「努力できる/できない」を分けるメカニズムを知れば、対応策が見えてくるといいます(漫画:三田紀房/コルク)

「誰にでも伝わる文章がスラスラ書けるうえに、頭もよくなる作文術」を『「伝える力」と「地頭力」がいっきに高まる 東大作文』にまとめた西岡壱誠氏。西岡氏は、マンガ『ドラゴン桜2』で紹介する勉強法を考案する「東龍門」のリーダーも務めている。

今回は最新刊『ドラゴン桜2 第7巻』から、「努力できる人とできない人の違い」を紹介する。

「努力できる、できない」は根性とは無関係?

みなさんは、努力できるタイプでしょうか? それとも、努力が続かないタイプでしょうか?


7万部のベストセラー『東大作文』に、【東大作文練習ノート】がついた「特別版」発売中(画像をクリックすると、特設サイトにジャンプします)

僕は受験生時代からサボり癖があって、勉強にぜんぜん集中できなかったり、机に座ってもすぐスマホを弄ってしまったりと、典型的に努力が続かないタイプだったなと感じます。

多くの場合、「努力できないこと」は悪いことだと捉えられがちです。1つのことに集中できなかったり、物事を継続できない人というのは何をやらせてもダメな印象がありますし、そういう人は「根性が足りない!」「もっと頑張らなきゃダメだ!」と怒られがちです。

「努力できるかできないかは気持ちの持ちようであり、努力できなければ何にも結果を出せない」「例えば、東大に合格するような人はみんな努力家である」……そんなふうにお考えの方が多いのではないでしょうか?

しかし実は、この「努力できるかどうか」というのは先天的に決まっている可能性があるということが、最新の脳科学の研究で明らかになっているそうなのです。

しかも、努力できないからといって結果が残せないということではなく、東大生の半数は努力できない脳の持ち主で、だからこそその特性を活かして東大に合格していることがわかったのです。

一体どういうことなのか、「ドラゴン桜2」の最新7巻から抜粋してお話ししたいと思います。まずはこの漫画を読んでみてください。





「努力できる」「できない」を分けるメカニズム




努力できないからと言ってダメ人間ではない



いかがでしょうか? 努力できる脳とできない脳が先天的な要素として決まっている……というのは非常に興味深い話ですね。

さて、この実験の話を聞くと、みなさんは「自分は努力できない脳の持ち主かもしれない」と心配になるかもしれません。「努力できないほうだったらどうしよう」と。

しかし実は、これは「努力できるほうがいい」というわけでもないのです。小指で100回ボタンを押すということは、言ってしまえば「無駄な行為」ですよね。そんなことをやる必要がないと考えるのも合理的な判断です。

「努力」という言い方をすると、なんだか高尚なものだと考えてしまいがちですが、「無駄な労力」と言い換えるとぜんぜん響きが違ってきますよね? つまり、努力できない脳だということは、「無駄なことをしない合理的な人」と言い換えることもできるのです。

実際、努力できない脳の持ち主が「結果を出すことができないダメ人間」かと言うと、そうではありません。例えばこの実験を東大生30人程度に協力してもらってやってみたのですが、およそ半分が途中で投げ出す(または最初からやらない)という結果になりました。

つまり、乱暴な言い方をしてしまえば、受験で勉強を積み重ねてきたはずの東大生も、その半分は努力できない脳の持ち主だと考えることができるというわけです。

僕もそういう経験があるのですが、勉強や仕事というのは、努力すれば結果が出るということではないですよね? むしろ適切な努力ができず、時間ばかり無駄にしてしまう人も多いです。

机に座っている時間が長くても成績が上がらない人間というのは腐るほどいますし、考える時間が長くてもいいクオリティーのアウトプットを出せるということもありません。効率的かつ合理的に、最小限の努力で最大の結果を出すというのも1つの仕事や勉強のやり方なのです。

努力量を減らすために、効率的で合理的に努力しようと心がけることも、努力の一種だと考えていいはずです。つまり、努力できるかできないかというのは、「努力の仕方の違い」を示しているのです。

最小限の労力で最大限の効果を得た東大生たち

今回取材した東大生の中には、1日の勉強時間が2時間程度で東大に合格したと語る人もいました。曰く、「自分は2時間以上勉強なんて頑張りたくなかったから、その2時間でどれだけ効率的にやるかを考えた」とのこと。

このように効率的に努力して東大に合格したと語る人は多く、1日1時間の勉強で医学部に合格した人や、自分の好きな部活や趣味を継続しながらも効率的で無駄を排除した勉強で東大に合格した人もいました。

彼ら彼女らの学内での暮らしを追っていても、その姿勢は崩れていません。

例えば学内の試験。「60点を取れば単位が来る」と教授が言っている場合、前日の勉強だけでその60点ギリギリを獲得する学生も非常に多いです。しかも見ていると、その「ギリギリ」を取るのが本当にうまい。

テストの過去問対策をして、何を覚えれば点数になるのかをしっかり理解し、最小限の努力量で単位を取れるように努力するのが非常に得意な学生が多いのです。

もちろん誤解しないでいただきたいのは、そういった学生以外にも、きちんとまじめに1日10時間以上勉強して東大に合格し、東大の授業でもしっかり勉強して単位を難なく取っていく学生だっているということです。努力できる脳を持っていて、多くの努力量で結果を勝ち取る人間もいます。

「努力できる」「できない」人の「頑張り方」の違い

ただ、知っておいていただきたいのは、「努力できる脳の持ち主」と「努力できない脳の持ち主」では明確に勉強法や勉強戦略に違いがあるということです。具体的に言うと、以下のような違いがありました。

【努力できる脳の持ち主】
・時間をできるだけ長くかけるようにする
・勉強や仕事はとりあえずやってみて、効率はその後で考えていく
・スケジュールをしっかり決めて、それに沿って行動する
・勉強や仕事の場所を気分で変えたりせず、同じ場所で努力し続ける

【努力できない脳の持ち主】
・時間をできるだけ短くできるようにする
・勉強や仕事の内容を細かくチェックし、始める前から無駄を省けるようにする
・スケジュールを決めず、気分によって勉強や仕事の内容を変える
・勉強や仕事の場所は気分によって変える
・自習室などの周りが努力している場所に自分を置くことで、モチベーションをあげる

さまざまな違いが見て取れますね。


時間や内容だけでなく、スケジュールの決め方や勉強・仕事の場所も変わってくるわけです。

大切なのは、自分がどちらの脳なのかをしっかり把握することなのではないでしょうか。

自分が努力できる脳の持ち主なのか、努力できない脳の持ち主なのかで努力の仕方を変えてみるのです。どちらにも得意不得意があるわけで、それを把握したうえで努力できる人というのは強いはずです。

もちろん、厳密に分けられるわけではないのかもしれませんが、どちらの要素が強いのかだけでも知っておけば、きっと自分に合った努力ができるようになるはずです。頑張ってみてください!

(漫画:三田紀房/コルク)