採用例は1つだけ!?レアな2インチフロッピー「LT-1」:スイートメモリーズ File038

[名称] LT-1
[種類] 磁気ディスク
[記録方法] 磁気記録
[サイズ] 約49.5mm(実測)
[容量] 720KB
[登場年] 1989年頃〜

今や淘汰された懐かしの記録メディアたちに光を当てるこの連載企画では、ゆるっと集めているリムーバブルメディア・ドライブをふわっとご紹介していきます。

連載:スイートメモリーズ

「LT-1」は、ディスクサイズが約2インチとコンパクトながら、5.25インチ、3.5インチの2DDと同じ720KBの容量を実現していたのが特長のフロッピーディスク型メディア。

採用していたのは、「Zenith MinisPort」というラップトップPCのみとなるため、知名度はかなり低く、同じ2インチフロッピーに分類されるVIDEO FLOPPYと間違われることもあります。

MinisPortのスペックは、CPU 80C88、メモリー 1MB/2MB、640×200ドット液晶(CGA、80×25テキスト)、LT-1用FDD、重量約2.7kgというもの。OSはMS-DOS 3.3をROMで内蔵しており、LT-1からブートしなくても使えるようになっていました。別のPCとのデータのやり取りで困らないよう、オプションで3.5インチFDDも用意されていたほか、シリアル・パラレルポートを使ったデータ転送プログラムが標準装備されていました。

LT-1を製造していたのは、富士フイルム。フィルム系の磁気ディスクは、ホントなんでも作っていますね。なお国内では発売されていないと思いますが、「MADE IN JAPAN」となっていました。

カートリッジサイズは、実測で60×54×3mm。ロゴの向きを上にした場合、ドライブへの挿入方向は、矢印がある右方向となります。

右上の窓はライトプロテクトノッチで、裏面でこのスイッチをスライドさせることで、書き込み禁止と許可を設定できました。シャッターは樹脂製で、バネによって自動的に閉まるタイプ。ロック機構などはなく、指でスライドさせると簡単に開き、ディスクを見ることができます。

こちらがシャッターを開いてみたところ。中央にモーターとの接続部分があるとはいえ、基本的な構造が3.5インチFDと似ていることもあり、この写真だけを見ると、ちょっと細長くした3.5インチFDっぽさがあります。

先にVIDEO FLOPPYと間違われることもあると書きましたが、どのくらい似ているのか、並べてみましょう。

左がLT-1で、右がVIDEO FLOPPY。ロゴを上にした場合で、挿入方向はそれぞれ右、左と異なっています。VIDEO FLOPPYのシャッターは金属製の上、バネなしのロックあり。サイズ感こそ同じですが、形状やシャッターの構造などは結構違っています。

せっかくなので、シャッターを開けたものも。窓の大きさは、LT-1の方が半分くらいのサイズとなっています。こうしてみると、似ているのはサイズだけで、まったくの別物だというのが分かります。

LT-1は小型FDとして登場したわけですが、他のPCで使えるドライブはなく、基本的にMinisPort専用として使うしかありませんでした。翌年となる1990年には「MinisPort HD」という後継モデルが登場したものの、このモデルでは2インチFDDの替わりに20MBのHDDを搭載しており、LT-1は使えませんでした。

結局、初代MinisPort以外に2インチFDDを搭載するPCはなく、LT-1も使われなくなりました。

連載:スイートメモリーズ

参考:

2-inch floppy disk (LT-1), Museum of Obsolete Media
Zenith MinisPort, oldcomputers.net
PC MAGAZINE OCTOBER 17 1989 P276, Google books
2-inch floppy disks, Floppy disk variants, Wikipedia

外部サイト