NPB最多安打記録保持者なのに首位打者なし 西武秋山は“珍現象”解消できるか
シーズン195安打以上は延べ10人、首位打者経験なしは秋山だけ
西武ライオンズの秋山翔吾は7月6日の日本ハム戦で4打数3安打し、打率を.322まで上げ、ソフトバンクの内川聖一を抜いて打率1位に躍り出た。これで2試合連続の猛打賞だ。
今季の秋山はすでにキャリアハイの15本塁打を記録。長打率も.543(キャリア平均では.428)と急激に増加しているが、安打数(93)も西武の同僚・浅村栄斗に1本差をつけてリーグ1位になっている。安打製造機の機能は維持したまま長打を増やしているのだ。
打者の総合指標であるOPS(出塁率+長打率)はソフトバンク柳田悠岐の1.052に次ぐ.964。盗塁もリーグ5位タイの9。もともと外野守備範囲の広さにも定評があり、走攻守すべてにトップクラスの成績を残す5ツールプレイヤーになろうとしている。
秋山は2015年には阪神マートンが2010年に記録した214安打を抜くNPB史上最多の216安打をマークしている。しかし全く意外なことに首位打者をとったことがない。
歴代シーズン安打記録10傑は…
シーズン195安打以上した選手はNPB史上延べ10人(青木宣親が2回記録)いるが、首位打者を1度もとっていないのは、1位の秋山だけだ。
2015年・秋山翔吾(西)216安打・打率最高2位
2010年・マートン(神)214安打・首位打者1回
1994年・イチロー(オ)210安打・首位打者7回
2010年・青木宣親(ヤ)209安打・首位打者3回
2010年・西岡剛(ロ)206安打・首位打者1回
2007年・ラミレス(ヤ)204安打・首位打者1回
2005年・青木宣親(ヤ)202安打・首位打者3回
2013年・長谷川勇也(ソ)198安打・首位打者1回
2001年・小笠原道大(日)195安打・首位打者2回
2015年・川端慎吾(ヤ)195安打・首位打者1回
2015年の秋山はこの年トリプルスリーを達成したソフトバンクの柳田悠岐と激しい打率争いを繰り広げ、.359で2位に終わった(首位打者の柳田は.363)。これは2位の打率としては1986年、巨人のW.クロマティの.363に次ぐ高打率(この年の首位打者はR.バースの.389=NPB記録)。通常の年であれば首位打者を取ってもおかしくない高打率だった。
今季のパ・リーグは打率争いのレベルが低い。今季、猛打賞11回、マルチ安打以上31回と固め打ちが多い秋山は一気に打率を上げて2位以下を引き離す可能性がある。ライバルは首位打者2回の内川聖一、今季絶好調の柳田悠岐のソフトバンク勢だろう。ともに経験豊富な上に、同一チームなのでプレッシャーを分散することもできる。
チームも4年ぶりのポストシーズン進出へ向けて地盤を固めつつある。秋山の活躍は、チームの勝利にとっても重要なファクターとなる。今年29歳を迎えた外野手は首位打者をとることができるだろうか。(広尾晃 / Koh Hiroo)