戦争のニュースを見ると不安な気持ちに…。心を病まないためにできること
今、まさに世界で起きている戦争のニュースに、不安を抱えてしまう人も多いのではないでしょうか? 連日の報道に「眠れない」「不安が抜けない」といった声も聞かれる今、うつ専門メンタルコーチで、公認心理師の川本義巳さんにその解消法を教えてもらいました。
世界中で起こる悲劇に不安が消えない…そんなときできる3つのこと
2022年2月24日、世界を震撼させる出来事がありました。ロシア軍によるウクライナ侵攻です。連日テレビやインターネットでその様子が報道され、遠く離れた日本に住む私たちにも映像や文字でその様子が伝えられています。そして、そのどれもが驚きと恐怖を感じさせるものばかりです。
テレビの報道でウクライナ人の女性が「まさか21世紀になってヨーロッパの国の中を戦車が走るとは思わなかった」と言っていましたが、本当にそのとおりだと思いましたし、民間人がいる中で爆撃音が響いたりする映像などを見ると、ショックと同時に「ありえない」としか思えません。ときどき「これは事実ではなくて、映画の1シーンじゃないのか?」と思いたくなるときもあります。まさにすべてが「常識にはないこと」ばかりで、理解が追いついていないように感じます。
●情報にまみれて体調不良を訴える人も…
ネット上でもいろいろな情報が飛び交っていますね。そのすべてが正しいようで間違っているようにも思え、なにが正確なのかもよくわからない感覚です。これがずっと続いているわけですから、私たちの心にも少なからず影響を及ぼしてきています。
恐怖を感じる人、怒りを覚える人、悲しみを感じる人、なにもできない自分に無力感を感じる人、当事者でない自分に安心すると同時に罪悪感を覚えてしまう人。そして「もしかしたらいつか日本もそうなるんじゃないか」と想像してしまい、気持ちがざわついてしまう人。ごくありふれた日常会話の中にも、これらのことを「感じている」という言葉を聞きますし、実際「メンタル的に不調になった」という話もあります。
これと似たようなことが、東日本大震災のときにも起こっていました。私の知り合いの関西在住の女性は「震災の映像を見るたびに怖くて体が震えてくる」と言っていました。被災者でない人でも、想像を超えた映像や音声はトラウマ体験に似たような現象を起こします。
「こんなときどうすればいいですか?」という相談をいただくこともあります。その際、私がお伝えしている解消法についてお話したいと思います。やることは大きくわけて3つです。
(1) 一人で考え込まない
まず1つ目は、「一人で考え込まない」ということです。今回の出来事は私たち個人でどうにかなる問題ではありません。そんな巨大な問題を一人で抱えてもどうすることもできません。考え続けても答えは出ませんし、行動もできないでしょう。その間もずっとそのことについて考え続けることになりますし、新たな情報にも意識が向いてしまいます。これが続くということはかなり精神的に負担がかかり、やがてうつ状態に陥ることもありえます。
(2) 今、自分がどう感じているかをだれかと話す
2つ目は「だれかと話し合う」ということです。なるべく信頼できる人と話し合う時間を持ちましょう。話すテーマは「今、自分がどう感じているのか」ということについてです。なにが正しくて、なにが悪いのかではなく、自分が感じていることをそのまま話し合います。そうすることで「自分だけが苦しいのではない」ということ共有することができます。注意してほしい点は「お互い気持ちを話すこと」が大事であって「話した内容をジャッジしたりアドバイスをしたりする」ことではない点です。もしここで相手の言葉を決めつけてしまったり、「それはこういう風にしたらいい」とかをやってしまうと、そこで新たな負の感情が生まれてしまいます。それは本来やりたいことではありません。私たちまで争う必要はないのです。
(3) 今、なにができるかを共有してみる
3つ目は「今、なにができるか・なにをしたいかを話す」です。私たちはできないことに意識を向けるとその壁の大きさに押しつぶされてしまいます。かといってなにもせずにいると、自己不信や罪悪感につながります。まずは今の自分にできることについて考えましょう。そして話し合ってみてください。
なにかしたいことがあればそれも共有しましょう。こちらもダメ出しやアドバイスは厳禁です。その人の言葉に寄り添い共感していきましょう。私たち自身が自分の身の回りの平和や安心を守り維持することもとても重要なことです。
私たち個人の力ではどうにもできないこともあります。そこに意識が集中してしまうと本来やるべきことを見失い、必要以上の精神的負担を強いることにもなります。世界的なニュースに心は奪われがちになりますが、大切なのは「自分の周りが安心できる場所になっていること」だと思います。