このような競争の中で採用を成功されるための施策として、外資系人材紹介会社ロバート・ウォルターズ・ジャパンのデイビッド・スワン社長は、「競争力のある給与水準に加え、キャリアアップなど金銭以外のメリットを提示する必要がある」と助言する。 慢性的な人材不足によって、シニア、女性などの多様な労働力の活用が進みそうだ。

 管理部門や士業に特化した人材紹介会社MS-Japanの井川優介取締役は、「人材確保が困難になっている環境下では、企業のダイバーシティへの取り組みと働きやすい職場作りをどれだけ本気で取り組めるかにかかってくる。ダイバーシティという意味では、女性やシニア活用などが現実的」と、多様な人材を受け入れていくための企業の取り組みを採用成功のためのポイントに挙げる。 政府の働き方改革の一連の動きも後押しとなり、これまで働く場を見つけられなかった柔軟な働き方を求める人々が多様な雇用形態で働ける機会が増えつつあり、専門性の高い人材を積極的に採用するケースも目立ってきている。

 特に、すでに深刻な人材不足に陥っている流通・サービス業や製造業の企業では、一足早くパート・アルバイトを契約社員や地域限定社員として社員化しはじめている。また、生命保険会社などでは営業職の確保のために社員の定年を引き上げる動きも出てきている。多様な人材の活躍を推進する取り組みとして、短時間労働、在宅ワーク、モバイルワークなどの導入を検討する企業も多く、生産性の高い優秀な人材の定着施策ともなっている。 多様な雇用形態の労働力を活用するためには、適切な評価システムと明確なフィードバックが不可欠だ。これまでの新卒からの育成システムを前提とした能力主義から、成果を基準にした評価システムへの変革を急ぐ必要がある。 ビジネスや人材の東京一極集中が進む中、アクシアムの渡邊光章社長は、「地方経済をいかに活性化していくかは国の重要課題だが、同時に企業経営において各企業が取り組む喫緊の課題」と指摘し、地方企業の採用支援も人材会社には大いに期待されている。

 また、中小企業の採用難は深刻な状況で、日総ブレインの清水智華子社長は、「今まで以上の条件緩和や多様な人材の受け入れなどが必要。人材育成に重点を置いたポテンシャル採用の推進や人材確保のための柔軟な受け入れ体制づくりが課題」と見る。リスの木村亮郎社長は、「政府は雇用の要となる人材会社を含めた中小・零細企業に対して、実務に並行した各種助成金支援」を訴える。 17年も引き続き採用が難しい状況が続くことへの対応策として、インテリジェンスの勝野大執行役員は、「ダイレクト・ソーシングをはじめとした多様な採用チャネルの活用など、従来の人材採用戦略に留まらない発想」を挙げる。

 ダイレクト・リクルーティングについて、キャリアエピソードの備海宏則社長は、「ダイレクト・リクルーティングの活用と成果が問われてくる。思い切ってインハウスに専任リクルーターを抱え本格的に成果を出し始めた企業が少しずつ出てきた」と紹介し、一部の企業では取り組みが進みつつあるようだ。 ただし、ダイレクト・リクルーティングはコストがかからずに人材を採用できると考えるのは間違っているだろう。確かに人材会社に支払うコストは削減できるが、採用担当者が人材会社と同じ働きをしなければならないため採用担当者を増員する必要が生じてくる。

 ダイレクト・リクルーティングを実現している大手外資系企業では、採用担当は7〜8人以上の体制をとっている。これと同等の体制をつくり出せるかどうか、採用責任者にとってはチャレンジとなる。

 同時に人材会社との関係の見直しにも着手したい。リクルーティングのパートナーとして担当コンサルタントと密接な関係を築くために、求人情報だけでなく事業内容や組織風土まで理解を深めてもらう必要がある。