「今センターにいた子は誰?」ももいろ歌合戦で大晦日に“見つかった”ボーイッシュアイドルとは
2021年12月31日から2022年1月1日にかけて日本武道館で開催された、ももいろクローバーZ主催の年越しライブイベント「第5回 ももいろ歌合戦」。7時間半を超えるそのステージで、最大級のインパクトを残したアイドルがいた。その名はアメフラっシの小島はな。舘ひろしや五木ひろしなど芸能界の重鎮らが大勢登場するステージの中、ひときわ輝きを放っていた彼女について、ももクロの“公式記者”として様々な書籍を手掛けている小島和宏氏が筆を執った。
【写真】大晦日“見つかった”アイドル、アメフラっシ・小島はな、他「ももいろ歌合戦」の模様【72点】
2022年がスタートして半月以上が過ぎたが、コロナ禍ということもあってか、なんとなく時間の進み方が昔よりもなんだか緩やかに感じてしまう。
だからなのだろうか、昨年の大晦日の余韻がいまなお色濃く残っている。せっかくだから、その余韻の中でも、もっともインパクトがあったことをここに書き記しておきたい。
昨年の大晦日、僕は日本武道館にいた。これが第5回目となる『ももいろ歌合戦』を取材するためだ。『ももいろ歌合戦』とはももいろクローバーZがホスト役を務める年越しイベント。年々、規模は拡大していって2019年には横浜アリーナで開催されたが、2020年はコロナの影響で無観客に。それでもスタッフ・関係者の熱意で「今年こそは有観客で!」という願いが叶い、日本武道館にお客さんを集めての開催が実現した。5年連続で現地に入っているので、個人的にはもはや『ももいろ歌合戦』が年越しの風物詩ということになってしまった。
イベントは夕方5時にスタート。言うまでもなく年越しの瞬間までは続くので、それだけで7時間の超大ボリューム(ももクロはその後に2022年初の単独ライブになだれ込むので7時間半超え!)。そう書くとダラダラと長時間、続くイメージがあるかもしれないが、5回の歴史を重ねていく中で「この企画をやりたい!」と年々、プログラムが増えていった結果、ここまでの長尺になったわけで、無計画に長いわけではない。むしろ、ももクロの『行くぜっ!怪盗少女』で年越しの瞬間を迎える、という明確なゴールが設定されているので、途中でダラダラすることは許されないのだ。
長くなるのにはもうひとつ理由があって、出演するアーティストは全員フル尺で持ち歌を披露することができる。昨今の歌番組ではなかなか難しい話なのだが、このこだわりだけは第1回からまったくブレていない。タイトルに「歌合戦」と冠する以上は、しっかりと歌を聴いていただこう、という心意気である。
とはいえ歌だけに特化したイベントではなく、舘ひろしによる開会宣言でスタートし、地上波で那須川天心の試合が流れている時間帯には、なんと大仁田厚が日本武道館では初となる電流爆破デスマッチを敢行。ザ・ドリフターズからは高木ブーと仲本工事も出演するなどバラエティー要素も満載。つまり昭和の時代から大晦日のお茶の間を彩ってきた「歌合戦」「格闘技」「お笑い」という三大要素がすべて詰めこまれたイベントなのだ。
そして2021年の総決算でもある。前夜にレコード大賞に輝いたばかりのDa-ICEとM-1グランプリの覇者である錦鯉がどちらも生出演するのだから、リアルに「2021年の顔」が揃ったことになる。それだけ盛りだくさんなイベントの大トリを五木ひろしが務め、さらには水前寺清子の「365歩のマーチ」で大団円を迎えるのだから、もう日本のどこで行なわれているカウントダウンイベントよりも「大晦日感」は濃密なのである。
そんな見どころだらけのイベントなのだが、回を重ねていくにつれ、充実度が増してきて、もはやこれだけは外せない、というコーナーになったのが「メドレー」だ。カバーだけでなく、実際に主題歌を担当したアーティストが続々と登場する「アニソンメドレー」。そして古今東西のアイドル曲を約20分間、ノンストップでお届けする「最高アイドルメドレー」。
本編がフル尺でじっくり聴かせるからこそ、メドレーにお祭り感が出てくるわけだが、それでも各曲、かなりしっかりと披露するのがポイント。7時間を超えるイベントのホストを務めるだけでも重労働なのに、ももクロのメンバーはこのメドレーでもフル回転(さらに他のアーティストとのコラボも多数)。いったいいつこれだけの演目のレッスンをこなしたのか、と驚くばかりだが、それを生放送の中で全部披露する、というのもなかなかの重労働だ。
