コロナで変わる葬式のリアル。時代はリモート供養へ
日々の生活に大きな変化をもたらした新型コロナウイルス。じつは日常生活のみならず、お葬式や法要といった「お見送りの場」にも影響が出ています。
「どちらも人が多く集まる場ではありますが、延期することができません。そのため、お葬式や法要を実施する喪主・参列者・葬儀社やお坊さんのそれぞれが、いつもと異なる対応を迫られています」というのは、葬儀関連サービス企業でPRを務める高田綾佳さん。
今回は、新型コロナ禍で寄せられたよくあるトラブル例をもとに、お葬式や法要の現場で起きている様々な変化を教えていただきます。
リモートで故人を偲ぶのもひとつのお葬式の形です
●お葬式での変化:親族が参列できないことも
お別れの悲しみも冷めやらぬ間に行わなければならない葬儀。新型コロナの影響により、遠方からの参列や、大勢の方が集まること自体が難しい状況になってしまいました。
現在起こっている大きな変化の1つ目は、会食の減少です。通夜を終えた後の通夜振る舞いや告別式後の精進落としが「3密」にあたるため、参列者が顔を合わせて故人について語らい、偲ぶ場が少なくなっています。
そして2つ目の変化は、参列機会そのものの減少です。遠方の親族や家族以外の方を呼びにくく、また近隣の親族を呼んだとしても「短い時間ですませなければならない」という意識が高まっています。そのため、通夜をなくした「一日葬」や、通夜と告別式の双方をなくし、火葬場でお別れの場を持つ「火葬式」を選ぶ方が急増しています。なかには遠方の方に無理な参列を控えるよう連絡するケースも。
一方で、こうした急速な変化に悩みを抱える方も増えています。
ある女性は、緊急事態宣言が発令された4月に母を亡くしました。社交的だった母のために親しい方や親族まで招いた葬儀を行う予定でしたが、親族はそろって遠方、かつ高齢。高齢者への感染リスクを考えると、参列を促すことはできませんでした。
この女性は最終的に同居家族のみの火葬式で見送り、寂しいお別れの場となってしまったことを悲しんでいます。
●法要での変化:不要不急?そうじゃない?
故人への供養の節目となる法要。葬儀と異なり「不要不急にあたるのではないか」と考える方が多く、結果的に「遠方の方の無理な参列を控える」「法要を延期する」などの変化が訪れています。
法要は故人の命日をもとに忌日が決まっており、法要の一つ一つにも意味があります。そのため、延期したり後の法要と合わせて営むことができません。
たとえば一周忌を延期した場合、実施することは望ましいとは言えず、次の三回忌まで約1年待つ必要があります。
法要をはじめとする供養の場はグリーフケアの一端を担っており、故人を偲ぶことで悲しみや後悔が和らぎ、故人への思いや感謝が深まるとされています。
法要の忌日を過ぎてしまい、「回忌法要をできなかった」「きちんと供養できなかった」と後悔する方もいます。
一方、仏事を大事にしているにもかかわらず「法要ができない」という事実に向き合うことが難しいケースも見受けられます。
高齢の父を3月に亡くしたある女性は、4月に緊急事態宣言が発令されたことや、高齢者の新型コロナ重篤化のリスクを考え、母に「5月に行う予定の四十九日法要は延期しよう」と提案しました。しかし母は「それではお父さんが成仏できない!」と猛反対し、喧嘩に発展してしまいました。
「新型コロナさえなければ四十九日法要を滞りなく営めたのに…」と、女性は父を亡くしただけでなく、母と仲たがいしてしまった二重の悲しみを抱えています。
お葬式や法要の場において親しい方々とお別れの悲しみを共有することが難しい状況が続くなか、お別れの場を少しでもよいものにするために新たな動きが登場しています。
●(1) お別れの場を2回持つ
火葬式を選ばれた方からは、少なからず「本来は親族以外の親しい方々も交えてお別れしたかった」「従来の形式に沿って通夜や告別式を行いたかった」という声が寄せられています。そこで、新型コロナが終息した後に、改めてお別れの場を持つことを推奨する葬儀社が出てきました。
