久々に公式戦復帰を果たした昨年12月8日のヨーロッパリーグ、レッドブル・ザルツブルク戦(写真/83分から交代出場)からも、すでに3か月以上が経っている。厳しい状況にあることに変わりはないが、それでも着実に完全復帰に向けて前進はしているようだ。 (C) Getty Images

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 3月23日(現地時間)、長期離脱からの本格復帰を目指すシャルケの内田篤人が、2部ハノーファーとの練習試合で、右SBとして先発フル出場を果たした。
 
 公式戦でないとはいえ、内田が90分間プレーするのは2015年2月のチャンピオンズ・リーグ決勝トーナメント1回戦の第1レグ、レアル・マドリー戦以来、約2年ぶりのことである。
 
 ただ、内田自身は「久しぶり。久しぶりというか、いつぶりかも覚えてない。まぁ、試合をやれば、疲れますからね、怪我してなくても。怪我明けとか、関係なく」と、独特の言い回しで振り返っている。
 
 慈善試合と銘打たれた試合ではあるが、中身はれっきとした練習試合だ。多くの選手が代表戦でチームを離れているシャルケが若手主体なのに対し、対戦相手のハノーファーは2部で昇格争いを繰り広げており、メンバーもほとんどが主力選手だった。
 
 結果は3-1でハノーファーの勝利。内容的にもハノーファーが優位に進めた試合だった。
 
 内田は、シャルケの右MFがサイドに張り出していたことでスペースがなかったこともあるが、それを差し引いても前半は攻め上がる回数が少なかった。
 
「やっぱりメンバーも新しいし、18歳の選手とかも連れてきていますから。どこで(ボールを)取られるか分からないし、ボールを取られたら追っかけられないんで」ということで、「下がり切れるギリギリの位置」を取らざるを得なかった。
 
 後半立ち上がりには、相手DF裏へのスルーパスに飛び出してクロスを上げたが、ファーサイドに上がったクロスには誰も反応できなかった。
 
「ちょっとボールが長くて滑っていたんで、難しいかなと思ったんですけど。まぁ、ああいうボールが(普段は)もうちょっと出てくるんだけど、今日はしょうがない。1本(出てきた)だけでも全然、ありがたかったけどね」
 
 いよいよ本格的に復帰か? と気持ちもはやるが、そう簡単ではない。
 
「もうちょっと、時間はかかる感じですけどね。監督とか、トレーナとかの感じでは。久しぶりに90分やって、急に『試合に出せ!』というほど甘くはないし。徐々に徐々に」
 
 医療スタッフについても「日本より全然、ゆっくりっすよ。日本人は『じゃあ、もう復帰か?』みたいになるけど、全然。離脱期間も長かったし、怪我に対しては、日本ほど急がせない」と説明してくれた。
 
 この試合では、内田とポジションを争うことになるコケも復帰を果たした。右SBを補強するべくこの夏にセビージャから加入するも、前十字靭帯断裂で長期離脱を強いられていたコケだが、この試合では先発するとされていた。
 
 そして蓋を開けてみると、内田が右SB、コケが右MFという縦関係で、ともにフル出場。ゲームキャプテンを務め、ヘディングから1点を奪ったコケだったが、さすがに試合後は疲労の色を見せていた。
 
 ただコケは、離脱期間も半年と内田に比べたら短く、何よりマネジャーのシュスター氏とヴァインツィール監督が望んで獲得した選手だ。
 
「コケのほうが若干、軽い。軽いって言っても前十字(靭帯断裂)なんですけど。でも、(僕ほど)長くはないんで。新しい選手ですからね、先に試されるのは当然だと思いますよ」
 
 こう語る内田は、これから待ち受ける競争が決して簡単ではないことを覚悟している。
 
現地取材・文:山口 裕平