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実用的で堅牢な大型オフローダー

執筆:John Evans(ジョン・エバンス)翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
1990年代、筆者はSUVやキャンピングカーの専門誌の編集に携わっており、日産パトロール(サファリ)との良い思い出が沢山ある。この大きなSUVで、沢山のキャンピングトレーラーを牽引したものだ。

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日産パトロールの歴史は1951年までさかのぼるが、筆者が乗っていたのは、第5世代に当たるY61型だった。英国では1998年から2009年まで販売されており、途中、2005年にフェイスリフトを受けている。


日産パトロール(サファリ/Y61型/1997〜2016年/英国仕様)

日本市場ではサファリ、海外市場ではパトロールと呼ばれ方は違うものの、日産ファンの間ではY61型と呼ばれることが多いクルマだ。呼び名はどうあれ、ラダーフレームのシャシーに四輪駆動システムを組み、大きな7シーターのボディを搭載したSUVに変わりはない。

筆者が乗っていたパトロールは英国仕様で、エンジンは2.8Lの直列6気筒ディーゼル。インタークラー・ターボが付き、トルクが太く滑らかに回転した。四輪駆動システムも、これ以上不要なほど機能的だった。

MTを上手に操作すれば、そこそこ素早く加速させることもできた。車重は2335kgもあり、牽引重量は3500kgまで。大きなキャンピングトレーラーも問題なく引っ張ることができる、頼もしいクルマだった。

安定性に優れ、運転席からの視界も良好。ただし、観音開きのテールゲートには片方しかワイパーが付いておらず、条件によっては後方を確認しにくい時もあった。

海外の支援活動にも活躍

ステアリングホイールの感覚はウールのように曖昧で、操縦性は鈍重。ブレーキはスポンジーで、洗練度が高いとはいえない。装備は充実しているが、Y61型パトロールはシンプルで飾らない、四輪駆動の実用車としての色が濃い。

そのおかげで、海外の支援活動にも日産パトロールは活躍した。当時はニュース映像で、白く塗られたY61型が頻繁に見られたものだ。受けるイメージは、様々だったかもしれないが。


日産パトロール(サファリ/Y61型/1997〜2016年/英国仕様)

多くの英国人は、大型のオフローダーとしてランドローバーを選んだ。信頼性を重視する向きは、トヨタ・ランドクルーザーか三菱ショウグン(パジェロ)を。日産パトロールは、あまり主流の選択肢にはならなかったといえる。

Y61型パトロールには、ロングとショートのホイールベースが用意されていたが、今回取り上げるのはロング版。現在英国で流通しているパトロールに、ショート版は存在しないようだ。

英国に残っているY61型は多くない。すべての世代を通して、路上を走れる状態のパトロールは1000台ほど。中古車サイトを探しても、数台しか見つからない。

英国での中古車価格は、3500ポンド(54万円)から1万ポンド(155万円)の間。殆どが3.0 Diと呼ばれる仕様で、4気筒エンジンが158psと36.0kg-mを発揮する。2000年に、131psの2.8 TDからバトンタッチしている。

2003年にショート・ホイールベースのパトロールが英国では販売が終了。トリムグレードが見直され、ロング版にフォグライトとレザーシート、サンルーフが標準装備となったSVEが登場している。

能力に長けたオフローダーを妥当な金額で

2005年にフェイスリフトを受け、フロントマスクを中心にリフレッシュ。インテリアも新しくなり、標準装備の充実度も高められている。3.0 Diではターボに関する不具合が報告されていたが、この時点で改良を受け解消した。

とはいえ、Y61型は信頼性が高い。特に前期の2.8Lモデルは、整備費用も安く済み、構造もシンプル。英国には日本のSUVを専門に扱う業者があり、部品もまだ入手しやすい状態にある。


日産パトロール(サファリ/Y61型/1997〜2016年/英国仕様)

パトロール・ファンで構成されたオーナーズクラブも、英国にはある。アドバイスも受けやすいだろう。妥当な金額で手に入れられる、タフで能力に優れたオフローダーこそ、Y61型の日産パトロールだと思う。

購入時に気をつけたいポイント

エンジン

前期2.8Lエンジンは、タイミングベルト。グロープラグが焼き付くことがある。シリンダーヘッドの分解は、専門家に依頼した方が良いだろう。バイオ燃料の利用が原因で、インジェクター・ポンプのシールなどへ不具合を招くこともあるようだ。

