「ロック愛が詰まっているんです」織田哲郎がくれたマイクスタンド

 デビュー25周年を象徴するものとして、ヒソカに大切にしているモノとは――。その問いに、相川七瀬(46)が差し出したのは……一本のマイクスタンドだ。

「デビューしたてのころ、織田(哲郎)さんが、 “これやるよ” と持ってきてくれたのが、このマイクスタンドなんです。『夢見る少女じゃいられない』は、マイクスタンドがあったほうがカッコいいからって」

 そのマイクスタンドは、織田がビーイング時代からライブで使用していたものだった。

「織田さんがそこまで意識していたのかどうかはわからないですけどね(笑)。マイクスタンドで歌う私をいち早く想像していたのかも。でも――」

――でも?

「自分がいいと思っていたロック観を相川七瀬で表現したと、いつも織田さんが言っていて。だから楽曲を含めて、織田さんのロックへの夢が私の中に詰まっていたと思う。そのひとつに、マイクスタンドもあったのかなと思いますね」

 でも、それだけじゃない。デビューから一緒に走り続けてきたマイクスタンドには、彼女の夢も詰まっている。

「何本か新しいものを作ったんですけど、どれも重さとかバランスとか微妙に違うんです。最初は黒だったのが、徐々に色が剥がれて、今はシルバーになっちゃったけど、やっぱり織田さんからもらったこれがいちばんなんですよね」

 デビュー25周年の今年、相川はそのマイクスタンドとともに、「ROCK KINGDOM TOUR 2021」のステージに立つ。

「コロナ禍での開催を正直、悩みました。でも、後で振り返ったときに、苦しみながらも、それでも工夫して、みんなで頑張ったんだと言えるようにしたいと考えました。もちろん、決めた以上は、今できる最高のライブを見せたいと思います」

 7月3日から始まるライブツアーには、音楽監督&ギタリストとして、織田もフル参戦することが決まっている。

「今回、織田さんがギターを弾く曲は、CDに収められた音がそのまま再現されるということで、100%混じりっけのない原曲。それを25周年にやれるというのは正直嬉しい。嬉しいんですけど……」

 束の間、何かを考えていた相川が「1カ月も織田さんといるのが久しぶりで」と、悪戯っ子のような笑みを浮かべた。

「安心もするけど緊張するというか。いつもダメ出しされていた記憶が甦ります。眉間にシワを寄せて歌うと注意されるなという感じです(笑)」

 ひとつ小さく溜息を吐く。しかし、織田がいなければ、歌手になることも、結婚して3人の子供に囲まれ、幸せな日々を送っていることもない。そういう意味では、織田哲郎という人は運命の人――そう言い切れる相川だからこその溜息なのかもしれない。

 そんな相川は、この先どこに向かって走っていくのか。

「それ、いろんな人に言われます。20代、30代では絵本や小説を書き、カラーセラピストの資格も取って。結婚して、子育てをして。46歳になった今は、國學院大學神道文化学部の学生としての日々も送っている。で、これから先どこに向かうの? って(笑)」

――笑い飛ばせるということは、進むべき道は見えている?

「見えています。それも、くっきりはっきりと。今はこれまでやってきたものが、すべてひとつの輪になろうとしているところ。目指すべき50代、60代に向かって飛び立つ準備に入っている感じです」

――それは……どういう?

「私、加藤登紀子さんになりたいんです。登紀子さんは歌っていても、文化的な活動をしていても、全部が加藤登紀子さん。それが私の理想なんです」

――具体的には?

「日本の伝統文化だったり、神道だったり、日本人が積み重ねてきたものを続けていくというところに、相川七瀬の名前を使っていきたい。探求者としてそれを発信していきたい。だから目標は、加藤登紀子さんなんです」

 すべてが相川七瀬。何をやっていても相川七瀬。理想を追い求めてフルスロットルで走り続ける。

相川七瀬 ROCK KINGDOM TOUR 2021
7月4日(日) Zepp Osaka Bayside、7月11日(日)SENDAI PIT、7月17日(土)Zepp Fukuoka、7月25日(日)Zepp Sapporo、7月31日(土)Zepp Tokyo

(週刊FLASH 2021年7月13日号)