各社からさまざまな新商品が登場する現在。でも、その商品って本当にいいモノなんでしょうか? よく考えてみると、ちょっとツッコミどころもありませんか?連載「新商品ポリス」(タイアップ募集中!)では、新R25編集部が企業にお邪魔して、商品やサービスに読者目線(?)で切り込みます。果たして担当者はツッコミを見事跳ね返し、商品の良さをアピールできるのか…。記念すべき第10回にツッコんだのは、こちらです!



ZOZOのカスタムオーダー商品「2Bスーツ」。採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」 で計測した体型データをもとに、一人ひとりの体型に合わせて、1点1点ゼロから作り上げるオーダーメイドのスーツです。同社の前澤社長は、「体型に悩みのある人にも、あなたサイズのスーツをお届けできる」と宣言して話題をさらいました。しかし、実際に商品を注文した人の声を聞くと、「いつまで経っても商品が届かない…」「サイズが合ってない」など、不満も多いよう…。編集長の渡辺も届いたスーツを着てみたところ、「パンツがちょっとダボっとしている」と感じたようです。今回はその不満を、ZOZOの担当者に直接ぶつけてみようと思います!(今回はわざわざ弊社まで来ていただきました)



〈聞き手=渡辺将基(新R25編集長)/文=福田啄也(新R25編集部)〉

ツッコミを受けてくれたのはこの3人


左から、新R25ではすっかりおなじみの田端信太郎さん(株式会社ZOZO コミュニケーションデザイン室 室長)、同社商品開発本部 商品企画部の藤枝拓馬さん、商品開発本部 ビジネス・ドレスパターン部 ディレクターの山本聡さん

ツッコミ1:「フルオーダーなのにピッタリじゃない」という声もありますが?

渡辺:
ネット上で「2Bスーツ」を注文した人から、「サイズが合ってない」という声があがっているみたいですね。

ボクも実際に着用していますが、正直ちょっとパンツが大きいかなと思いました

藤枝さん:
そうですね…

「2Bスーツ」は、「ZOZOSUIT」で計測した体型データをもとに型紙を生成、そしてその型紙をもとに布を裁断し縫い合わせる、という流れで作っております。

正直にお話すると、まだ「ZOZOSUIT」での計測や、型紙を生成するシステムに不具合が生じる場合もあり、一部のお客様にはご迷惑をおかけしております。



渡辺:
ちなみに、特にどの位置で問題が起きやすいんですか?

藤枝さん:
ウエストですね。

たとえば恰幅(かっぷく)のいい方は、標準体型の方に比べてパンツを低い位置ではくことが多いです。

検証を重ねてはいますが、人によってパンツをはくときのウエストの位置はバラバラなため、裾の長さに誤差が生じてしまう場合があるんです。

渡辺:
たしかに、ウエストの位置は好みもあって難しそうですね…

そこはどう改善していくんですか?

山本さん:
機械学習で誤差を少なくしていくことは可能です

そのため、お客様の声やデータをとにかく集めて、プログラムに反映させたいと考えています。

体型別の着用位置のパターンなどをもっと集めなければいけないですね。

田端さん:
だからこれはZOZOで買ってくれた人にぜひお願いしたいんですけど、もし「合わないな」と思ったら、そのままクローゼットにしまわないでほしいんです。

「2Bスーツ」は到着してから1年以内であれば、何度でも無料でお直し可能なので

せっかくお金を払っていただいたので、ぜひジャストサイズの服を体験していただきたいですし、こちらとしても今後の改善のためにご意見をいただきたいんです。


ZOZOの社員として話す田端さんは新鮮ですね

田端さん:
ちなみに、大幅にサイズがズレている場合はお直しではなく、ゼロから作り直すこともあります。

それだけクオリティは担保したいんです。

渡辺:
そこまでするんですね…

ちなみに、今後計測方法が新しくなる可能性はないんですか?

田端さん:
ずっと研究は続けてます。たとえば、「ZOZOSUIT」なしでも計測できるようにするとか。

ただ、これはまだ技術開発が必要ですね。

ツッコミ2:注文してから届くのがだいぶ遅くないですか?

