たくさん人が住む場所にはおいしい市場があり、その地域や国の名物がその市場から生まれています。

例えば、日本には世界的にも築地市場やフグで有名な山口の唐戸市場があり、世界に目をやれば、イギリス・ロンドンにはロンドン最古のフードマーケット「バラマーケット(Borough Market)」や、カナダ・トロントにある200年以上の歴史を持つ市場「セントローレンス市場(St.Lawrence Market)」、ポルトガルのポルト市民の台所「ボリャオン市場」など、世界的に有名な都市には、その都市の胃袋を支える市場が存在します。

今回ご紹介するのは超高層ビル、ペトロナスツインタワーや、繁華街ブキッ・ビンタンなど、「近代的な都会」のイメージが強いマレーシアの首都・クアラルンプールの市場。

近代的な都市のイメージが強いクアラルンプールですが、こうした近代都市としての表情は、クアラルンプールの一部でしかありません。

華やかな大都市のイメージとは裏腹に、クアラルンプールには、まだまだ生活臭漂うディープなスポットが残っています。

飾らない日常のクアラルンプールの表情が見たいなら、チョウキットへ行ってみましょう。

「チョウキットは治安が良くない」という情報もありますが、日中訪れるぶんにはスリやひったくりに注意すれば十分です。筆者は女性一人で訪れましたが、怖いと感じるようなことはまったくありませんでした。

チョウキットはパワーあふれる庶民の街。地元の人々が「マーケット」と呼んでいるチョウキットマーケットが有名です。

チョウキットへのアクセスは、モノレールのチョウキット駅が便利。LRTのPWTC駅から歩くこともできます。庶民的な雰囲気の色濃いチョウキットエリアも、モノレールやLRTの駅周辺は再開発が進み、近代的に変貌を遂げてきました。

ところが、駅から少し離れると、しだいに庶民の日常風景が見えてきます。

「アジアの市場」といった雰囲気のチョウキット・マーケットは、クアラルンプールの庶民の生活を垣間見る絶好の場。おもに野菜や果物を扱うセクションと、魚や肉を扱うセクションに分かれています。

チョウキット駅から大通りを南に歩くと現れるチョウキット・マーケット。奥に見えるペトロナスタワーとのコントラストが強烈です。

果物のコーナーには、南国らしく、色とりどりのフルーツがどっさり。

ザクロにドラゴンフルーツ、ロンガン……日本では味わう機会の少ないフルーツが山積みにして売られています。

日本でおなじみのフルーツでも、そのサイズに驚かされることが。日本では見たことのないような巨大なスイカに、超ビッグサイズのバナナ。

品定めをするお客さんの表情は真剣そのもの。「いいモノを安く手に入れよう」という意気込みが感じられます。どの国も、庶民の考えることは同じですね。

両サイドにフルーツがぎっしり並ぶ通路を歩けば、あちこちのお店から呼びこみの声がかかります。チョウキットマーケットにはあまり外国人が訪れないので、マーケットをふらついていると現地人に見られることもしばしば。

話しかけても言葉が通じず外国人だとわかると、珍しさからか、それまで以上にフレンドリーに接してくれることも少なくありません。試食させてくれるお店も多いので、お店の人とのコミュニケーションを楽しんでみては。

観光地にあるスーパーマーケットに比べると、破格の安さで購入できるので、気になったフルーツを買って、ホテルなどに持ち帰って食べてもいいですね。

奥に進んでいくと、魚や肉を売るセクションに入ります。

台の上で暴れまわる魚。

一羽まるごと売られている鶏肉。

興味本位で見ていると、「買っていかないか」とすすめられますが・・・さすがに鶏まるごとは買えません。

さらに、大きな肉の塊、動物の皮、足など、普段日本では見られない、ちょっとショッキングな光景も。スーパーマーケットの精肉売場では感じることのない、血と肉の匂いが混じった動物臭が充満しています。

筆者が訪れたときには目にすることはありませんでしたが、牛の頭がディスプレイされていることもしばしばあるそうです。肉のコーナーは筆者には少々刺激が強く、歩くだけでドキドキしてしまいました。

人によっては「気持ち悪い」「残酷」という感想を抱くかもしれませんが、動物の命をいただくというのは、本来そういうこと。

クアラルンプールの庶民の日常が垣間見えるチョウキットマーケットは、食べることの原点を思い出させてくれる場所でもあるような気がします。

華やかな都会としてのクアラルンプールとはまるで違う表情が見られるチョウキット。ありきたりの観光地ではないぶん、忘れられない体験として記憶に残ることでしょう。

Post: GoTrip! http://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア

名前 チョウキットマーケット(Chow Kit Market)
場所 Jalan Tuanku Abdul Rahman, Chow Kit, 50100 Kuala Lumpur, Wilayah Persekutuan Kuala Lumpur, Malaysia
アクセス クアラルンプールの無料シティバス(レッドライン)で、Chow Kit下車。モノレールの下をくぐって、右手に見える陸橋を渡ったところが、市場の入口となります