実名12社を大公開!10年後消える会社、生き残る会社
■日本の基幹産業、自動車が危ない
自動車業界は、アフター・コロナにもっとも大きく業界が変容する産業の一つです。
現在の自動車業界のミライを表すキーワードが、“CASE(ケース)”です。CASEとは、「Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)」を意味する英語の頭文字をとった造語です。
2020年上半期、新車販売台数が低減するなかで、生き残る鍵は、まさに“CASE”です。
しかし、これを実現するまでは茨の道です。自動運転や電動化には、多額の開発費用が必要であり、さらに旧来の自動車メーカーが得意とする機械系以外の技術が必要になります。具体的には、AIや通信、電池などがそれにあたります。
さらには、都市デザインなど不動産業界との協業も視野に入れなくてはなりません。結果、自動車部品メーカーの再編成はかなり加速するでしょう。
すでに、ホンダと日立オートモティブシステムズは、19年10月にホンダ系部品3社の日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業の4社で経営統合を行っています。しかし、これは遅すぎる“改革”です。国内部品メーカーの再編は、海外と比べると10年ほど遅れており、今後大きく市場から後退することが予想されます。
さらに、自動車業界の変化によって、物流業界も打撃を受けます。
今後、モビリティサービス(自動車による移動サービス)の普及によって、個人所有の「乗用車」は、社会インフラとしての「商用車」に移行していきます。商用車は、不特定多数が乗るライドシェアをイメージすればわかりやすいでしょう。
30年には、広義の商用車市場が全体の52%、乗用車が48%になるという予測も出ています。今後、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に代表されるメガプラットフォーマーが商用車との関わりが深い「物流」に取り組むとも言われており、こうした外資の参入は、既存の物流業界をすべて駆逐していく可能性があります。
■百貨店・総合スーパーはどうなるのか
コロナショックにより、百貨店や総合スーパーのデジタル化やEC整備の必要性は、より明確になりました。
しかし、現状でも大手百貨店において、EC事業は売り上げ全体の多くを占めていません。
ここでも、GAFAの一つであるAmazonの脅威があります。
Amazonは、大手スーパーのライフコーポレーションと組み、生鮮品や総菜を配達するサービスを19年9月から開始しています。注文から最短4時間で生鮮食品を自宅に届けるAmazonフレッシュをはじめ、今やAmazonは書籍、衣料、電化製品だけでなく生鮮品まで力を入れるようになっています。
大手スーパーでEC事業に力を入れていない企業は危ないと思って間違いありません。
■「銀行に就職したら一生安泰」は過去のもの
コロナショックがもたらしたのは、既存の秩序の解体と、再編です。特に、これまで何をしなくても「儲かる仕組み」を作れていた業界ほど、その“解体”のリスクに晒されます。
たとえば、銀行。
現在の銀行業界では、日本銀行の「異次元の金融緩和」により、貸出金利が低下し、本業である預貸業務の収益の縮小化が進んでいます。
さらに今後、国内人口の大幅な減少により、資金需要の伸びは大きな期待が持てません。現在は国債の金利が低いため、その運用先は限られています。そのうえ、日銀の当座預金を増やせば、マイナス金利がかかってします。
にもかかわらず、銀行業界はデジタル化への投資を進める必要があり、コストはかさむばかり。こうした銀行業界にもたらされた大変化により、資金力のない地方銀行は淘汰再編が進むでしょう。すでに、19年7月には横浜銀行と千葉銀行が業務提携を発表し、19年9月にはSBIホールディングスが「第4のメガバンク」を掲げて地銀に資本提携を呼びかけており再編が始まっています。「銀行に就職したら一生安泰」などという言葉は、もはや完全に過去のものとなりました。
■総合商社ですらも危うい状況に…
銀行同様、毎年大学生の「就職したい企業ランキング」で上位に入る総合商社も厳しい状況に置かれています。
総合商社は、さまざまな商流の中に介在して手数料を取ることがメインの事業です。しかし、今後は商社を含め、「仲介」そのもの意味が問われてきます。さらに、商社は資源バブルで得た利益を次なる投資にうまく生かせていのが現状です。
また、総合商社は「非資源に力を入れる」と言いながらも、爆大なお金が動く資源事業に目が行きやすく、依然資源事業に力を入れていることからも変化への対応が遅れていることが伺えます。今後は、非資源事業に取り組まなければ、総合商社ですらも危うい状況に立たされます。
■生き残るトヨタ、ソフバン、伊藤忠
上記を踏まえて、10年先も世の中に必要とされている企業について言及しましょう。まず挙げられるのは、ソフトバンクとトヨタ自動車。現在、両社は世界に立ち向かうために共同出資会社「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)を創業し、モビリティサービスのプラットフォームを担うべく奔走しています。
商社では、じわじわと追い上げてきた伊藤忠商事の存在感がここから先10年で高まりそうです。同社は、前述した資源部門に依存せず、生活消費関連などの非資源事業に地道に投資を続けています。さらに、伊藤忠商事の関連会社である、SIer(システムインテグレータ)の伊藤忠テクノソリューションズも、クラウド化が一気に進むこの先、需要が高まる底堅い企業だと言えます。
さらに、伊藤忠商事の関連会社であるイーギャランティーも地位を盤石なものにするでしょう。そのキーワードは、「信用力」。同社は、企業が抱える売掛債権の保証を手掛けることで企業の信用スコア・倒産確率データを保有している企業です。不確実性が高まる時代において、企業の信用を可視化してくれる同社のサービスへの需要は大きく高まります。
■ソニー、富士フイルム、オリンパスも…
ものづくり業界はどうでしょうか。
今後、さまざまなモノがインターネットにつながる時代になると、日本電産や村田製作所に代表される電子部品メーカーは存在感を強めるでしょう。今年注目を集める5G導入後に存在感を増すのが、ソニー・エンタテインメントなど、コンテンツも豊富に持つソニーです。また、ものづくりへの解決策を提供する力が強いキーエンスはより力を発揮します。
日本国内では、人口減少による需要減に注目が集まりますが、世界に目を向けると、人口増加は今後も続きます。こうした状況で強いのが、世界市場を持っている企業です。
食品分野では、アジア圏でも多くの売り上げを持つ日清食品、医療分野では富士フイルム、オリンパスなどは日本国内の不況とは無縁で好調を続けるでしょう。
どんな状況でも、敗者がいれば、勝者がいるもの。「10年後生き残る企業」として挙げた企業は、どれもその根拠を強く持ち合わせているのです。
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馬渕 磨理子(まぶち・まりこ)
テクニカルアナリスト
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。
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(テクニカルアナリスト 馬渕 磨理子)