トラックの通行が多い場所では、しばしば路上の散乱ゴミが問題になります。黄色い液体の入ったペットボトルも散乱、その多くは“尿”といわれます。マナーに訴えるものから物理対策まで様々講じても、なかなか減りません。

運転席側ばかり溜まっていく路上ゴミ

 川崎市の臨海部に浮かぶ埋立地「東扇島」。川崎港のコンテナターミナルをはじめ、大型の物流施設が並び、全国から大型トラックが集まる地域です。そこを貫通する首都高湾岸線に並行する国道357号では、2022年3月現在、道路上に黄色い液体の入ったペットボトルなどが散乱しているのが見受けられます。
 
 これらの中身はたいがい“尿”といわれています。もちろん、全てそうかは確認したわけではありませんが、トラックからポイ捨てされたものが少なくないようです。


東扇島の路上の散乱ゴミ。掃除しても溜まっていく状況を川崎市も発信している(画像:川崎市)。

 東扇島を通るクルマの多くはトラックです。このほかにも、島内の路上では至るところにゴミが見受けられるものの、その多くは歩道側ではなく、進行方向に対して右側、つまり運転席側に集中しています。走行中に、あるいは路上へ停車中に運転席からポイっとするケースが少なくないようです。

 そして島内の要所要所には、「東扇島からゴミNOない臨海部へ!!」「ドライバーのみなさん 見られてますよ ゴミのポイ捨て」といった横断幕や看板が設置されているほか、「ポイすてきんし」などのメッセージが書かれた小学生の絵画作品も貼り出されています。

 実はこうした光景は東扇島に限ったことではなく、トラックが集まる臨海部や、広いバイパス道路などでしばしば見られます。なぜゴミが捨てられ、それにどう対策しているのでしょうか。

どんな対策を?

「おかげさまでコンテナターミナルの取扱量が順調に伸びています。ただ、それとともに車両も増え、ゴミも増えてきた印象です。2年ほど前から美化活動を強化してきました」

 こう話すのは川崎港を管理する市港営課の担当者です。東扇島の国道、市道、臨港道路と3者にまたがる管理者間で協議会をつくり、年6回清掃を行っているとのこと。しかし、清掃しても、また同じ場所がゴミで埋まっていく繰り返しのようです。

「茂みなどでモノがかくれる状況だとゴミを捨てやすいようです。そこへさらにゴミが溜まり、捨てられやすくなります」とのこと。このため、剪定をこまめに行い、植栽を短くカットするなどしているといいます。

 さらに、島内に監視カメラを45か所設置し、川崎市のウェブサイトで不法投棄情報を細かく掲載しています。神奈川県トラック協会と情報共有し、悪質な場合は警察へ通報するそうです。


ゴミのポイ捨てを防止すべく掲出物も至るところに(乗りものニュース編集部撮影)。

 なぜ、ゴミが捨てられるのかを聞いたところ、「コンビニなどで店外のゴミ箱が撤去され、ゴミを捨てにくくなったことが一因では」とのこと。

 他方、トラック業界からは、トラックの運賃に高速道路料金が含まれず、一般道を走らざるを得ないことがあるという産業構造を指摘する人もいます。「必然的に長時間運転となるうえにトラックを停められる場所も少なく、場合によっては、運転席のなかで用を足すようなこともありうる」といいます。とはいえ、ゴミの不法投棄は立派な犯罪。イメージダウンにも直結すると頭を抱えました。

 東扇島では現在、川崎駅側と島をつなぐ新しい橋が建設中で、川崎市港営課は、交通量がさらに増えると予想しています。「今後は長距離ドライバーにもポイ捨て対策の周知を図り、全日本トラック協会との連携強化により九州や北海道などにも発信していきたい」と話しました。

 また、橋の開通を機に、これまで一般車が立ち入れなかったエリアも一部開放される予定です。首都高湾岸線の東扇島出入口などを利用する一般車も増えると考えられます。東扇島の散乱ゴミが、より多くの人の目に触れる日も近づいているのです。

 ちなみに以前、東扇島ではないところで、路上に散乱する尿入りペットボトルをどうしているのか国土交通省の職員に聞いたところ、1本1本、中身を流して処理しているということでした。


※一部修正しました(3月24日9時12分)。