関東選抜Aの中野(19番)と関西選抜の木村(右)がマッチアップ。写真:安藤隆人

写真拡大

 突きつけられた挑戦状を真っ向から受け取った。

 デンソーチャレンジカップ福島大会グループリーグ最終日で、『打倒・関東勢』に燃える関西選抜のエース・木村勇大(関西学院大/京都サンガF.C.内定)が、「関東AのCBはプロ内定選手なので絶対に負けたくない」と闘志を燃やした相手は、関東選抜Aの中野就斗(桐蔭横浜大)と山崎大地(順天堂大)のサンフレッチェ広島に内定したCBコンビだった。

 すでに京都でJ1デビューとプロ初ゴールを挙げている相手エースが、闘志むき出しでぶつかってくる中、同じくすでに広島でJ1開幕デビューを飾っている中野は、「同じJ1を経験した者として絶対に負けたくはなかった」とこちらも闘志むき出しで木村と激しくぶつかり合った。
 
 フィジカル同士がぶつかり合う音が聞こえてくる激しい球際の争い。しかもただぶつかり合っているだけではない。木村はうまくボールを隠しながらテクニカルなドリブルを連続して仕掛けてくるのに対し、中野は冷静に抜群のステップワークとスピードを生かした寄せとコース切りで応戦。ハイレベルな駆け引きがそこにはあった。35分には中野を背負おうとした木村に対し、中野はしなやかに木村の間に身体をねじ込んで相手のファウルを誘った。41分には木村のドリブルからの折り返しを鮮やかなスライディングでクリア。後半に入っても激しい攻防が続き、勝負は1-1のドロー決着に終わった。

 この結果、関西選抜の1位通過が決まり、決勝進出。関東選抜Aは2位となって3位決定戦に進むことになった。

「大学の中でのFWでは間違いなくナンバーワンの選手だと思っていたので気持ちが入りましたし、実際に対峙してみたら普通の大学生とは違うプレーをしてきたのでかなり厄介でした。基礎の部分や身体の使い方に手を焼きましたし、前を向いたら迷わず勝負をしてくるので、本当に迫力のある選手だなと思いました。だからこそ、そこで怯まないで対応しようと思っていましたし、それができて良かったです」

【PHOTO】J内定者から隠れた逸材まで…2021大学サッカー注目プレーヤー
 お互い意識をしあっていたからこそ、生まれたハイレベルな攻防。関東選抜Aを率いる筑波大の小井土正亮監督も「木村選手と関東AのCBのバトルは大学サッカーを象徴するものでかなり見応えがあった。これが大学サッカーの日常になってくれたらいいと思う」と口にすると、それを聞いた中野はこう続けた。
 
「シーズン前から広島の方でやらせてもらったことで、木村選手とああやってバトルすることは当たり前のことだと思っていました。こういう攻防を選抜でも所属チームでも当たり前のようにやれる選手でいないといけないと思いました」

 勝ちきれなかったが、手応えと充実感のあるプレーを見せた中野。「グループ2位という結果を真摯に受け止めて、3位決定戦ではしっかりと力を見せつけたい」と今大会最後の試合では変わらぬ存在感を示すべく、気持ちを切り替えて関東選抜Aの壁となって東海選抜の前に立ちはだかる。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)