ネット上ではアイドルメドレーで佐々木彩夏がセンターを務めた『根も葉もRoomer』のダンスを2日間で仕上げた、ということが話題となっていたが、この楽曲だけに2日間を費やしたのではなく、とてつもない量のコラボ曲と同時進行で仕上げていった、ということ。
じつはこの1週間前に、メドレーにも多数出演したアメフラっシのクリスマスライブの取材に行っていたのだが、その時点で「メドレーに参加することは決まっているけれども、まだ楽曲は決まっていない」とメンバーから聞いている。まさに本番前の数日間で作りあげた演目なのである。
そのアメフラっシのメンバーである小島はなが、ある意味、この日最大級のインパクトを残した。
彼女がアイドルメドレーで歌ったのはBTSの『Butter』。画面にはいきなり小島はなのソロショットがドンと映り、彼女がひとりで歌い出したのだが、じつはステージの上にはBOYS AND MENとSUPER★DRAGONの2組のボーイズグループがズラリと揃っていた。歌い出しだけ小島はなが担当する、という「出オチ」みたいな演出なのか、と思っていたら、サビでは小島はながセンターに立って見事に歌い、踊ってみせた。それだけでなく曲の締めも彼女がビシッとカッコよくキメてくれた。
小さな女の子が背の高い男性陣をバックにセンターを張る姿はやはりインパクトがあるし、正直な話、彼女はまだまだ知名度が高いわけではないので「今、センターにいた子は誰?」とすぐさま話題は広がった。
一見、意表を突いたキャスティングにも思えるが、これは彼女にとって2021年にやってきたことの「総決算」でもあった。彼女が所属する4人組アイドルグループ・アメフラっシはこの1年でより「カッコいい」路線を突き進んできた。そのためにダンスとボーカルをがっつりと磨いてきたのだが、その中でも小島はなにはボーイッシュな魅力という武器があった。
昨年、あるWeb記事の企画でアメフラっシのメンバーにセルフプロデュースで撮影してもらったことがある。そこで小島はなが提示してくれたのは学校の教室と部室のようなセットでの撮影で、教室ではおとなしそうな女学生を、部室ではスポーツ万能そうな男の子を見事に演じ分けてみせたのだ。普段からボーイッシュなイメージがあるだけにウイッグをつけての美少女ぶりはファンを沸かせ、カッコよすぎる男装には彼女を知らない層から大きな反響があった。
その反響の大きさには本人もびっくりしていたが、年末に話をしたときには「たしかに周りを見てもボーイッシュさを打ち出しているアイドルって、今、ほとんどいないので、これから私にとって大きな武器になるかも」と大きな手ごたえを感じていた。その時点では、まだ大晦日にこれだけ大きな役回りを担当することは知らなかったが、彼女の中ではすでに準備万端、整っていたのだ。
ちなみに「ももいろ歌合戦」はABEMA TVをはじめとして、あらゆる媒体で生中継されたのだが、ABEMA TVでは現在でも無料でアーカイブを視聴することが可能。7時間以上をフルで視ることもできるのだが、楽曲別に単品で視聴することもできるので、気になったという方はぜひチェックしてみていただきたい。
小島はなも参加しているアイドルユニット「浪江女子発組合」(ももいろクローバーZの佐々木彩夏がプロデューサー兼メンバーを務める福島県浪江町を拠点とした8人組の地方発アイドル)は2021年中に日本武道館で単独コンサートを開催する、という大目標を掲げていた。
しかしコロナ禍が予想外に長引き、グループの原点でもある浪江町での定例ライブがなかなか開催できない、という状況に陥ってしまったため、昨年夏の時点で「2021年中に」という部分について一旦、取り下げていた。本来あるべき活動ができないまま武道館に到達しても、それは本意ではない、と。その浪江女子発組合も「ももいろ歌合戦」に初出場し、形は違えど日本武道館のステージに立つことができた。そして、メンバーの小島はなが全国から注目を集める輝きをアイドルメドレーで放った。これは2021年の総決算にして、2022年の予告編である。「コロナ禍で日本武道館での有観客開催」というハードルを飛び越えた向こう側には、きっと明るい未来が広がっているはず……。
