日没何分前が妥当? 雨の日は点灯すべき? 手動ヘッドライトの正しい使い方とは
オートライトを義務化したヨーロッパで早めの点灯の効果が証明
いよいよ来年、2020年4月以降の新型車からオートライトが義務化になる。とはいえ、義務化されるのは新型車だけで(継続生産車については2021年10月から)当面の間、オートライトのクルマと手動ヘッドライトのクルマが混走になる。そうした中で手動ヘッドライトのクルマは、どのタイミングでライトを点灯すればいいのか考えてみよう。
そもそもヘッドライトには2つの役割があって、ひとつは暗くなったときに前方を照らして、安全な視界を得るため。もうひとつは、点灯することで自車の存在を他のクルマや歩行者にアピールして認識してもらうため(被視認性の向上)だ。
オートライトの義務化の背景には、後者の被視認性の向上が交通事故を減らすのに有効で、日本よりも早く2011年からオートライトを義務化したヨーロッパで、その効果が証明されていることが大きい。実際、日本国内でも警察庁の調査で薄暮時間帯(日没時刻の前後1時間)の死亡事故が多く発生することがわかっている。とくに自動車と歩行者が衝突する事故が最多で、さらに65歳以上の高齢歩行者が死亡する事故が目立っているようだ。
このデータをもとに、警察庁では「運転者の中には、周囲が見えづらくなっても前照灯を点灯せず、前方が見えなくなってはじめて点灯するケースが見られます。しかし、その段階では、他の車や歩行者が自分の車の存在を認識するのが遅れたり、気付かずに行動するなどして、交通事故につながるおそれがあります。そのため、薄暗くなる前から前照灯を意識的に使用する『前照灯の早め点灯』を行い、自分の車の存在を周囲に知らせるようにしましょう」と、ヘッドライトの早めの点灯を呼びかけている。
オートライト車よりも少し早めのライトオンが得策!
こうしたことから、2020年から義務化されるオートライトは「周囲の照度が1000ルクス未満になると2秒以内に点灯し、周囲の照度が7000ルクス以上であれば5秒超300秒以内で消灯する」規定になっている。手動ヘッドライトも、このオートライトの基準に準ずるのが間違いない。
というのも、オートライトの基準の正統性は別として、薄暮時間帯では他車のライトが点灯している中に、無灯火のクルマが紛れ込むとそのクルマの被視認性が極端に落ちて、周囲のクルマのドライバーから見落とされてしまう可能性が非常に大きくなるからだ。ライトを点けて存在感のあるクルマの中で、無灯火で埋没するのが一番危ない……。したがって、手動ヘッドライトのクルマはオートライト車とほぼ同時、いやむしろオートライト車に先駆けて、早めにライトオンするのが得策だ。
そのためには、オートライトが点灯する基準、1000ルクスがどのぐらいの明るさかを知っておく必要がある。1000ルクスは「晴天の日の日没15分ほど前の明るさ」が目安とされている。これが曇天時になると、日没の30分前にはおよそ1000ルクスになってしまうので、より早めのライトオンが必要。JAFでは実験の結果から「信号や他車のブレーキランプなどの点灯が目立ち始める時の明るさ」=1000ルクスという目安を発表している。そういう意味では以前から「おもいやりライト運動」などで推奨されている、日の入り(日没)30分前のライトオンだと余裕があって理想的。
ちなみに、一年で昼が一番短い日は冬至。今年(2019年)の冬至は12月22日で、東京の日の入りは16時31分。したがって東京では16時00分ごろにヘッドライトを点灯するのがベスト。これが札幌だと日の入りは16時03分なので、ライトオンは15時30分頃、大阪だと日の入りは16時52分なので、ライトオンは16時20分頃からでもOK。なお北海道や東北、あるいは日本海側の雪国で、雪が降っているような天気のときには日の入り時間に関係なく、昼間でもライトオンで走った方が安全だ。
また地域に関係なく、雨の日もできればライトオンがおすすめ。雨天の昼光の平均の明るさは1000〜5000ルクスといわれているので、オートライトが点灯する条件に入ってくることは十分あり得る。とくに雨の日に高速道路を走る場合は、水しぶきで視界が悪くなることも考えて、昼でもライトオンで走ったほうが安心できる。
まとめると、ライトオンは後手に回るとリスクが増えるものなので、手動ヘッドライトのクルマのドライバーは、季節や天候に関わらず、オートライトのクルマより、ちょっと早めにライトを点けることを心がけよう。