冬、長期で乗らない場合、ガソリンは満タンで保管? 空で保管?【ライドナレッジ012】(ピックアップ)
冬になるとどうしてもバイクに乗る頻度が落ちる。そんな、しばらく乗らない期間、「ガソリンは満タンの方が良いか? それとも空に近い方が良いのか?」
車種にもよるが、大型車なら満タンより空の方が10~15kgくらい軽いから、たとえばレースなら燃料はギリギリ走り切れるだけ入れて、できるだけバイクを軽くした方が有利……だけれど、それは特殊な例。
一般ライダーなら、空のメリットは取り回しで押し引きするのが少しラクになることくらいで、市街地でもツーリングでも満タンに近い方が精神的にも安心だ。
……と、ここまでは重量の話だが、じつはいつも満タンにしておいた方が、バイクのためにも良かったりする。それはガソリンへの水の混入とタンク内のサビを抑えられるからだ。
その理由は“結露”。冬に窓ガラスが白く曇ったり、冷たい飲み物を入れたコップに水滴がつく、あの“結露”が、じつは燃料タンク内でも起きている。
タンク中にはガソリンと空気があり、走行中はエンジンの熱などで空気は温まっている。しかし、走行を終えると周囲の気温によって冷やされ、タンク内の空気に含まれる水蒸気が結露して、タンクの内側に細かな水滴となって付着するわけだ。
冬、車でガソリンスタンドに行くと「水抜き剤どうですか?」とススメられるのは、ガソリンタンク内でこんな現象が起きているからなのである。
結露で溜まった水でエンジンがかからなかったり、タンクの内側もサビる……そしてタンクの内側に付着した水滴はガソリンに混入し、水の方がガソリンより比重が大きいので、タンクの底の方に溜まる。とはいえ、それなりの頻度でバイクに乗っていれば、次に走行する際にガソリンと一緒にエンジン内で燃焼(水なので燃えずに水蒸気になって)排出されるので問題ない。
しかし、冬場などに長期間乗らず、駐車している場所が比較的気温の変化が大きなところ(日中は陽が良く当たるなど)だったりすると、日々結露を繰り返して溜まる水が少しずつ増え、春先に乗ろうとしたらエンジンがかからない……というコトもあり得る。もちろん、本来はガソリンのみが通る燃料経路に水が入ること自体好ましい状態ではない。
そしてタンク内側に着いた水滴は、酸素と結合することでサビの原因になる。ちなみに給油キャップからタンク内を覗いてサビていないか確認する人もいるが、じつはキャップを覗いて見えるタンクの底は意外とサビにくく(ガソリン=油が入っているため)、じつは燃料キャップのあるタンクの“天井”の方が空気(=酸素)に触れるためサビやすいのだ。
すると今度はそのサビがガソリンに混入する。燃料経路にはフィルターが装備されているので、いきなりサビがエンジン内部まで到達することは考えにくいが、サビが多ければいずれはフィルターが目詰まりを起こし、やはり不調の原因になる。
結露対策は、タンク内の空気を減らすこと=満タン逆に考えればタンク内に空気が無ければ結露は起こらない。ということは、いつも満タンにして“空気の量を減らす”のがいちばんの対策になるわけだ。
たとえばツーリングの帰り道では、次にすぐ乗る予定が無くても、自宅に近いガソリンスタンで満タンにしてから帰宅する。また、通勤や通学などで頻繁に乗る人も、タンクが空になってから入れるのではなく、少々面倒でも短いサイクルで満タンにするのがオススメだ。
ガラスの曇りやコップの水滴と同じで、気温の低い冬場や湿度の高い梅雨時の方が結露は起きやすいので、その時期だけでも意識した方が良い。また冬場に乗らない人は、シーズンオフ前に満タンにして保管しよう。
ちなみに、できるだけタンク内の空気を減らすのが得策とはいえ、あまりにキャップの口元までパンパンに満タンにするのはNG。気温が上昇するとガソリンが温まって体積が増えるので(想像以上に膨張する)、ブリーザーから漏れる危険があるからだ。あくまで定められたレベル(大抵は給油口の穴の開いたプレートまで)の満タンにとどめておこう。
当たり前だが、満タンに近いほどタンク内の空気が少なくなる。そして空に近いほど空気が多いため結露によって水分が発生しやすくなる。長期間乗らない時は、燃料タンク内がサビが発生しにくい環境をキープしたい