大晦日に目撃した光景が、のちのち「あれが大きな分岐点になった」と語り継がれるようになることを信じたい。
【あわせて読む】ももクロ佐々木彩夏✕HKT48田中美久らが初トーク「みくりん、小さい子のイメージだったけど…」
2022年がスタートして半月以上が過ぎたが、コロナ禍ということもあってか、なんとなく時間の進み方が昔よりもなんだか緩やかに感じてしまう。
だからなのだろうか、昨年の大晦日の余韻がいまなお色濃く残っている。せっかくだから、その余韻の中でも、もっともインパクトがあったことをここに書き記しておきたい。
昨年の大晦日、僕は日本武道館にいた。これが第5回目となる『ももいろ歌合戦』を取材するためだ。『ももいろ歌合戦』とはももいろクローバーZがホスト役を務める年越しイベント。年々、規模は拡大していって2019年には横浜アリーナで開催されたが、2020年はコロナの影響で無観客に。それでもスタッフ・関係者の熱意で「今年こそは有観客で!」という願いが叶い、日本武道館にお客さんを集めての開催が実現した。5年連続で現地に入っているので、個人的にはもはや『ももいろ歌合戦』が年越しの風物詩ということになってしまった。
イベントは夕方5時にスタート。言うまでもなく年越しの瞬間までは続くので、それだけで7時間の超大ボリューム(ももクロはその後に2022年初の単独ライブになだれ込むので7時間半超え!)。そう書くとダラダラと長時間、続くイメージがあるかもしれないが、5回の歴史を重ねていく中で「この企画をやりたい!」と年々、プログラムが増えていった結果、ここまでの長尺になったわけで、無計画に長いわけではない。むしろ、ももクロの『行くぜっ!怪盗少女』で年越しの瞬間を迎える、という明確なゴールが設定されているので、途中でダラダラすることは許されないのだ。
長くなるのにはもうひとつ理由があって、出演するアーティストは全員フル尺で持ち歌を披露することができる。昨今の歌番組ではなかなか難しい話なのだが、このこだわりだけは第1回からまったくブレていない。タイトルに「歌合戦」と冠する以上は、しっかりと歌を聴いていただこう、という心意気である。
とはいえ歌だけに特化したイベントではなく、舘ひろしによる開会宣言でスタートし、地上波で那須川天心の試合が流れている時間帯には、なんと大仁田厚が日本武道館では初となる電流爆破デスマッチを敢行。ザ・ドリフターズからは高木ブーと仲本工事も出演するなどバラエティー要素も満載。つまり昭和の時代から大晦日のお茶の間を彩ってきた「歌合戦」「格闘技」「お笑い」という三大要素がすべて詰めこまれたイベントなのだ。
そして2021年の総決算でもある。前夜にレコード大賞に輝いたばかりのDa-ICEとM-1グランプリの覇者である錦鯉がどちらも生出演するのだから、リアルに「2021年の顔」が揃ったことになる。それだけ盛りだくさんなイベントの大トリを五木ひろしが務め、さらには水前寺清子の「365歩のマーチ」で大団円を迎えるのだから、もう日本のどこで行なわれているカウントダウンイベントよりも「大晦日感」は濃密なのである。
そんな見どころだらけのイベントなのだが、回を重ねていくにつれ、充実度が増してきて、もはやこれだけは外せない、というコーナーになったのが「メドレー」だ。カバーだけでなく、実際に主題歌を担当したアーティストが続々と登場する「アニソンメドレー」。そして古今東西のアイドル曲を約20分間、ノンストップでお届けする「最高アイドルメドレー」。
本編がフル尺でじっくり聴かせるからこそ、メドレーにお祭り感が出てくるわけだが、それでも各曲、かなりしっかりと披露するのがポイント。7時間を超えるイベントのホストを務めるだけでも重労働なのに、ももクロのメンバーはこのメドレーでもフル回転(さらに他のアーティストとのコラボも多数)。いったいいつこれだけの演目のレッスンをこなしたのか、と驚くばかりだが、それを生放送の中で全部披露する、というのもなかなかの重労働だ。
ネット上ではアイドルメドレーで佐々木彩夏がセンターを務めた『根も葉もRoomer』のダンスを2日間で仕上げた、ということが話題となっていたが、この楽曲だけに2日間を費やしたのではなく、とてつもない量のコラボ曲と同時進行で仕上げていった、ということ。
