感じの棒セレクション」をご紹介します。

犬が選んだ「いい感じの棒」セレクション

inubot回覧板の刊行書籍にも収録している第12回で“いい感じの棒”をご紹介した。それから早いもので3年の歳月が流れた。

SNSで“今日のいい感じの棒”という投稿を続けている通り、変わらずいい感じの棒は日々発見されている。今回は2020年12月〜2021年12月までのいい感じの棒セレクションを発表します!

「いい感じの棒とは何ぞや?」という方もいるでしょうから簡単にご説明すると…

いいかんじのぼう【いい感じの棒】

《名》散歩道や畑で犬がくわえて振り回したり噛んだりする木の称。

基本は畑で拾うが、時期によっては畑でも綺麗さっぱり無いときもあれば、剪定後はよりどりみどりだったり棒数も変動する。

だが畑に無くても山道にあったり、年中どこかしらにある。犬も歩けば棒に当たるという諺は悲しい意味合いだが、ただただ文字面の通りどこかを歩けば棒に当たるのです。

それではさっそくご高覧いただきましょう。

2021年1月27日、うちのみかん畑の柵内でリードを放していた。

犬が自由に走っているのを見ていたら棒をくわえて走ってきたのだ。

どうするのかなと見ていたらその棒を置いて、また周りにあった別の棒をくわえて来た方向に走っていった。みかん畑での走るスピードや力強さにはいつも感動する。和歌山のスピードスターだ。

いい感じの棒にはドーパミンの放出を促す効果があるのだろうか。いい感じの棒をくわえているときの走力は凄まじく、棒によって内から引き出されているかのようだ。

犬がすごいのは走力や跳躍力だけではない。棒をくわえる力にも拍手してしまう。

2021年2月、家族で畑作業をしていた。妹が犬に構ってもらおうと棒を拾って見せにいった。そしたら犬が飛びついてきたので、ふたりで楽しそうに遊んでいたのだ。

犬が棒を取って、また第二ラウンドが始まった。それが真剣勝負になって、互いに一歩も引かぬ膠着状態。

しだいに妹も取られたくない気持ちが芽生えるらしい。現在のわが家の末っ子ポジションである犬と、元祖末っ子の妹で新旧末っ子対決だ。

こういうとき犬の引っ張る力だが、踏ん張りも強いのだ。やはり柴犬の体力というのはすごい。歯の噛む力も強いので、梅雨の時期など湿って柔らかい木なんて噛んでいるうちに折れる。

そして妹とのやりとりにも見られるが、いい感じの棒は家族間でのコミュニケーションにも用いられる。いい感じの棒をゲットしたときに母がいると、必ず見せに行く。

母のもとに駆け寄って、ほらと見せるように顔を上げる。

しかし棒を取ろうとすると、顔を下に向けたり、カッ! と棒を噛んで渡さない。そして母が手を離すと再度アピールをしている。

棒を取る取られないの駆け引きがしたいのかなと思う。たまに目を剥いてすごい形相をしている。

「目突かんようにしやなね。」と棒で遊んでいるときに母は口を酸っぱくして言う。本当に眼球のような急所を棒で掠ったり突かぬよう要注意だ。見ていたら犬自身も気をつけているが、私ふくむ周りの人も気をつけねば、目や歯は一生もの、健康一番。

棒をくわえている無防備な犬を観察するのが幸福な一時でもある。昔から動物園のカバの歯磨きを見るのが好きで、犬の歯並びや口内も見ていて飽きない。

犬が散歩時にくわえる物は木だけでなく、その季節によって旬のものがある。

2021年1月2日。竹林のそばを歩いていたら、雪に埋もれていた竹を発見し拾い上げた。

雪原で竹をくわえる愛らしい姿からは鬼滅の刃の禰豆子を彷彿とさせた。

夏の柿畑では摘蕾で摘まれた蕾が地面の上で大きくなっているものがある。その青く小さな柿を必ずくわえて、家に持って帰ろうとするのだ。

別に奪いもしないしゆっくり帰ってもいいのに、なんだか足早に帰る。無言の背中と開いた大口から覗く青い柿に笑いを堪えながら走って帰る。

改めていい感じの棒セレクションを見ていたら、やはり棒をくわえて胸を張っている犬は勇ましい。たまに神々しさすら感じる。

2020年12月9日、柿畑にて。うしろで母が枯れ葉を集めて燃やしている。柿の葉が燃える煙を背に、柿の木を高らかに掲げている。

2021年12月31日、2021年最後のいい感じの棒納めはまるで葉巻を吸っているようにワイルドだった。禰豆子やゴッドファーザーだったり色んなシチュエーションを想像してしまう。特徴的な形から魔法の杖やさすまたに見えたりもする。

日々いい感じの棒をくわえて思い切り噛むのは、歯や心の健康にも良さそうな気がしている。もし食レポならぬ棒レポをしてくれたら、犬は何を言うのだろう。

さて、いい感じの棒セレクション2021いかがだったでしょうか。楽しんでいただければ幸甚に存じます。

2022年も早いもので4月突入しましたが、今年もいい感じの棒をよく振り回し、よく噛み、よく遊んでいる日々です。また次は年末か来年始か、2022年いい感じの棒大賞を乞うご期待ください。