走りありきの本格ホットハッチは登場前から大人気

 日本の景気は絶好調……という雰囲気ではありませんが、国産のニューモデルは続々と登場することで、2020年も市場の盛り上がりが期待されています。トヨタはヴィッツあらため「ヤリス」、ホンダは「フィット」の4代目を発表するなどメインストリームのニューモデルもあれば、趣味性の強いカテゴリーやEVにもニューフェイスが登場することがわかっています。そんな2020年に登場するであろうモデルから、ユニークな装備や期待のメカニズムという視点で5台をピックアップしてみましょう。

1)ホンダ・フィット/アコード

 これまでホンダのハイブリッドシステムには小型車用1モーターの「i-DCD」、中型車用2モーターの「i-MMD」、大型&スーパースポーツ用3モーターの「SH-AWD」とありましたが、今後は2モーターを主軸としていくことがアナウンスされています。そして、間もなく登場する新型フィット、新型アコードからi-MMDは「e:HEV」と改名されることも明らかになっています。

 フィットは1.5リッター、アコードは2リッターエンジンと組み合わせる「e:HEV」の構造をみると、モーターの厚みなどは異なっていますが基本は共通。名前が変わったからといってi-MMDで培ってきたノウハウを捨てたわけではありません。業界トップクラスの高効率ハイブリッドというストロングポイントは、ますます磨きがかかっています。

 その特徴は基本的にはエンジンは発電を担い、モーターで走行することでスムースさに優れていること。また、加速時や高速巡行時にはエンジンの出力を直接タイヤに伝達します。モーターをエンジンがアシストするような感覚は独特で、新しい時代を体感できることでしょう。

2)トヨタGRヤリス

 WRCで勝つために生まれたともいえる「GRヤリス」は、空力や軽量化を重視した3ドアハッチバックの専用ボディを持つスポーツカー。発売2週間で2000台もの予約を集めたというのも納得のハイスペックを有しています。エンジンは専用開発といえる「G16E-GTS」、排気量1618ccの3気筒ターボエンジンは、最高出力200kW(272馬力)、最大トルク370N・mを発生します。

 サスペンションは、フロントがストラットでリアはダブルウィッシュボーン、ヤリスの名前がついていますが、燈火類以外は別物といえる内容です。

 その最大のポイントといえるのが「GR-FOUR」と名付けられた4WDシステムでしょう。プロペラシャフトのリヤ側に置かれた多板クラッチにより前後の駆動力配分を自在に制御できるのが特徴。欧州で発表されたリリースによれば「前後駆動力配分は100:0〜0:100までコントロールできる」というのです。370N・mの最大トルクですから後輪駆動状態にすれば、どこでもアクセルターンが可能といえるほどです。もちろん、リアデフの容量がそれを許せばという条件付きとなりますが。

 ともかくFF状態からFR状態まで自由自在に変えられるとなれば、クルマの楽しみ方も広がるはずですし、走行シーンによって最適な駆動配分に変えることで、これまでにないパフォーマンスを味わうことも期待できます。割合にシンプルなメカニズムながら、多様な乗り味を実現できる「GR-FOUR」は、スポーツ4WDの新スタンダードとなるはずです。

走りで高い評価を受けるスバルが燃費でものし上がるか

3)スバル・レヴォーグ

 2019年の東京モーターショーにてプロトタイプが世界初公開されたスバルのスポーツツアラー「レヴォーグ」。その心臓部には新開発の1.8リッター水平対向リーンターボエンジンが搭載されることも同時に発表されました。

「リーン」という言葉が入っていることからもわかるように希薄燃焼を行なうターボエンジンです。希薄燃焼をする目的は燃費性能の向上ですが、つまり熱効率に優れたエンジンを目指しているわけです。なんと、その最大熱効率は40%オーバーといいます。過給エンジンとしては世界最高レベルの熱効率を実現したというわけです。世界でも最大熱効率40%を超えているエンジンは数えるほどしかありません。燃費性能においてネガな評価を受けることの多かったスバルですが、ここに来て一気にトップランナーへと駆け上がったといえます。

 はたして、新世代プラットフォームを強化したというレヴォーグのシャシーとリーンターボエンジンの組み合わせが、どのような走りを生み出すのか。非常に楽しみな一台です。

4)マツダMX-30

 2019年の東京モーターショーで初公開されたクルマといえば、マツダのEV「MX-30」も忘れられない存在です。まずは欧州でローンチ、日本での発売はしばらく後になるという評判でしたが、市場からのリクエストに応えてなのか2020年度内での発売に向けて、さまざまな作業が進められているという噂も聞こえてきます。

 さて、このMX-30において注目したいポイントは、マツダらしいEVとしての走りであったり、登場が予告されているロータリーエンジンを使ったレンジエクステンダーの中身だったりと多岐にわたりますが、スタイリングでいえば、帰ってきた『フリースタイルドア』ではないでしょうか。

 同社の4ドアスポーツクーペ「RX-8」が採用していた観音開きドアが、EVのスタイリッシュなフォルムでよみがえったのです。モーターショーで公開されたプロトタイプでは、リヤドアにアウターハンドルは見当たりませんから、後席に乗り込むときはフロントドアを開ける必要があります。RX-8でも、リヤの乗員は自力で乗り降りができないというネガがありました。果たして、その辺りの対策がどのようになっているのか。使い勝手が向上していればフリースタイルドアの価値が再発見されるきっかけとなるかもしれません。

5)ダイハツ・タフト

 かつてダイハツのリッタークラス・クロカン4WDモデルに使われていた「タフト」という名前が、軽自動車のクロスオーバーSUVとして復活します。東京オートサロン2020にてプロトタイプが公開されたタフトは、そのスクエアなスタイルからひと目でわかるようにスズキ・ハスラーの対抗馬といえるニューモデルです。

 ダイハツがスーパーハイトワゴン「タント」にフルモデルチェンジから採用した新アーキテクチャ「DNGA」によるSUVスタイルの走りがどのように仕上げられるのかにも興味津々ですが、オートサロンにて公開されたプロトタイプで注目を集めていたのはガラスサンルーフの採用。軽自動車のガラスサンルーフというのは他社にはないもので、積極的にタフトを選ぶ理由となってもおかしくない装備といえます。このストロングポイントによってタフトのセールスが伸びれば、他社も追随することは間違いありません。果たして、軽自動車にガラスサンルーフのブームが来るのか、タフトの売上に要注目といえそうです。

 以上、5モデルの特徴的な装備や機能に絞って着目してみました。自動車業界は100年に一度の大変革期といわれています。おのずとユーザーの選択理由にも変化が生まれることでしょう。自分の中に確立している評価基準を曲げる必要もありませんが、あたらしい価値観を柔軟に受け止めることも、これからのクルマを楽しむ上では必要かもしれません。