後期の3.0Lエンジンはタイミングチェーン。排気ガスの再循環バルブを塞ぎ、パフォーマンスを高める改造を施している例も。また初期の3.0Lエンジンでは、ターボのトラブルが発生しやすい。

トランスミッション


日産パトロール(サファリ/Y61型/1997〜2016年/英国仕様)

スムーズに変速でき、クラッチに滑りがないか確かめたい。特に2002年以前のモデルでは、5速が弱いので、試乗時での確認は忘れずに。

ブレーキとサスペンション、ステアリング

ブレーキは効きが弱く、多くのオーナーはパッドとディスクを高性能なものへ交換している。ブレーキの配管はスチール製で錆びがち。

サスペンションのブッシュはヘタるが、スーパープロ社などのウレタン製へ交換するアップグレードは人気の1つ。サスペンションを交換し、乗り心地と操縦性を改善することもできる。

ステアリング系はジョイント類に不具合が出やすいが、社外の対策品を購入できる。オフロード・ファンは、指にダメージを与えるキックバックを減らす目的で、ステアリングダンパーを取り付けるようだ。

ボディ

フロントフェンダーに取り付けられた、樹脂製フェンダーアーチ付近が腐食しやすい。塗装に気泡状の膨らみがないか確かめたい。

フロント・クロスメンバー付近のサビは一般的。英国のオーナーは、シャシーの標準的なサビ、と話している。リアのサブフレーブも、かなり錆びやすい。同時に下回りを覗いて、岩で擦った跡がないかなども確かめたい。

インテリア

カーペットなどが湿っていないか確かめる。渡河などのオフロード走行で、水が侵入しがち。パワーウインドウとエアコンの動作もチェックポイント。

オーナーの意見を聞いてみる

ザック・ドーウェン:英国・日産4x4オーナーズクラブ代表

「ランドローバー・ファンの家族で育ちましたが、みんながクルマの維持に苦しんでいました。その様子を見て、以前から日本車を買おうと決めていたんです。しばらく日産テラノに乗っていましたが、パトロールに乗り換えています」


日産パトロール(サファリ/Y61型/1997〜2016年/英国仕様)

「純正のままで、遥かに優れたオフロード・モデルだと感じました。前後に堅牢なリジットアクスル備え、センターデフ・ロックも付いていますからね」

「信頼性でやや劣る後期の3.0Lモデルより、自分は2.8Lエンジンの方が好きですね。パトロールを2台所有していますが、片方の3.0Lエンジンも、2.8Lへ載せ替えています」

「日産パトロールは、目的に合致した、良くできた実用車です。質感も悪くありません。パリ・ダカール・ラリーでの活躍など、モータースポーツとのつながりも持ち合わせています」

知っておくべきこと

3.0Lディーゼルなら、NADSと呼ばれるシステムにも注意したい。日産アンチ・デトネーション・システムと呼ばれる異常燃焼を防ぐシステムで、本来は4気筒ターボ・ユニットを守るために付いている。ニードル・バルブを取り付けることで、不具合を防げる。

英国ではいくら払うべき?

3500ポンド(54万円)〜5999ポンド(92万円)

2.8 TDと3.0 Diから英国では選べるが、走行距離は長いもののでも許容範囲が中心。1993年式の3.0 Diで、14万kmほどの例を見つけた。

6000ポンド(93万円)〜7499ポンド(115万円)

2002年以降の3.0Lエンジンモデルが英国では選べる。走行距離はそれなりでも、整備記録がちゃんと残っている例が多いようだ。

7500ポンド(116万円)以上

2004年から2007年式の、状態の良いパトロールが英国では出てくる。15万2000km走った2004年式3.0 Di SVEを、7995ポンド(123万円)で発見した。

英国で掘り出し物を発見

日産パトロール(サファリ)GR 2.8 TD SE ツーリング5ドア 登録:1998年 走行距離:19万1500km 価格:5890ポンド(91万円)

ワンオーナーのY61型。整備は毎回、ディーラーで受けてきたという。そのおかげで、エンジンの滑らかな状態が保たれているようだ。


日産パトロール(サファリ/Y61型/1998年/英国仕様)

日産のディーラーでタイミングベルト交換が済まされたばかりで、新しいオフロード用タイヤも履いている。シャシーには溶接で修復を受けた部分もあるというが、状態は良好といえる。