渡辺:
続いてですが、「届くのが遅い」という声もたくさんありました。

ネットを見ると、「4か月待った」「その間に体型が変わってしまう」という声もあがってますね…



藤枝さん:
はい、そこもご指摘いただいている点ですよね。お客様には大変なご迷惑をおかけしました。

配送の遅れは、当初の見込みよりもお客さまの注文が殺到したのが大きな原因です。

我々も想定してはいましたが、それ以上のご注文をいただきました。

田端さん:
Tシャツやデニムは「パターンオーダー」なのであらかじめ大量のサイズパターンを用意しておけるのですが、「カスタムオーダー」の2Bスーツは予測生産ができません

注文が入ってから作りはじめるので、時間がかかるんです。ただ、それも承知のうえだったんですけどね。

渡辺:
なるほど…改善の見立ては立っているのでしょうか?

藤枝さん:
生産ラインの拡大・調整すると同時に、システムを改善して生産効率を向上させました。

2018年10月までにご注文いただいたものは年内にほぼ提供しており、「生産が追いつかない」という問題はかなり解消されています。

今後は、4週間ほどでお客さまのもとに届けられるように、社内一丸となって取り組んでいます



ツッコミ3:フルオーダーで4万円弱。かなり安いけど、質は大丈夫なの?

渡辺:
「2Bスーツ」はフルオーダーのスーツ一式にワイシャツがセットで約4万円

正直かなり安いと思うんですけど、品質はどうなんでしょう?

山本さん:
「2Bスーツ」の表地には、ツイル生地を採用しています。

原毛には繊維が細い高品質な羊毛を使っており、仕上がりの光沢や上品な仕立て映えを考慮しています



田端さん:
品質に関しては、こんなものじゃないですよ?

山本さん、もっとガッツリ説明しちゃってください。

山本さん:
…いいんですか?

ちょっと職人のスイッチ入っちゃいますよ


ここから物静かだった山本さんの声がどんどん大きくなっていきます

山本さん:
よく表地にいいものを使っていても、実際に着てみたら裏地はポリエステルだった、というものがあります。

「2Bスーツ」で使っているのは、キュプラという素材です。

渡辺:
それの何が優れているのでしょうか?

山本さん:
キュプラは吸湿性に優れており、着用時のムレを軽減してくれます。

表地のウールと同じように、呼吸をするような裏地になっているんです。



山本さん:
とにかく重視しているのは、着る人にストレスを与えない、圧倒的な着心地の良さです。

ZOZOの「2Bスーツ」は特別な日だけではなく、ビジネスマンが毎日着ることを想定していますので。

表地のツイル生地は、手触りと柔らかさがウリです。裏地のキュプラも、表地に馴染むように型紙設計をし、動きに対する突っ張りが無いように工夫しました。

渡辺:
たしかにこのスーツ、着心地がめちゃくちゃいいですね。スーツじゃないみたいです。

山本さん:
そうなんです。生地の伸縮性と柔らかい作りがポイントです。


何度もスーツをくしゃくしゃにして柔らかい作りをアピールする山本さん。ヒートアップしてトークが止まりません

山本さん:
あとは外からでは見えないのですが、首のまわりからラペル(下えり)にかけて、「毛芯」というものが入っています。

これがあることで、襟のカールと胸の立体感をキレイに見せることができ、型崩れも防ぎます

毛芯が厚くて硬いスーツは、見栄えはよくても体に馴染みにくいと思うんです。

渡辺:
へええ…(圧倒されている)

山本さん:
ちなみに、中を分解してその毛芯を触ってみると、わかる人には「おっ、いいものを使ってますね」と言われます。



山本さん:
渡辺さん、ちょっと立っていただいてよろしいでしょうか?

渡辺:
えっ、はい。



山本さん:
ちなみに、この肩回りにもこだわりがあって、肩にパッドが入っていますよね。

これカッチリ見えるんですが、触るととてもしなやかで、着るとすごく軽く肩に馴染むんです。

さらに、胸まわりのボリュームもしっかりと出てリッチに見えます。



山本さん:
シンプルなデザインに見えますが、いかなるビジネスシーンでも存在感をだせて、着る人の個性を引き出すことに注力しました

見えない部分含め、「2Bスーツ」はすべてのパーツに魂を込めて作っています

渡辺:
ここまでこだわりを持って作られていた商品だったとは…おみそれしました。

ちなみに、ZOZOの商品はふだん前澤社長も品質をチェックされているんでしょうか?

