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2017年の研究により、「アメリカでは男女の賃金格差が縮小しても、依然として男性が家計の担い手であるべきだと考えられている」ことが判明しています。さらに、15年間にわたり6035世帯の夫婦や同居カップルを追跡した調査により、「妻の収入が世帯収入の40%以上になると、夫は心理的な苦痛を感じる」という実態が明らかになりました。

Spousal Relative Income and Male Psychological Distress - Joanna Syrda,

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0146167219883611

Men’s Stress Increases If Wife Earns More Than 40% of Household Income

https://scitechdaily.com/mens-stress-increases-if-wife-earns-more-than-40-of-household-income/

イギリスのバース大学の経済学教授であるジョアンナ・シルダ氏は、アメリカのミシガン大学が実施しているPanel Study of Income Dynamics(PSID)のデータを分析して、2001年〜2015年間にPSIDに参加した男女の夫婦6035世帯における収入と幸福度の関係を調べました。



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その結果、妻がまったく働いておらず、自分が唯一の家計の担い手になっている夫は、不安からストレスを感じていることが分かったとのこと。このストレスは妻が働いてお金を稼ぐにつれて軽減されていきましたが、妻の収入が世帯収入の40%を上回ると、再びストレスが増大していったとのことです。

この結果についてシルダ氏はシルダ氏は「これは『男らしさ』や『夫は一家の大黒柱』という伝統的なジェンダー規範が密接に結び付いていることが原因です。夫が第2の稼ぎ手になったり、妻に経済的に依存したりすると、男性は心理的苦痛を感じてしまっている可能性が高いということを意味しています」と話しています。

シルダ氏は続けて「今回の調査結果は、男性の稼ぎに関する社会的な規範と、夫は妻よりもお金を稼ぐものだという伝統的な価値観が、男性のメンタルヘルスを脅かしていることを示唆しています。また、今日ほど男女の賃金格差が小さくなってもなお、こうした意識が残っているということは、ジェンダー規範がいかに根強いものであるかを示しています」と述べました。



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なお、結婚前から既に妻が働いており、もともと妻の収入が夫の収入を上回っている夫婦の場合は、夫は妻の収入に関連する心理的な苦痛は感じていなかったとのことです。

また、シルダ氏は夫婦がお互いの幸福度を評価する基準にも格差があることを突き止めました。PSIDの調査では、心理的苦痛を測定する際には「悲しい」「緊張している」「落ち着かない」「絶望感」「無力感」「努力が無駄になっている気がする」といった項目に対するアンケートの回答を用いています。この調査で、夫の心理的苦痛が最も低かったのが「妻の収入が世帯収入の40%」の時だったわけですが、妻から見た夫の心理的苦痛に関するアンケートでは、夫の心理的苦痛が最小だと感じられたのは「妻の収入が世帯収入の50%」、つまり夫と妻の収入が並んだ時でした。

シルダ氏は「夫の申告と妻の観察結果とで差が出たという事実は、夫が妻の収入が増えたことに対する心理的な苦痛を表に出していないことが原因かもしれません。これは、ジェンダー規範のもう1つの現れだと言えます」と述べました。