『ラフ&ロウディ・ウェイズ』ジャケット写真(Courtesy of Columbia Records)

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ボブ・ディランが6月19日にリリースする最新アルバム『ラフ&ロウディ・ウェイズ』(日本盤は7月中旬予定)のジャケット写真は、50年以上も前、明らかに本人とは縁もゆかりもない人物によって撮影された。現在86歳の写真家イアン・ベリー氏が、ローリングストーン誌の電話取材に答えてくれた。

ボブ・ディランの最新アルバム『ラフ&ロウディ・ウェイズ』のジャケット写真は、50年以上も前、明らかに本人とは縁もゆかりもない人物によって撮影された。

「たいていの写真家と同じく、私もビジュアル畑の人間なんです」と、現在86歳の写真家イアン・ベリー氏はイングランドのソールズベリーにある自宅から、ローリングストーン誌の電話取材に答えてくれた。「もっとも、ミリアム・マケバのような人たちともずいぶん長いこと付き合ってきました。ミュージシャンのプロフィール写真も手がけましたよ。(ダヴィッド・)アシュケナージといった、どちらかというとクラシック系の人々がほとんどですが」

それでも、写真の使用許可を求めるメールを受け取った時は光栄に感じたという。「嬉しかったですね」と本人。「ディランのレコードジャケットだなんて、最高の栄誉ですよ」

1964年の写真には、着飾った男女がクラブで踊る姿と、その後ろでジュークボックスをのぞき込む男の姿が映し出されている。いずれの人物も顔は見えないが、写真からは好奇心とロマンスが滲み出ている。

●【写真】『ラフ&ロウディ・ウェイズ』に使われた、イアン・ベリーによる1964年のオリジナル

ベリーがこの写真を撮影したのは、イーストロンドンの街ホワイトチャペルのケーブル・ストリートにあった、今は無きもぐりのクラブだった。イングランドのブラックカルチャーに関する記事用に写真を撮ってほしい、とオブザーバー紙から依頼を受けたのだ。「薄暗い中、35ミリのカメラで、大急ぎで撮影しましたね」と本人。「キリのいいところで退散しなきゃいけないのは分かっていました。というのも、撮影許可を取ってなかったんですよ」

この瞬間をフィルムに収めたとき、カップルがどんな音楽で踊っていたかは覚えていない。だが、この女性に心惹かれたことは今も覚えている。「私はいつも、女性には目がないんですよ」と本人。「これまで3回結婚しました。あの女性はスタイルが良かったですね。ジュークボックスと並んだ構図が気に入りました」

15〜20分ほど撮影したところで、クラブの客たちがカメラを向ける見知らぬ男にうんざりし出した。「入口のところにビール瓶の箱が置いてあったんですが、みんなが私に向かってビール瓶を投げ始めたので、退散したました」と本人。「こういうのは世界のあちこちで大勢のカメラマンが経験することですが、私がイングランドで経験したのはあの時だけだったと思います」

現在、ベリー氏の膨大なアーカイブはマグナム・フォトが管理している。以前にもマグナム・フォトはディラン側と取引したことがある。ブルース・デヴィッドソン氏が1959年に撮影した車内でメイクラブする若いカップルの写真は、ディランの2009年のアルバム『トゥゲザー・スルー・ライフ』のジャケットに起用された(ディランは2001年の『ラヴ・アンド・セフト』以来、オリジナルアルバムのジャケットに自分の写真を一度も使用していない)。

今回も取引を担当したのはマグナムだったが、最終的に許可を出す前にベリー氏に連絡が入った。「当然、もともとの作品はモノクロ写真でした。あちらは採色してもいいか、私に確認を取りたがっていたんです」と本人。「私は全く構いませんでした」

ベリー氏はディランの楽曲にそれほど詳しいわけではないが、彼の妻は大ファンだそうだ。「私よりも妻のほうが(アルバムジャケットのニュースに)興奮していますよ」と本人。「もちろん、私も折に触れて『悲しきベイブ』とかその辺を聴きはしますが、どちらというと、私よりも妻のほうがよく聴いています。私はジョーン・アーマトレイディングとかジョーン・バエスとか、歌詞がちゃんと聞き取れるシンガーのほうが好きですね」

『ラフ&ロウディ・ウェイズ』は6月19日リリース予定(日本盤は7月中旬予定)。すでにアルバムから「偽預言者」「最も卑劣な殺人者」「アイ・コンテイン・マルチチュード」の3曲がリリースされている。

近年のスタジオ・アルバムとしては、主にフランク・シナトラがレパートリーとしていたグレイト・アメリカン・ソングブックと呼ぶに相応しいカバー作が、2015年『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』、2016年『フォールン・エンジェルズ』、2017年『トリプリケート』と3作続いていた。『ラフ&ロウディ・ウェイズ』はスタジオ・アルバムとして39作目で、全10曲収録のCD2枚組。2016年にソングライターとして唯一のノーベル文学賞受賞者になって以来、新曲を集めたアルバムとしては初めてになる。

●ボブ・ディランが『追憶のハイウェイ61』でロックの歴史に残したもの


『ラフ&ロウディ・ウェイズ』
ボブ・ディラン
2020年7月中旬発売予定
W紙ジャケット・CD2枚組
解説・歌詞・対訳付
予価:¥3,600+税
https://sonymusicjapan.lnk.to/BobDylan_RRW

「偽預言者(False Prophet)」

終わらぬ日がまた一日
船がまた一艘 
怒りと苦虫と疑いの日がまた一日
どう起こったか 私は知っている
始まったのもこの目で見た
世界に心を開いて見せたら世界に裏切られた

ハロー メアリールー ハロー ミス・パール
空の星は君たちよりも明るく輝いているよ
君たちはそれが仕事なのさ こちらもだよ
私は色々なものの敵
意味のない人生を送ってる人間の敵
私は嘘っぱち預言者じゃない 
知ってることを知ってるだけだ
寂しい者が行けるところだけに私は行く

私は平等の中の最初の一人
誰の二番目でもない
最高の最後の一人
残りは埋めればいい
もしくか成功か 銀と金
6フィート地下に埋め 魂に祈りを捧げよう
何を見てやがる? 見るべきものは何もない
爽やかな風が吹いている 庭に散歩に行こう
大きくて広い庭
噴水近くの日陰に腰を下ろそう

聖杯を求めて私は世界を探し回った
愛の歌を歌い 裏切りの歌を歌った
何を飲もうと気にしない 何を食おうと気にしない
素足で私は魂の山に登る
ダーリン あなたは私を知らない 想像すらできない
私は嘘っぱち預言者じゃない
言ったことを言ってただけだ
誰かに復讐するためにここにいる
ハットを出せ とっとくものは何もない
口を開けろ 金をぎゅうぎゅう詰めにしてやる
哀れな悪魔め できるなら見てみろ
神の街は丘の上にある

ハロー ストレンジャー ロング・グッドバイ
お前がこの地を支配してる だが私もだ
脳ミソの腐った老いぼれめ
あなたと結婚しよう 鎖に繋がれ
ダーリン 私がどんな人生を送ってきたか知ってるはず
二人の笑顔が出会った時
私は嘘っぱち預言者じゃない
誰の花嫁でもない
いつ生まれたのかも思い出せない
いつ死んだのかも

聞取りと訳:丸山京子

*原詞が無い中、短時間で聞き取ってその一部を翻訳したものです。この大作をいち早く理解する手助けになればと存じます。どうぞご了承ください。