かつてANAスタッフ訓練で中心的な役割を果たしていたのが「東糀谷訓練センター」。その役目を終えた旧訓練センターの最後の姿を見てきたところ、”レトロ感”にあふれていました。

1978年に完成「東洋一の施設」

 ANA(全日空)グループ社員の訓練、教育、研修は、2019年に運用を開始した新たな総合トレーニングセンター「ANA Blue Base」で行われています。それ以前、同社の訓練施設は各所に点在していたとのこと。なかでも特に中心的な役割を果たしていたのが「東糀谷訓練センター」です。現在この施設の内部はどのようになっているのでしょうか。


ANA「東糀谷訓練センター&BCビル」(2022年3月、松 稔生撮影)。

 ANA「東糀谷訓練センター」は1978年に完成。「充実した施設と訓練設備は当時”東洋一”と評された」(ANA)とのことで、ここでパイロット、CA(客室乗務員)、整備士などの教育が実施されてきました。1987年には「BC(ビジネス・センターの略)ビル」が訓練センターと同じ敷地に増築。こちらはシステム開発の拠点、ならびに情報セキュリティの砦となる、IT面での”重要拠点”だったそうです。

 東糀谷から各種訓練設備を「ANA Blue Base」へ移設する作業も2019年に順次スタートし、これは「ANA Blue Base」で訓練が実施されるようになったあとも継続して進められました。途中、新型コロナウイルス感染拡大で訓練用シミュレーターなどを扱う海外エンジニアが入国できなくなり、作業が一時中断するなどのトラブルもあったものの、約2年半かけて作業を完了。2021年11月には、施設を象徴する建物外観の「ANA」ロゴも下ろされました。

 これにより、もぬけの殻となった旧「東糀谷訓練センター&BCビル」に、今回入ることができました。

色々スゴイ!ANAの「東糀谷訓練センター」

 旧東糀谷訓練センターとBCビルは5棟に分かれており、連絡通路でつながっています。もっとも築年数が古いという管理棟は、内装こそはキレイに整備されているものの、コンセントが非常にクラシックなものであるなど、細かなところにその歴史を感じることができます。

 一方、訓練施設へ至る廊下や、施設などはまさに”昭和レトロ”全開です。壁はタイル張りが多く、なかには壁全面がワインレッドのタイルが貼られた”激シブ”な廊下も。天井の照明も現代ではまずお目にかかれないような、ギラリと光る豪勢なデザインとなっているものもありました。各所の案内版の文字のフォントも、明らかに多くの人が”昔っぽい”と感じるものでしょう。


ANA「東糀谷訓練センター&BCビル」(2022年3月、松 稔生撮影)。

「東糀谷訓練センター&BCビル」はANAのパイロットを中心に描いたドラマ「GOOD LUCK!!」の舞台としても登場しました。ドラマ後半の大きな転換点となるシーンの舞台となった、ボーイング747のモックアップ(原寸大模型)を用いた「緊急脱出訓練」は、ここで実施されたのだそうです。

 ちなみに、トイレの男女マークも「パイロット」と「CA」になっていたり、外のマンホールに旧社章の「ダ・ヴィンチのヘリ」が描かれていたりと、各所に「航空会社らしさ」「ANAらしさ」を感じるような施設となっていました。

 なお、ANAでは3月18日「ありがとう、さようなら東糀谷訓練センター・BCビル」と称し、約60名のANAスタッフが清掃活動などを実施。引き渡しを前に多くのスタッフが、この施設との別れを惜しんでいます。