日本三大風景で知られる天橋立に、動く橋「廻旋橋」があります。船舶を通すために橋がぐるりと回転。完成からすでに100年近くが経過しています。そんな橋を今回は、船上から眺めてみました。

船舶を通すため90度回転

 日本三大風景でも知られる天橋立に動く橋があります。廻旋橋(かいせんきょう)といい、京都丹後鉄道の天橋立駅(京都府宮津市)から徒歩5分の場所です。橋は、文殊信仰の聖地で知られる智恩寺 文殊堂と天橋立をつなぎます。

 天橋立が日本三大風景と呼ばれるのは、細い陸地が橋のように日本海と阿蘇海を区切っている風景の珍しさによります。


智恩寺 文殊堂〜天橋立間を結ぶ廻旋橋(2022年1月、安藤昌季撮影)。

 内海・阿蘇海には船舶が運航されており、天橋立の根元といえる部分を通過します。このため、船舶の妨げにならないよう、そこにかかる橋は動く必要があるわけです。

 この地に橋が作られたのは、1923(大正12)年のこと。当初造られたのは木製の橋で、人力で橋を動かして回転していたのだそうです。現在のように電動で回転する橋となったのは、1960(昭和35)年のことです。橋げたを軸にして90度回転し、空いたところを船舶が通過します。橋の全長は36m。稼働する部分は27mです。橋は和風デザインの一般的な見た目ですが、回転する時は係員が通行者に声をかけ、待機するよう促します。

 橋の回転が確実に行われるのは、日曜日の11、12、13、14、15時。このほか毎朝9時55分の観光船通行時と、不定期の大型船通行時です。

宮津桟橋まで足を延ばす

 筆者(安藤昌季:乗りものライター)は土曜日に現地を訪れました。多い時には1日で50回ほど回るようなのですが、前述したように確実に動くのは日曜日なので、いつ動くのかわかりません。


丹後海陸交通が運航する観光船。廻旋橋を通る(2022年1月、安藤昌季撮影)。

 とはいえ、動く様子は見たいものです。筆者は「観光船通行時」という文言に注目しました。天橋立には、丹後海陸交通の観光船が運航されています。これは阿蘇海で運航され、ほとんどが文殊堂のある文殊地区の天橋立桟橋と、対岸にある府中地区の一の宮桟橋を、片道12分で結んでいます。

 府中地区には、元伊勢籠神社や眞名井神社があります。その横には天橋立笠松公園ケーブルカーが運行されており、山腹から天橋立を見物できます。

 天橋立観光船は1日1往復だけ、天橋立桟橋から宮津桟橋まで足を延ばします。廻旋橋を動かさなければ、宮津桟橋に船を通すことができません。つまり、宮津桟橋を発着する天橋立観光船を利用すれば、船上から確実に、橋が動く様子を見られるわけです。

 動く廻旋橋が見られるのは、宮津桟橋9時50分発と、一の宮桟橋16時15分発のみです。なお、利用客がいない場合は運航されないことがあるようなので、筆者は天橋立桟橋の窓口で「宮津桟橋まで乗ります」と告げ、天橋立桟橋から一の宮桟橋に行き、そこから宮津桟橋まで戻ってくる往復乗船券を購入しました。

動く、橋が動くぞ!

 この観光船は、座席の並ぶ船室のほか、船の屋上部分にも滞在できます。ユニークなのは「カモメの餌」が船内で販売されていること。阿蘇海には多くのカモメが生息しています。船の屋上から餌を撒いた途端、すぐにカモメが集まってきました。明らかに人間に慣れているようでした。


廻旋橋(写真右)が回り、観光船が通行できるようになる(2022年1月、安藤昌季撮影)。

 さて、一の宮桟橋から天橋立桟橋に到着する直前、進路前方に廻旋橋が見えてきました。係員が橋のたもとで、通行人に呼びかける光景が見えます。やがて橋はゆっくりと動き出しました。

 90度回転して、船舶が通れる幅が確保されます。船に並行して橋がある風景は、ダイナミックで見ごたえがあります。観光船が通過した後、船の後方に移動すると、橋が元に戻っていく様子が見えました。橋が戻ると通行人が一斉に通行していきます。

 廻旋橋だけでなく、天橋立桟橋から文殊荘の横を通って宮津桟橋に向かう風景もとても美しいのですが、ほとんどの乗客は天橋立桟橋で降りてしまいました。

 宮津桟橋から一の宮桟橋までの全区間を乗船しても1200円ですし、宮津桟橋から宮津の町を散策しながら、出発した天橋立駅の隣 宮津駅まで歩けるので、天橋立を訪れたら、観光船から廻旋橋を眺めてもよいでしょう。