日立と西鉄が共同でMaaSの実証実験 バス混雑時に寄り道を紹介 日立の「ナッジ応用技術」を活用して行動変容を促す

●MaaSアプリの流れ
実証実験はスマートフォンで使えるWebアプリを用いて実施する。実証実験の参加者はこのWebアプリで事前に参加者の好みを設定しておく。設問の内容は、Q「飲食店を選ぶ特に優先するのは」A「リーズナブル/行きやすさ/雰囲気」、Q「寄り道したい場所」A「天神/博多駅付近/中洲」など。
参加者が経路検索を行うと、発車時間や到着時間とともに、天候や時間を加味し、過去のデータからバスの混雑予報を表示する。混雑している場合は近隣の商業施設に寄り道して、混雑を避ける方法を提案する。

利用する予定のバスの発着時間と、混雑情報を表示する。混雑が予想される場合は提案した寄り道に誘導
バスの混雑している場合は、混雑を回避するために時間の過ごし方の提案として、飲食店のリコメンドが表示され、寄り道を促すしくみ。また、飲食店を訪れた後は、続けて飲食店をリコメンドしたりせず、ドラッグストアやスーパーなどを表示する。これはナッジの単発ではなく、前の行為と連携したナッジの連動として捉えている。

飲食店の後は、スーパーや日用雑貨をリコメンド
実証実験では、参加者に対してどの程度の行動変容を促したり、参加者と交通事業者、周辺の商業サービスの三方にメリットが生まれるかを検証する。
●「ナッジ応用」の活用方法
「ナッジ」の語源は「ひじで軽く突く」と言う意味で、人々が強制によってではなく自発的に望ましい行動を選択するよう促す仕掛けや手法を示す用語だ。
例えば、ユーザーが現在地と目的地を指定するとバスの時刻や混雑予想が表示されるサービスは従来からあった。

ただ、「バスの混雑を避けたい」というニーズが高まっている現在は、バスの混雑時にはユーザーの好みに併せて近隣の空いているカフェや飲食店を紹介し、利用できる割引クーポンを提供することで、混雑ピークを避けてカフェを利用するよう「ナッジ」する需要や付加価値が高まっているのではないか、とみている。

これを組み合わせたのが今回のMaaSアプリだ。バス混雑時には、ユーザーの好みに合わせて飲食店等への寄り道をナッジする。

また、飲食店を連続してリコメンドせず、前の予定を考慮して提案することを「ナッジの連携」としている。

実証実験終了後、参加者へのアンケートやインタビューなどにより、ナッジした情報に基づき利用者が実際にどの程度行動を変化させたのか、受容性を検証する。

日立としては、この独自の「ナッジ」技術をプラットフォーム化し、MaaSアプリに対して高精度なレコメンド情報を提供し、利用者にとって交通インフラを有効活用し、かつ地域経済の発展させることに寄与したい考えだ。ただし、今後「ナッジ」のプラットフォームの精度を向上させるには運行情報や混雑情報、天候、施設の空き状況などにおいて、過去のビッグデータだけでなくリアルタイムな情報も重要になってくるだろう。

●リアルタイム情報の反映に期待
今回の実証実験は「短期」的に行う第一弾で、主に「ナッジ応用技術の有用性の検証」を行う実証実験となる。リアルタイム情報などの習得は行われないため、実証実験で提示されるバスや飲食店の混雑情報は実際の混雑とは異なる可能性は考えられる。
この実験の成果が認められれば、「中期」や「長期」のステップに入り、そこではバスの混雑のリアルタイム情報や飲食店の待ち時間の情報の精度を求めていくことになる。外部のクラウドサービスやMaaSとの情報連携も行われるだろう。

特にバスや鉄道の車内やバス停(ホーム)などのAIカメラと連携したり、飲食店の交雑状況のAI解析など、最新ICT技術を活用したスマートシティ構想に発展すると面白い、と筆者は感じた。西鉄との取り組みではバスの実証実験の成果があれば、更には鉄道、周辺観光地域にも拡大していきたい計画だ。また日立としては、他の鉄道や地域への横展開も視野に入れている。今後の展開にも期待したい。
(神崎 洋治)
