もともと勉強嫌いだった筆者は、どんな本からモチベーションをもらったのでしょうか(撮影:尾形文繁)

「本や教科書を読んでいるのに、なかなか身に付かない」

受験生に限らず、勉強熱心なビジネスパーソンでも、このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

「かつての僕は、まさにそうでした」。2浪、偏差値35という崖っぷちから1年で奇跡の東大合格を果たした西岡壱誠氏は、自らの経験を振り返って言います。「でも、ちょっとした工夫で、劇的に改善したんです」。

教科書、参考書だけでなく、あらゆる本の読み方を根本から変えた結果たどり着いた読書法をマンガで解説する『マンガでわかる東大読書』を刊行した西岡氏に、「勉強のモチベーションを高める本」を紹介してもらいました。

『マンガでわかる東大読書』第1話無料公開中!

本との出会いが僕の「勉強嫌い」を治してくれた

みなさんは「勉強」は好きですか?


学生は学校に通って勉強しなければなりません。受験勉強や試験勉強も必要です。社会人になってからも仕事のために勉強したり、学び直しや資格試験に挑んだりしなければなりません。人間は一生、勉強と付き合っていかなければならないんですよね。

しかし、そんな一生関わっていかなければならないものであるにもかかわらず、「勉強するのが好きだ」と言う人ってなかなかいませんよね。「勉強は好きですか?」と聞かれたら「嫌いだ」と答える人のほうが多いと思いますし、ぶっちゃけ大体の人が「やりたくない」と考えていると思います。

僕もずっと、勉強が嫌いでした。勉強なんてやりたくないとずっと思っていたし、だからこそ偏差値35でした。

そんな僕が、「勉強」を頑張ろうと思えるようになったのは、本と出会ったからです。今日は「勉強のモチベーションが上がる本」を3冊ご紹介したいと思います。

そもそも、なぜ僕たちは勉強を「つまらない」と感じるのでしょうか? それは、勉強は「受け身」でやるものだと思い込んでいるからです。

僕たちは先生から話を聞いたり、本を読んだり、人から一方向的に情報を教えてもらうことを指して「勉強」だと考えがちです。一方向で受け身だから、どうしても「つまらない」と感じてしまうんです。

勉強は「能動的」にするといっきに楽しくなる

勉強のやる気を高める本1:『先生はえらい』

でも実は、勉強の主人公は学ぶ側なんだ」ということを教えてくれるのが、この『先生はえらい』(内田樹、ちくまプリマー新書)です。


タイトルが『先生はえらい』なので、「無条件で先生に従えば成績が上がる!」みたいな内容かと勘違いしそうになるのですが、そんな本ではありません。

むしろ「どんな先生であってもいい。先生はえらいんだと僕らが考えているうちは、実は何からでも、どこからでも学ぶことができるんだ」ということを教えてくれるのです。

もともと人間は、暇だから勉強を始めました。schoolという言葉は、古代ギリシャ語のscalaが語源だと言われていますが、この言葉は「暇な時間に勉強や芸術の道に進み、充実した時間を過ごすこと」だったと言われています。

充実した時間を過ごすために、いろんな物事を自分で考えて楽しむ、それが「勉強」だったのです。

「勉強」というと「強いられる」というニュアンスが強く、他の人から押しつけられるようなイメージがあります。でも「授業を受ける」を英語で言うと「”take” a class」であり、授業も勉強も、自分から”取りに”行かなければならないのです。

それを忘れて受け身になっていると、どうしてもつまらなくなってしまう……だから能動的に学ぶべきだということを、この本は教えてくれるのです。

学ぼうと思えば、人間は何からでも学べます。どんなにつまらない本からも、どんなに面白くない授業からも、もしかしたら自分の努力によって学びを得て、楽しむことができるかもしれない。そんなふうに考えることで、勉強が楽しくなる本が、この『先生はえらい』なのです。

大人から子どもまで幅広く読める、めちゃくちゃ読みやすい本なので、みなさんぜひ読んでみてください!