よく見られるのは、儀式の流れを踏襲した後葬(後日葬・骨葬・本葬など、呼び方は多岐にわたります)と、パーティ形式のお別れ会の2種類。
感染拡大が収まりつつあるタイミングを見計らってお別れの場を持つことで、参列が叶わなかった方に加え、やむを得ず最小限の葬儀をあげざるを得なかった家族の気持ちも晴れるかもしれません。
●(2) お葬式のオンライン中継
県境をまたいでの移動自粛が求められるなかでも、大切な方とのお別れは突然やってきてしまいます。そして、お葬式は先延ばしすることができません。
そこで全国的に導入が進んでいるのが葬儀のオンライン中継、リモート葬です。オンライン会議ツールや動画配信ツールを使い、遺族からURLを共有された方だけが葬儀の中継映像を見られる方式です。通信環境や端末によって視聴できる方はどうしても限られてしまいますが、県外で進学や就職をした若い参列者の方には好評なようです。
●(3) ITを駆使した法要
お葬式と並んで実施しづらくなってしまった法要。こちらもオンライン会議ツールなどを利用することで実施できる仕組みが生まれ始めています。
1つ目は、お寺が主に檀家向けに実施する「オンライン法要」。お寺と参列者の双方の環境が整っていることが条件となりますが、お寺で法要を開けない状況でも馴染みのお坊さんによる供養をお願いできます。
2つ目は、お寺とのご縁がなくとも故人を供養したい方向けの僧侶手配サービスが提供する、電話などによる法要です。菩提寺を持たない方が法要を実施する場合、会場は主に自宅になりますが、お寺より更に3密が生まれやすくなってしまいます。そこで、だれもが使える電話による法要など、多様なサービスが提供されています。
新型コロナの特効薬やワクチンが身近になるまで自粛と緩和が交互にやってくる日々が続きそうですが、身近な方とのお別れはそうした状況に関わらずやってきてしまうもの。いざという時にも納得してお別れの方法を選べるよう、最新状況を少しでも調べてみるのはいかがでしょうか?
●教えてくれた人
【高田綾佳さん】
インターネットで申し込めるお葬式を提供する会社「よりそう
」で広報を担当。お葬式やご供養に関することをより身近にする活動を行っている
「どちらも人が多く集まる場ではありますが、延期することができません。そのため、お葬式や法要を実施する喪主・参列者・葬儀社やお坊さんのそれぞれが、いつもと異なる対応を迫られています」というのは、葬儀関連サービス企業でPRを務める高田綾佳さん。
今回は、新型コロナ禍で寄せられたよくあるトラブル例をもとに、お葬式や法要の現場で起きている様々な変化を教えていただきます。
リモートで故人を偲ぶのもひとつのお葬式の形です
お葬式や法要は「三密」になりがち。コロナ禍で意識が変わった
●お葬式での変化:親族が参列できないことも
お別れの悲しみも冷めやらぬ間に行わなければならない葬儀。新型コロナの影響により、遠方からの参列や、大勢の方が集まること自体が難しい状況になってしまいました。
現在起こっている大きな変化の1つ目は、会食の減少です。通夜を終えた後の通夜振る舞いや告別式後の精進落としが「3密」にあたるため、参列者が顔を合わせて故人について語らい、偲ぶ場が少なくなっています。
そして2つ目の変化は、参列機会そのものの減少です。遠方の親族や家族以外の方を呼びにくく、また近隣の親族を呼んだとしても「短い時間ですませなければならない」という意識が高まっています。そのため、通夜をなくした「一日葬」や、通夜と告別式の双方をなくし、火葬場でお別れの場を持つ「火葬式」を選ぶ方が急増しています。なかには遠方の方に無理な参列を控えるよう連絡するケースも。
一方で、こうした急速な変化に悩みを抱える方も増えています。
ある女性は、緊急事態宣言が発令された4月に母を亡くしました。社交的だった母のために親しい方や親族まで招いた葬儀を行う予定でしたが、親族はそろって遠方、かつ高齢。高齢者への感染リスクを考えると、参列を促すことはできませんでした。
この女性は最終的に同居家族のみの火葬式で見送り、寂しいお別れの場となってしまったことを悲しんでいます。
●法要での変化:不要不急?そうじゃない?
