日本各地にある神社は8万以上とも言われるところ、その一つ一つに目を凝らして見た経験のある人は少ないだろう。かみのやしろ、と書く「神社」とあり、当然そこには何らかの神さまが祀られているわけだが、その神様の性別の見分け方を聞いたことはあるだろうか。

というのも、先日伊勢神宮に行っており、その際にたまたま神社にお祀りされている神さまの性別について話を聞く機会があったのだ。

神様に性別があることは知っていたものの、恥ずかしながら神社と寺の区別も曖昧で、神社の社殿に性別の秘密があるとは思わなかったのが正直なところだ。では、どこで見分けるのか――注目するべきは、「屋根」だ。

注目すべきは「千木」のカタチと「鰹木」の数だが...

聞いた話を裏付けるべく、ネット上の情報を探してみた。神社本庁公式サイトの「社殿について」を見ると、神社の建物(社殿)のつくりには、大きく高床式の穀物蔵から発達した「神明造」と、古代の住居から発達した「大社造」の2つがある。前者は三重県の伊勢神宮が代表的な例で、後者は島根県の出雲大社が代表的だ。

このいずれの造りであっても、屋根を見ると木が何本か上についている。下の画像は伊勢神宮の内宮(ないくう)の画像だが、赤い部分「千木」(ちぎ)と青い部分の「鰹木」(かつおぎ)が、神社に祀られている神様の性別を見分けるポイントだ。なお、「鰹木」の名はかつお節に形が似ていることから命名されたのだという。


赤い部分が「千木」、青い部分が「鰹木」(wikimedia commonsより・N yotarouさん撮影、囲みは編集部)

出雲大社紫野教会の公式サイトには、「千木と鰹木について」のページがあった。それを見ると、青の部分の「鰹木」について、これは本数が奇数のものと偶数のものとがあると書かれている。奇数が「陽数」であり男神、偶数が「陰数」であり女神を指す。

また、「千木」の形には、上の写真のように水平に切ったもの(内削・うちそぎ)と、垂直に切ったもの(外削・そとそぎ)とがある。内削のものは女神、外削のものは男神を指している、とされる。

写真は伊勢神宮の外宮にある別宮・多賀宮。千木が外削、鰹木が5本で奇数となっている(flickrより・ume-yさん撮影)

栃木県栃木市の初代市章を見ると、千木が内削になっている。もしかしたら女神なのか......などと、知っているだけで想像が広がるのは面白い。一部にはこれを俗説とする見方もあり、山梨県立図書館によると、現在は多数の神社の千木が「外削」であることがほとんどで、鰹木についての決まりも無くなってしまっているという。


初代の栃木県栃木市市章。千木が内削になっているから、女神のイメージなのか......?(wikimedia commonsより)

ただ、ちょっとした教養として、知っておいても損はないかも......?