やっぱり勉強って、世の中に出てからどんなふうに役に立つのかわからないとやる気が起きないですよね。

「これ、なんのためにやっているんだろう?」と考えてしまうようだと、どんなことでもモチベーションを維持するのは難しいです。

だからこそ、「勉強したことがどんなふうに活かせるのか」を知ることが重要なのです。

そもそも勉強とは自然や社会を知るためにやるもので、勉強すれば勉強するほど、実社会で活かせるタイミングが増えてきます。しかしそれを知らずにいると、勉強のモチベーションも湧きませんし、勉強を積極的に世の中と結びつけようとすることも少なくなってしまいます。

勉強のやる気を高める本2:『ニュースの"なぜ"は日本史に学べ』

そういう点でおすすめなのが『ニュースの"なぜ?"は日本史に学べ』(伊藤賀一、SB新書)、『ニュースの”なぜ?”は世界史に学べ』(茂木誠、SB新書)のシリーズです。


このシリーズはその名の通り、ニュースとして報道される世の中の事件や出来事がいったいなぜ起こっているのか、背景にあるのは何なのかについて、日本史や世界史の勉強と結びつけて教えてくれる本です。イスラム国の問題やアメリカの問題、憲法改正や天皇……さまざまなニュースの裏側にある、日本史や世界史の話を紹介してくれているのです。

僕たちは、ニュースを見ても「へー」と流してしまいがちです。その背景や原因を知ろうとしません。

しかしそうではなく、「どうしてそんなことが起こったのか?」ということを能動的に考えてみると、見える景色が変わってきます。この体験は、純粋に「楽しい」ものです。

この楽しさを体感して、勉強のモチベーションを上げてもらえればと思います。

勉強の「やる気」はマンガでも高められる

最後はマンガです。

合理的に行動するだけが人間ではないので、「やらなきゃいけないことはわかってるんだけど、やる気が起きないんだよな」ということもあるでしょう。

そういうときはやはり、物語に元気づけられて勉強に活かすのは、とても有効だと思います。勉強のモチベーションになるなら、読むのはマンガでもまったく問題ないはずです。

僕も受験生時代、『ドラゴン桜』(三田紀房、講談社)を読んで勉強のモチベーションを上げ、『3月のライオン』(羽海野チカ、白泉社)を読んで「僕も頑張らなきゃ!」と自分を奮い立たせていました。物語は、僕たちに努力するモチベーションを与えてくれるのです。

勉強のやる気を高める本3:『かぐや様は告らせたい』

そんな中で僕が一番「これは勉強のモチベーションになる」と思うのが、『かぐや様は告らせたい』(赤坂アカ、集英社)というマンガです。


天才的な頭脳を持った主人公たちが、相手に「好き」と言えないから、相手から「告らせる」ためにいろんな策を弄する……というラブコメディです。

現在アニメ化もしている大人気作であり、ギャグの要素も強いのですが、しかしポップな作品である一方で「努力」というものと真正面から向かい合っている作品でもあります。

このマンガの主人公は、自分の好きな女の子と肩を並べるために1日に何時間も勉強する、めちゃくちゃな努力家です。元から天才的な才能を持っているわけではなく、むしろできないことも多いからこそ、勉強以外の面でもいろんなことに努力し、失敗したり挫折したりしながらも、前に進んでいきます。

「努力の意味」がわかれば勉強のやる気は高まる

そうやって人より何倍も努力しているからこそ、努力の仕方がわかっており、どんな分野も他の人よりも習得が早い。いろんなところで努力しているから、その努力を他のところでも活かすことができる。この主人公の姿を通して、「努力することの意味」が非常によく伝わってくるのです。

「努力する」というのは大変な行為ですし、それで結果がついてくるかはわかりません。だから多くの人は、「勉強しても意味がないかもしれないから」「自分は出来が悪いから」と諦めてしまいます。

でも、この作品で描かれているように、努力には必ず意味があり、短期的に結果につながらなかったとしても、長期的には必ず役に立つものです。勉強は、そういう意味で「必ず役に立つ」ものです。他の分野より努力が結果につながりやすく、テストで努力が数値になって自分の前に表れてきます。勉強は他でも活かせる「努力の型」を学びやすいのです。

そういうことを教えてくれる作品なので、僕も学生の前で話すときはいつもこの作品の話をします。学生だけでなく大人も元気づけられる作品だと思うので、みなさんぜひ読んでみてください。

いかがでしょうか? やる気が出ないとき、勉強しようというモチベーションがわかないときは、ぜひこの3作を読んでみてください!