故人への供養の節目となる法要。葬儀と異なり「不要不急にあたるのではないか」と考える方が多く、結果的に「遠方の方の無理な参列を控える」「法要を延期する」などの変化が訪れています。
法要は故人の命日をもとに忌日が決まっており、法要の一つ一つにも意味があります。そのため、延期したり後の法要と合わせて営むことができません。
たとえば一周忌を延期した場合、実施することは望ましいとは言えず、次の三回忌まで約1年待つ必要があります。
法要をはじめとする供養の場はグリーフケアの一端を担っており、故人を偲ぶことで悲しみや後悔が和らぎ、故人への思いや感謝が深まるとされています。
法要の忌日を過ぎてしまい、「回忌法要をできなかった」「きちんと供養できなかった」と後悔する方もいます。
一方、仏事を大事にしているにもかかわらず「法要ができない」という事実に向き合うことが難しいケースも見受けられます。
高齢の父を3月に亡くしたある女性は、4月に緊急事態宣言が発令されたことや、高齢者の新型コロナ重篤化のリスクを考え、母に「5月に行う予定の四十九日法要は延期しよう」と提案しました。しかし母は「それではお父さんが成仏できない!」と猛反対し、喧嘩に発展してしまいました。
「新型コロナさえなければ四十九日法要を滞りなく営めたのに…」と、女性は父を亡くしただけでなく、母と仲たがいしてしまった二重の悲しみを抱えています。
新型コロナに対応した「お別れの場」は、リモートに変化
お葬式や法要の場において親しい方々とお別れの悲しみを共有することが難しい状況が続くなか、お別れの場を少しでもよいものにするために新たな動きが登場しています。
●(1) お別れの場を2回持つ
火葬式を選ばれた方からは、少なからず「本来は親族以外の親しい方々も交えてお別れしたかった」「従来の形式に沿って通夜や告別式を行いたかった」という声が寄せられています。そこで、新型コロナが終息した後に、改めてお別れの場を持つことを推奨する葬儀社が出てきました。
よく見られるのは、儀式の流れを踏襲した後葬(後日葬・骨葬・本葬など、呼び方は多岐にわたります)と、パーティ形式のお別れ会の2種類。
感染拡大が収まりつつあるタイミングを見計らってお別れの場を持つことで、参列が叶わなかった方に加え、やむを得ず最小限の葬儀をあげざるを得なかった家族の気持ちも晴れるかもしれません。
●(2) お葬式のオンライン中継
県境をまたいでの移動自粛が求められるなかでも、大切な方とのお別れは突然やってきてしまいます。そして、お葬式は先延ばしすることができません。
そこで全国的に導入が進んでいるのが葬儀のオンライン中継、リモート葬です。オンライン会議ツールや動画配信ツールを使い、遺族からURLを共有された方だけが葬儀の中継映像を見られる方式です。通信環境や端末によって視聴できる方はどうしても限られてしまいますが、県外で進学や就職をした若い参列者の方には好評なようです。
●(3) ITを駆使した法要
お葬式と並んで実施しづらくなってしまった法要。こちらもオンライン会議ツールなどを利用することで実施できる仕組みが生まれ始めています。
1つ目は、お寺が主に檀家向けに実施する「オンライン法要」。お寺と参列者の双方の環境が整っていることが条件となりますが、お寺で法要を開けない状況でも馴染みのお坊さんによる供養をお願いできます。
2つ目は、お寺とのご縁がなくとも故人を供養したい方向けの僧侶手配サービスが提供する、電話などによる法要です。菩提寺を持たない方が法要を実施する場合、会場は主に自宅になりますが、お寺より更に3密が生まれやすくなってしまいます。そこで、だれもが使える電話による法要など、多様なサービスが提供されています。
新型コロナの特効薬やワクチンが身近になるまで自粛と緩和が交互にやってくる日々が続きそうですが、身近な方とのお別れはそうした状況に関わらずやってきてしまうもの。いざという時にも納得してお別れの方法を選べるよう、最新状況を少しでも調べてみるのはいかがでしょうか?
●教えてくれた人
【高田綾佳さん】
インターネットで申し込めるお葬式を提供する会社「よりそう
」で広報を担当。お葬式やご供養に関することをより身近にする活動を行っている