じつはこの1週間前に、メドレーにも多数出演したアメフラっシのクリスマスライブの取材に行っていたのだが、その時点で「メドレーに参加することは決まっているけれども、まだ楽曲は決まっていない」とメンバーから聞いている。まさに本番前の数日間で作りあげた演目なのである。
そのアメフラっシのメンバーである小島はなが、ある意味、この日最大級のインパクトを残した。
彼女がアイドルメドレーで歌ったのはBTSの『Butter』。画面にはいきなり小島はなのソロショットがドンと映り、彼女がひとりで歌い出したのだが、じつはステージの上にはBOYS AND MENとSUPER★DRAGONの2組のボーイズグループがズラリと揃っていた。歌い出しだけ小島はなが担当する、という「出オチ」みたいな演出なのか、と思っていたら、サビでは小島はながセンターに立って見事に歌い、踊ってみせた。それだけでなく曲の締めも彼女がビシッとカッコよくキメてくれた。
小さな女の子が背の高い男性陣をバックにセンターを張る姿はやはりインパクトがあるし、正直な話、彼女はまだまだ知名度が高いわけではないので「今、センターにいた子は誰?」とすぐさま話題は広がった。
一見、意表を突いたキャスティングにも思えるが、これは彼女にとって2021年にやってきたことの「総決算」でもあった。彼女が所属する4人組アイドルグループ・アメフラっシはこの1年でより「カッコいい」路線を突き進んできた。そのためにダンスとボーカルをがっつりと磨いてきたのだが、その中でも小島はなにはボーイッシュな魅力という武器があった。
昨年、あるWeb記事の企画でアメフラっシのメンバーにセルフプロデュースで撮影してもらったことがある。そこで小島はなが提示してくれたのは学校の教室と部室のようなセットでの撮影で、教室ではおとなしそうな女学生を、部室ではスポーツ万能そうな男の子を見事に演じ分けてみせたのだ。普段からボーイッシュなイメージがあるだけにウイッグをつけての美少女ぶりはファンを沸かせ、カッコよすぎる男装には彼女を知らない層から大きな反響があった。
その反響の大きさには本人もびっくりしていたが、年末に話をしたときには「たしかに周りを見てもボーイッシュさを打ち出しているアイドルって、今、ほとんどいないので、これから私にとって大きな武器になるかも」と大きな手ごたえを感じていた。その時点では、まだ大晦日にこれだけ大きな役回りを担当することは知らなかったが、彼女の中ではすでに準備万端、整っていたのだ。
ちなみに「ももいろ歌合戦」はABEMA TVをはじめとして、あらゆる媒体で生中継されたのだが、ABEMA TVでは現在でも無料でアーカイブを視聴することが可能。7時間以上をフルで視ることもできるのだが、楽曲別に単品で視聴することもできるので、気になったという方はぜひチェックしてみていただきたい。
小島はなも参加しているアイドルユニット「浪江女子発組合」(ももいろクローバーZの佐々木彩夏がプロデューサー兼メンバーを務める福島県浪江町を拠点とした8人組の地方発アイドル)は2021年中に日本武道館で単独コンサートを開催する、という大目標を掲げていた。
しかしコロナ禍が予想外に長引き、グループの原点でもある浪江町での定例ライブがなかなか開催できない、という状況に陥ってしまったため、昨年夏の時点で「2021年中に」という部分について一旦、取り下げていた。本来あるべき活動ができないまま武道館に到達しても、それは本意ではない、と。その浪江女子発組合も「ももいろ歌合戦」に初出場し、形は違えど日本武道館のステージに立つことができた。そして、メンバーの小島はなが全国から注目を集める輝きをアイドルメドレーで放った。これは2021年の総決算にして、2022年の予告編である。「コロナ禍で日本武道館での有観客開催」というハードルを飛び越えた向こう側には、きっと明るい未来が広がっているはず……。
大晦日に目撃した光景が、のちのち「あれが大きな分岐点になった」と語り継がれるようになることを信じたい。
【あわせて読む】ももクロ佐々木彩夏✕HKT48田中美久らが初トーク「みくりん、小さい子のイメージだったけど…」