【 ボクサー神話 】関連記事Vol.1 BMWボクサー最強!ベテランが誉めちぎる5つの最強 本記事Vol.2 BMWボクサー最強!100年通用した地を這う強み 10月22日公開予定Vol.3 BMWボクサー最強!大流行のアドベンチャー系のルーツ 10月24日公開予定

ボクサーエンジンと聞いて、BMWとすぐわかる人はかなりのキャリアなはず。車体の左右へエンジンのシリンダーが突き出している、100年にもなろうかという伝統的なエンジン形式だ。
常識的なエンジンは、ピストンが上下に往復するシリンダーと呼ばれる筒が、直立だったり前傾だったりの、上に向かって燃料タンクの下まで伸びている。ボクサーはこのシリンダーが水平に位置して、しかも車体の外へ向かって左右にあるという他にあまりない特異な方式。
そしてこの左右のピストンの往復運動が、ふたつ同時に内側へ向かってスライドし、ふたつ同時に外側へ向かう、伸びたり縮んだりする動きのため、ボクシングで試合開始のゴングが鳴るとき、ボクサーが左右のグローブを内側に向けてタッチするのに似ていることから、水平対向エンジンをボクサーと呼ぶのだ。

何と100年も続いているエンジン形式……いかにもベテランの中高年ライダーがBMWオーナーに多いのは、そんなクラシカルな味わい深い鼓動に魅了されているからと思われたかも知れない。
しかしボクサーは真逆。確かにオーナーはベテラン揃いだが、どちらかというとアグレッシブにガンガン攻める、サバイバル大好きライダーがほとんど。
その典型が、近年大流行になりつつあるアドベンチャー系カテゴリーのルーツでもあるボクサーのGSシリーズ。バイクも逞しいが駆るライダーも冒険好き、そんなイメージが世界中に広まり、アメリカではBMWシリーズの中でGS系が圧倒的なトップセラーだ。これに刺激をうけて、各メーカーもこぞってアドベンチャー系モデルを取りそろえるまでになっている。

ツーリング先で、ブーンというエキゾーストノートとを響かせながら、脱兎のごとく現れ瞬く間に消えていくカッ飛びBMW集団に出会ったことがあると思う。ボクサーにはそうさせずにはいられない、魔力?が潜んでいるのだ。

ベテランの、そこそこパワーマシンを操ってきたライダーなら、近年のボクサーが楽しませるハイパーぶりを誉めちぎる。それと同時に、様々な意味で頼り甲斐のある逞しさと頼もしさが、ベテランを惹きつける理由でもある。

ボクサーエンジンはライダーから見下ろすと左右に大きなシリンダーが突き出ている。左シリンダーがやや前なのは単気筒と同じ一対のクランクを共有していて、左右のクランクピンが衝突しないよう左気筒のピストンとを結ぶコネクティングロッド1本の厚み分が右より前に位置するからだ

左上からボクサーエンジンを搭載する、R1250R、R1250RS、R1250RT、R1250GS、R NINE T、R18

こいつをおいて他にない、といわせる圧倒的な醍醐味とリカバリー能力

実はボク自身(ネモケン)、BMWボクサーを5台(R1100RSとR1150RSが2台、R1200STと水冷R1200R)乗り継いだオーナー歴20年以上。バイク人生の楽しみ方まで大いに影響をうけたひとりだ。本人にとって、どうしてそこまで最強のバイクなのか、わかりやすく5つの最強のワケを列挙しよう。

ボクサーが最強のワケ1.醍醐味の大きさ。3,000rpmあたりの低い回転域でさえ、路面によっては空転防止のトラクションコントロールが介入しっぱなしになる強烈なパンチ力。
ヘアピンから大きなカーブまで、後輪が路面を蹴っ飛ばすダイレクト感がハンパない。99mmにはじまり、101mmから最新では102.5mmまで拡大された大径ボアは、ここまで大きいと日本メーカーにはお手上げのデトネーション(不完全燃焼)とは無縁のフラットな4バルブ燃焼室と相まって、瞬時の鋭いレスポンスと強烈なトルクが呼び出せる。都心から20分もかけずにワインディングで乱舞できる台北赴任中はストレスをいつでも吐き出せる最強の相棒だった。2.何泊かの長距離ツーリングから、友人に誘われた日帰りツーリングまで、すぐ対応できる常にready to goな状態。
パニアケースやトップケースに泊まりがけに備えた荷物を放り込めば、思い立ってすぐ出かけられる機動力が最強。この気構えナシにサバイバルな気分へスイッチできるポテンシャルに、ツーリング三昧人生にのめり込んだ時期もあった。3.リスク回避能力が並外れて高い。フェイルセイフ、ライダーのミスをリカバリーしようという考え方がもとよりある。
水平対向エンジンはクランクシャフトより上に質量重量がない超低重心で、転倒を防ぐ悪路踏破性が100年前からの強み。そういった優位性をベースに、二輪では世界初のABSを開発した歴史が物語る、トラクションコントロールはもちろん、サスペンションを走行状況に自動対応するフィーチャーまで他を寄せ付けない。どんなにベテランでも、ツーリング中にトンネル出口でウエット路面だったりの突然の変化にすべて対応できるワケではないので、こうした安心感は大きな味方。4.疲れない。サスペンションやライディングポジションだけでなく、すべての過渡特性が感性に馴染みやすく調教されている。
100kmを過ぎたあたりから徐々に差がつき300kmでは疲れ知らずで、もっと走っていたいと思わせる圧倒的な差になる。5.思い立ったらいつでもワインディングへ行きたくなる稼働率の高さ。
走ろうと思っていたのが、雨や寒さなど天候によって面倒になってしまうことがない。キャリアを積んでくると、この億劫にならない面が乗り続ける相棒には絶対に欠かせない。

これら最強のファクターは、100年も前から積み上げたノウハウがベースという絶対的な根拠を次回お伝えしよう。

台湾の五指山の市内から15分のワインディングにて

RIDE HI(オリジナルサイト)で読む