世界中でテロやトラブルが頻発している中、海外出張者と駐在員のリスク管理を今まで以上に徹底していく必要がある。危機管理のプロであるオオコシセキュリティコンサルタンツの廣瀬シニアコンサルタントに、15人の犠牲者を出したバルセロナ・車両突入テロ事件の概要と共に考察と対策について寄稿してもらった。

 スペイン・バルセロナで車両突入テロが発生し、15人が犠牲になった。

 8月17日にバルセロナで発生した車両突入テロで、逃走を続けていた実行犯が目撃情報によりバルセロナの西方約40キロ付近で警察に発見され射殺された。偽の自爆ベルトを着用していたため、射殺後の身元確認になったとされる。同容疑者が盗んだ車両の所有者が、乗り捨てられた車両内で刺殺されているのが発見され、同テロ事件での死亡者は15人となった。

 また、前日にバルセロナ南郊アルカナーのアジトで発生した爆発事件で見つかった遺体のうち1人は、スペイン北部の町リポールで今回の事件に関わった若者らに過激化思想を吹き込んだとされる40代の宗教指導者であることが確認された。

 スペイン及びベルギー当局によれば、同指導者は服役中、2004年にスペインで発生したマドリード列車テロ事件の容疑者と知り合ったとされ、また2016年にはベルギーに滞在し、パリとベルギーでの連続多発テロに関わった容疑者らのアジトの近くで求職していたとされる。

 バルセロナ及びカンブリスでの一連の車両突入テロに関わった犯行グループは合計12人とみられ、そのうち8人が射殺および爆死、4人が逮捕されている 実行犯が逮捕されたことはスペイン国民、治安当局、観光客等にとって朗報である。ましてや、逃走途中に、一般車両の運転手を殺害し、車を強奪した凶悪犯人である。ここまで逃走に執着したテロリストも珍しい。

 スペイン当局は欧州各国と連携を図り国境越えの逃走阻止に全力を上げていたところ、犯行地のバルセロナ西方約40キロ付近で発見され射殺された。自爆用のベストを巻いていたとされるが、これはバルセロナで発生したテロ事件の前日にアジトで爆弾製造中に誤爆したため、爆薬が調達されなかったことが考えられる。

 バルセロナから遠くない地域で発見されたことは、実行犯人を逃走させる支援組織がなかったとも言える。また、今回は手配に似た男を目撃した一般人の通報により実行犯人を発見することができた。テロ対策には一般人の協力が欠かせない。

 テロの全容解明はこれからであるが、12名からなると言われているこのグループはほぼ壊滅状態になったと思われる。しかし、このグループに指示或いは連絡していたであろう「イスラム国(IS)」の関係者が存在し、今後、新たなテロ計画が進められる可能性がある。欧州各国におけるテロの脅威は続いている。

オオコシセキュリティコンサルタンツ 廣瀬幸次 シニア・コンサルタント