田端さん:
かなり厳しくチェックしてますね。

前澤は質やディティールにこだわる人ですし、本人も公の場で「2Bスーツ」を着用してますから。



ツッコミ4:そんなにこだわってる商品なのに、なぜそんなに安くできるの?

渡辺:
ちなみにですけど、この「2Bスーツ」のクオリティの商品が通常の紳士服店に置いてあったら、いくらぐらいすると思います?

山本さん:
おそらく、7〜8万円はするかなと思います。



渡辺:
ええ…! 断然惹かれてきました(笑)。

ただ、そうなるとちょっと安すぎませんか? なぜこんなに低価格で提供できるのでしょう?

藤枝さん:
そもそもの大きな要因として、ZOZOは店舗を構えていません。これによって生産に注力できるんです。

渡辺:
なるほど、それは大きいですよね。

田端さん:
あとは正直に言っちゃいますけど、今は原価率高めでがんばっています

とにかく質が高くて、価格が安い。正月の『芸能人格付けチェック!』みたいに、ファッションバイヤーに目隠しをして触ってもらいたいですよ。

絶対に高値を付けると思います。



ツッコミ5:正直、モデルがそんなにカッコよくない気が…

渡辺:
最後にこれだけ聞かせてください。

言葉を選ばずに言うと、モデルの方々がそんなにカッコよくないと思ってしまったんですが…



藤枝さん:
ZOZOのプライベートブランドの商品は「老若男女、国籍を超えて、誰でも着られるような服」を提供していきたいと思っています。

ですので、起用するモデルに関しても年齢体型をバラバラにし、もし自分がそのモデルのなかに入っていても違和感がないような方を採用しました。

自分だったらこの人の体型に近いな」という人をイメージしていただきたいなと思ってます。

田端さん:
ZOZOは、カッコいいモデルがいて「こういうふうになれ」という発信をするんじゃないんです。

あくまであなたの身体に合った服を作りますよ、というスタンスなんです。

藤枝さん:
ZOZOは、お客さま一人ひとりがカッコよく見える服を提供しつづけたいんです

たとえばお父さんがZOZOの商品を着て家族から「カッコいいね」って言われたり、若いビジネスマンが会社で「2Bスーツ」を着たら「オシャレになったじゃん」って一目置かれるようになったりしてくれたらうれしいですよね。



渡辺:
たしかにZOZOのプライベートブランドって、シンプルなものが多くてごまかしがきかないのに、オシャレに見えますよね。

田端さん:
ZOZOが目指しているのは、食べ物にたとえると5つ星のフルコースではなく、“ごはん”なんですよ。

渡辺:
オシャレのベースになるような商品ってことですか?

田端さん:
そう。以前、前澤が「ごくおいしい炊きたてのごはんとみそ汁って、作るのが難しいよね」って言ってて。

誰でもオシャレになれる究極のスタンダートを届けるのが、ZOZOの哲学なんです。



「人が服に合わせる時代から、服が人に合わせる時代にしたい」「2Bスーツ」の発表会で、前澤社長はこう話していました。これまであまり表に出ることのなかった、ZOZOの作り手の話。はじめは物静かで、正直声も聞き取りづらかった(スイマセン…)山本さんが、品質の話になると人が変わったように熱く語る姿を見て、ZOZOを見る目が変わりました。生産体制も改善され、ZOZOの「2Bスーツ」は日々バージョンアップしているとのこと。繰り返しになりますが、1年間は何度でもお直し可能ですので、この記事で少しでも心が動いたアナタは、ぜひ自分だけのオリジナルスーツを作ってみてください!…ちなみに前澤社長、次回作のモデルに編集長の渡辺はいかがでしょう…?


本人はやる気です!

〈取材=渡辺将基(@mw19830720)/文・撮影=福田啄也(@fkd1111)〉