アドベンチャーバイクへの需要は高まるばかり。特に大人ライダーのセカンドステージのパートナーとして注目を浴びているのがBMW R1250GSだ。都心を抜け出しGSとの対話を楽しむべく西伊豆へと向かった

いつものワインディングもGSで走れば景色が変わる

台風の合間に都会の喧騒から抜け出すことにした。
新宿の朝はいつものとおり通勤に急ぐ人、バイク、クルマで溢れている。主要幹線道路では一瞬たりとも隙を見せることができない。同一車線であっても、同種であるはずのバイクが遠慮も車間距離も空けずにすり抜けていく。ちょっとした仲間意識のある自転車でさえも、その隙を見逃さずにペダルに力が入る。

ビッグアドベンチャーの目標。憧れられる存在

そんな殺伐とした都心の朝、このGSは何か映り方が違うのだろうか。信号待ちでクルマに並ぶと、ドライバーからの視線を頻繁に感じる。もちろん、物に溢れる現代、いまさらながらBMWブランドのバイクが珍しいわけでもあるまい。むしろ、その何にも似ずに進化を続けるGSのアピアランスを、多少なりともバイクに興味が「ある」、もしくは「あった」人であれば瞠目せずにはいられないのだろうと思う。

けして媚びることのない自信に溢れたGSのデザインは、我々世代のライダーが安心して選べるロングセラーモデルである。何がどうか? ではなく、いつかは乗りたい! とピュアに思わせる作り込みがあるからではないか。

BMWのGSシリーズは、近年のアドベンチャーモデルブームの真の立役者だ。1979年から開催されているダカール・ラリー(オリジナルはパリ‐ダカール・ラリー)へ参戦していたBMW二輪チームの市販モデルにして1981年ダカール・ラリー二輪総合優勝であるR80 G/Sが永い時を重ねて正常進化したモデルとも言えるだろう。

長年つくり続けられてきたからこその強さ

R1250GSの水冷DOHC仕様のエンジンフィーリングは、太く安心感のあるエキゾーストノートに、1,000rpm以下の低速からも何の不安もなくクラッチを繋げていけるトルクの太さ、ライダーへ過度なプレッシャーを感じさせないものだ。

この、低速から中速とも言える4,000rpm前後の回転数で圧倒的な存在感と共に、装備重量260㎏の車重があるGSが軽々と走ってくれることに驚かされる。
そして何より車体の味付けに唸らずにはいられない。交通渋滞が続く都内でのレーンチェンジ時におけるハンドリングの軽さは、その重厚な外見からはかけ離れた運動性能を持っており、これもまた、ライダーへのプレッシャーが軽減されている。

首都高速3号を抜け、東名高速道路を沼津方面へと走る。都心から離れるに連れ、交通量も幾分減りGSの巡航速度も安定し始める。路面の継ぎ目や轍などのいなしが極めて自然だ。
秀逸なのはフロントのテレレバーとリヤの片持ちパラレバースイングアームとスチールパイプフレームとのマッチングの良さで、エンジンフィーリングと相まって、どこまででも走り続けたくなる。他のバイクでは味わうことのなかった世界観だ。
右手に霊峰富士山を見ながらの東名高速道路の巡航は、心地よいボクサーエンジンのサウンドに包まれ、人とバイクの一体感がより高まるのを感じる。

いかなる路面も躊躇しない走破性

伊豆縦貫道を南下し修善寺を抜けて達磨山から西伊豆へ。途中、少しの雨が落ちて来たものの、滑りやすい濡れ始めの路面も安心して走れる懐の深さ。いつものワインディングも、GSで走ると景色が変わるから不思議だ。

先ほど落ちてきた雨が、山々の緑の木々を喜ばせ、大地に潤いを与える。美しく光るアスファルトのステージは、まるでGSのために作られたようだ。
思い立った時に旅に出る。思いっきり遠くまで行ってみたい。GSなら、大人が望む時間を分かち合うことができる。GSなら、実際にそれができる。時を重ねた本物が持つ強みを感じた。

幹線道路から少し外れればさらにGSの本領が発揮される。落ち葉の多い濡れた路面、まして初めてのコースであってもGSなら安心して走れる

ウインドスクリーンのハイト調整は、手動でノブを回して行う。小雨程度であればレインウエアが不要なほどのプロテクション効果を誇る

大型のカラー液晶メーターは必要な情報が見やすく配列されている

各種モードの設定や切り替えは左右にある各種スイッチで完結する。ジョグダイアルをはじめ、直感的な操作が可能だ

シートの高さは850/870mmの2段階に調節することができる。BMWらしい仕上がりで、長距離ツーリングでも疲労しにくい

BMW伝統のボクサーエンジンは、2019年モデルから排気量が1,254ccへと拡大されるのと同時に、可変バルブタイミング機構“シフトカム”を採用。吸気バルブのタイミングと吸気量を制御することで理想的な燃焼を実現している。なお、ライディングモードは「レイン」「ロード」「ダイナミック」「エンデューロ」の4種が標準装備となる

ブレーキの制動力とサスペンションの動きを切り離した機構を持つテレレバー。ブレーキング時に極端に前下がりにならず、安定したブレーキングが可能だ

リヤのパラレバーは、シャフトドライブの弱点であった加速時の強烈なテールリフトを、ピボットとトルクロッドを増やすことで穏やかな特性を実現。’80年代のGSから使われ続けている技術だ

SPECSpecificationsBMW R1250GSエンジン水冷4ストロークDOHC4バルブ水平対向2気筒総排気量1,254ccボア×ストローク102.5×76mm圧縮比12.5対1最高出力100kW(136hp)/7,750rpm最大トルク143Nm/6,250rpm変速機6速フレームトラス構造スチールパイプ車両重量256kgキャスター/トレール25.5°/99.6mmサスペンションF=BMWテレレバー
R=BMWパラレバーブレーキF=φ305mmダブル R=φ276mmタイヤサイズF=120/70R19 R=170/60R17全長/全幅/全高2,205/965/1,490mm軸間距離1,510mmシート高850/870mm燃料タンク容量20L価格255万3,000円~※価格などのスペックは2020モデル

RIDE HI(オリジナルサイト)で読む