ナスDの番組で『あいのり』? 堂々と「他局をパクってますよ感」満載な理由
テレ朝で放送中の『陸海空 地球征服するなんて』で、10月28日放送回からスタートした新企画「ラブアース」。
芸人、読モ、女優などの男女6人が路線バスを乗り継ぎながら、ホーチミンからハノイまで、ベトナムを縦断する12日間の旅。ルールとして設けられているのは、「ラブミッション」という、毎晩、男性が気になる女性をハグし、告白しなければならないというもの。果たして6人の恋の行方は? という企画だ。
バスでの旅で繰り広げられる恋愛模様って、あれ、それってフジテレビの『あいのり』? と連想した視聴者も少なくなかったのではないだろうか。
そう思いながら見ていると、BGMに流れてきたのが『あいのり』の主題歌を歌っていた、Every Little Thingの曲。これに対して番組MC役をつとめるバイきんぐ小峠英二が言った。
「『あいのり』だよ、これ」
そしてコメンテーター役のカズレーザーがこれに対して、
「しーっ」
と制する。
これでわかった。そうか、確信犯なのだと。
「もともとなんでもありの番組ではありますからね。どうせやるならパロディではなく、明らかに『パクッてますよ』という空気で、やってますよ感を出したほうがいい。ハンパだったら逆に『パクり?』と叩かれたり疑われたりすると思います」
と、あるテレビ局関係者は言う。
同番組では、インスタグラムの「いいね!」数が旅の生活費となる、バイきんぐ西村瑞樹の「激安!いいね!アース」が現在、同番組の人気企画の一つとなっている。それについて、ある雑誌記者は、
「これも、関西地方を中心に放送されていた『ロケみつ』(毎日放送)の人気コーナーだった、ブログのコメント数に応じて旅行資金が調達される『ブログ旅』そっくりのフォーマット。大ざっぱな企画で海外に放り出して、出たとこ勝負のロケをするスタイルは、かつての『電波少年』(日本テレビ系)的でもある。いろんな過去のロケVTR番組のオマージュのような番組でもありますね」
と言っている。
時間帯によって視聴者層は違う
前出のテレビ局関係者は、
「『あいのり』で見せたいのは、あくまでも恋愛ですが、『地球征服』では恋愛の行方よりも、その人間性を見るほうに注目が置かれています」
と、パッと見は似ているが、見せるものは実は違っていると指摘する。確かに西村の「いいね!アース」も、様々な場面で繰り出される西村の姑息な行動や言動の「クズっぷり」が一番の見どころだったりもする。前出のテレビ関係者は言う。
「『ラブアース』でも、毎回ハグすることで“人間性”を見せたいのだと思います」
初回放送では、自分の主張を押し付けたりした挙句泣き出したりする、自称「旅人」マサキの行動と言動に注目が集まった。
この放送回の2日前の10月26日、本家『あいのり』が、『あいのり:Asian Journey』としてNetflixでの放送を開始したばかり。ある意味、本家よりも話題になっているかもしれないところも、確信犯のなせるワザだろうか。
ところで『地球征服』は、10月14日より深夜帯から日曜21時58分のプライム帯に移動しての放送となっている。
様々な企画の中でも、アマゾンの部族と接触する企画「部族アース」で、友寄隆英ディレクターが、部族が使用するタトゥー用の染料を顔に塗ったところ、顔がナスのような黒紫色になりそのまま落ちなくなってしまった。
それ以来、通称「ナスD」と呼ばれるようになったあたりから一気に番組の人気もアップ、深夜でのレギュラー放送がスタートしてわずか半年での放送枠昇格となったわけだが、このスピード昇格について、前出の記者は言う。
「テレ朝は、近年では『ナニコレ珍百景』や『お試しかっ!』、『お坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺』など、深夜で人気が出た番組をゴールデンに昇格させてきた実績はあります。
とはいえ、ゴールデンと深夜は視聴者層も違います。深夜だから面白がってもらえたノリが、ゴールデンでは通用しなかった番組がいくつもありました。『地球征服』は『ラブアース』以外、深夜の企画をそのまま放送してるので、基本的な方向性は変えていないけど、どう転がっていくが気になりますね」
そこはテレ朝のバラエティの作り方に特徴があると、前出のテレビ局関係者は言う。
「どんな番組も、最初からゴールデンで放送できるような企画や演出を求められます。日テレやTBSは、そういったお試し企画の特番を週末の午後に放送されることが多いのですが、テレ朝はそれを深夜でやるわけです」
そのため、ゴールデンだからと大幅に内容を変更せず、深夜のフォーマットとあまり変わらないままでの放送が可能となるわけだ。
「ただ、今は成否のジャッジは厳しくなっています。例えば視聴率が5%を切ったらすぐに不合格とされたりする。じっくり様子を見るということはほとんどないですから、人気番組といっても飽きさせないように、新しいものを次々探していく必要はあると思います」(前出・テレビ局関係者)
ナスDに匹敵する「神展開」がこの先起こることを、視聴者も期待しているはずだ。
<取材・文/渋谷恭太郎>