アップルが保証切れiPhone買い換えを勧めるよう小売店に指示?販売戦略を転換のうわさ
アップルの幹部達がiPhoneの売上げを心配したため、小売店の「技術者」に保証が切れたiPhoneの買い換えをユーザーに勧めるように指示しているとの噂が伝えられています。米Bloombergによると、上級セールススタッフは他の従業員がiPhoneの買い換えを提案しているかを確認するよう義務づけられ、店頭にはiPhone XR購入者向けの下取り増額キャンペーンの看板を設置されたとのことです。

ここでいう技術者とは、おそらくジーニアスバーの技術スタッフを指すと思われます。ただし、アップル正規サービスプロバイダの一部は正規販売代理店も兼ねているため、そちらのスタッフも対象とされているかもしれません。

例年と比べて売上げが振るわないiPhone2018年モデル、特にiPhone XRに対するアップルの販売テコ入れについては、これまでも何度か報じられています。

まず2018年12月、Bloombergがアップル社内で他プロジェクトのマーケティング要員をiPhone販売を強化するために配置換えされたと伝えた一方で、実際に米公式サイトのトップページではiPhone XRが旧機種の下取りで安価に購入できるとうたう新バナーを追加。その後、日本サイトでも同様の下取り+買い換えキャンペーンが告知されています。

そして2019年度第1四半期決算説明会では、ティム・クックCEOがiPhoneを中国をはじめその他諸国で、現地の経済事情に見合う価格で提供することを検討すると発言。これは実質的には値下げの検討が語られたことになります。

こうしたアップルの積極的なiPhoneの売り込みや値下げ戦略は、なぜ起こったのか。アップルの小売り責任者アンジェラ・アーレンツ氏が今年4月に辞職することが転換点となった--Bloombergはそう示唆しています。

アーレンツ氏の前職は、英衣料高級ブランド・バーバリーのCEO。2006年に就任してからデジタル戦略を打ち出し、招待制だったファッションショーをライブストリームとして一般に公開。そうして老舗ブランドを身近にした一方でオンライン販売を強化し、バーバリーを立て直したことで知られています。

その実績が買われてクックCEOに引き抜かれたアーレンツ氏は、アップルでも高級ブランド志向を追求しました。アップルストアを同社のハイエンド機器を展示するスタイリッシュなショーケースとしたり、Apple Watchに1万ドル以上の高級版Editionを用意したのも彼女の方針とされています。

Bloombergは上記のような店頭での売り込み方針が、アーレンツ氏が作ろうとした店舗環境では実現しなかったかもしれないと分析しています。先週のファッション誌Vogueでのインタビューでも、アーレンツ氏は「最近の小売りは数の話ばかりになってしまったことが悲劇です」と語っていたとのことです。
クックCEOはアーレンツ氏の辞職についてTwitterで「ほろ苦い」と述べていましたが、高級ブランド志向の追求を続ければiPhoneの買い換えサイクルをいっそう長期化させるおそれもあります。クック氏とアーレンツ氏の間で、音楽性ならぬ販売戦略をめぐる方向性の違いがあったのかもしれません。