IDを持つ会員数は約4800万人。国内最大級の利用者を誇る「Yahoo!JAPAN」が2019年の7月、「Yahoo!スコア」をスタートさせた反響は大きかった。

 これは、ヤフージャパンが提供する「ネットショッピングの履歴」や「メール」などをもとに、ユーザーの消費行動や生活習慣を分析し、各個人の社会的信用度を数値化する、「個人信用スコア」と呼ばれているもの。

 算出されたスコアに応じた特典が、ヤフーや第三者企業などから提供される。これを、ユーザーに向けた十分な告知をせずに発表したため、「個人情報が、勝手に外部に提供される」と、利用者の間で大炎上した。

「炎上したのは当然といえます。メールでの告知すらなく、一方的に個人の信用度が点数化されるのに、そのスコアも開示されないというのですから。さらに、そのスコアを連携している第三者企業に提供するという……」

 こう語るのは、信用スコアに詳しい関東学院大学・折田明子准教授だ。

「しかし、いまはスコアの開示請求ができるようになりました。『LINEスコア』や『J.Score』など他社の同種のサービスが、年収やローン残高など、個人向け融資に特化して信用度を採点しているのに対し、Yahoo!スコアでは、個人の行動を総合的にスコア化します。高得点を得れば、サービス内で見返りを得られることもあり、おもしろいと期待してもいます」

 写写丸も、ヤフーユーザーのひとりだ。ヤフーニュースは1日に何度もチェックするし、ヤフーメールは毎日、送受信する。ただ、気がかりな点がひとつ。某大手動画サイトでのオトナの動画購入を、ヤフーメール経由でやっていること。もし、こんな情報が第三者企業に提供されたら……ヤバい。

 そこで面倒な作業だが、自分のYahoo!スコアの開示を請求してみた。郵送して待つこと9日間。届いたスコアは415点。300点から900点の範囲で採点されるから……ん、ド底辺!? スコアは、以下4項目の点数をもとに算出されるという。

(1)「本人確認」住所、氏名、電話番号などの登録率
(2)「信用行動」ヤフオクの取引実績や、知恵袋での活躍度、宿泊・飲食店等の予約キャンセル率などの行動実績
(3)「消費行動」EコマースやYahoo!ウォレットなどの利用金額
(4)「Yahoo!JAPANサービス利用」トップページや記事の閲覧、検索、メールへのアクセス回数など

 写写丸は、トップページの記事閲覧回数では、900点と高評価。メールへのアクセス数も900点。とはいえ、(3)「消費行動」は最低の300点。(2)「信用行動」は406点。それぞれのサービスをあまり利用していないため、点数は低いようだ。どうやったら点数が上がるのか?

「点数を上げる方法は、非公開です。メールの内容、検索履歴、投稿内容、思想信条などの分析はおこなっていません。あくまで使用頻度や、回数を点数化し、ユーザーの利益になる方向で使うのが大前提です」(ヤフー広報室)

 なんと、オトナの動画ばかりを検索、購入しても、ヤフーの利用回数自体は増えるので、点数が上がるというわけだ!

 Yahoo!スコアがモデルとするのは、中国のアリババ・グループの「芝麻(ゴマ)信用」だ。2015年以降、中国では、「ゴマ信用」が急速に普及。QRコード決済の「アリペイ」を使った買い物履歴だけでなく、SNSでの書き込みや人格、能力も含めて、350点から950点の範囲で個人の信用度が採点される。

「身分、資産、信用、人脈、消費行動の5つの分野で点数がつけられ、600点以上なら、ホテルやレンタカーなどのデポジット(保証金)が免除される半面、点数が低いと、自転車シェアリングサービスを利用できないケースもあり得ます。

 自分の点数は、簡単に確認できるため、ユーザーは自分の点数を上げようと、アリペイでの決済を増やし、分割払いもきちんと払うんです」(前出・折田氏)

Yahoo!スコアは郵送で送られてくる

 現在、我々のYahoo!スコアが提供されるパートナー企業は4社。その使い方を聞いてみた。

 日本最大級のクラウドソーシングサービスを提供するクラウドワークスは「プラスのサービスを提供できるほど高い点数の人が、まだいなかった。あまり機能していない、というのが実態」(広報担当者)と回答。

 同様の理由でほか2社は「まだサービス開始にまで至っていない」、1社は「サービスは開始しているが検証中」と本誌に回答を寄せた。

 だが、将来的には「優良ユーザーには、優先的に仕事をオファーする」(クラウドワークス広報担当者)などの特典を考えているそうだ。

 そしてこれから、「Yahoo!スコア」の仕様は大きく変更される。

「10月1日から、環境設定のページからスコアリングの可否がお選びいただけるようになり、初期設定では勝手にスコアが作成されないようになります。

 さらに今年度内には、自分のスコアと、そのスコアで受けられる特典を確認できるページが公開される予定です。新たなパートナー企業が提供する特典も、同じく年度内に公開される予定です」(ヤフー広報室)

 今後、Yahoo!スコアは、「PayPay」との連携も深める方向という。PayPayでオトナの動画を買うか、うーん悩みどころだ。

【Yahoo!スコア開示方法】

(1)Yahoo!スコアお問い合わせフォームからスコア開示を申し込む

 Yahoo!JAPAN ID、自分のメールアドレスを記入。問い合わせ項目で「Yahoo!スコアサービスについて」を選択し、備考欄に「スコア開示を求める」旨を記入し、送信する。

(2)Yahoo!カスタマーサービスから来るメールでIDを確認し、再度申し込み

 Yahoo!カスタマーサービスからメールが来るので、情報開示を希望するYahoo!JAPAN IDを記入、「お客さまのIDでしょうか」という項目に「はい」と回答し、返信する。

(3)Yahoo!スコア開示請求書に、記入・押印し郵送する

 スコア開示が可能かどうかの返信メールが来る。Yahoo!スコア開示請求書をダウンロードしプリントアウト。申請日、申請者の名前を記入し押印。開示を希望するIDを記入。

 本人確認書類(免許証、パスポートなど)のコピーを同封し、[〒031-8582 Yahoo!JAPAN カスタマーサービス情報開示(Yahoo!スコア)係]に郵送。その際、自分のYahoo!JAPAN IDに住所を登録しておく必要がある。

(4)約9日後、「本人限定受取」にてYahoo!スコアが郵送されてくる

 受け取るためには、送付先の住所と同じ住所が記載された本人確認書類が必要。

(週刊FLASH 2019年10月8日号)