ハンデを「メリット」に変えた2016年の四国のチームとは?寺下記者が2016年を振り返る!

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 まもなくフィナーレを迎えようとしている2016年。今年も四国の高校野球には様々な出来事があった。春の「悔しさ」、夏の「躍進」、秋の「混戦」……。ただ、常に勝利者たりえたのはハンデをメリットに変えた者たちである。今回は2016年の四国高校野球を振り返りつつ、その要因と2017年への展望を語っていきたい。

センバツ準V高松商を支えた「アイディアの集積」

高松商ナイン

 香川県の各所に踊った「高商(たかしょう)」の文字。四国高校野球の上半期は県立高松商(香川)一色に染まったと言っても過言ではない。大阪桐蔭(大阪)、敦賀気比(福井)を下し勝ち取った昨年11月の明治神宮大会初優勝に続き、20年ぶり出場のセンバツでもいなべ総合(三重)、創志学園(岡山)、海星(三重)、秀岳館(熊本)といった実力校を撃破。智辯学園(奈良)には延長11回で力尽きたが、一度火が付くと止まらない打線は大会に大きなインパクトを与えた。

 ただ、高松商を訪れた人たちは誰もが野球部が置かれている環境に驚く。グラウンドは基本、サッカー部と半々。週2回程度はサッカー部にほぼ全面を明け渡す。専用グラウンドを常時使えるいわゆる「強豪校」と比較すれば、明らかにハンデを背負っている。

 が、長尾 健司監督はじめ指導者と選手たちはそれを「アイディアの集積」で補った。練習では「ViPR(バイパー)トレーニング」などの体幹トレーニングも含めながら、守備・走塁・ティー打撃など、いわばサーキット的にメニューを回すことでより効率的な練習法を確立。さらに「野球ノート」を活用し、コミュニケケーションを図った。多数のけが人が癒えない中、夏の香川大会も決勝戦まで駒を進めた要因も、彼らが「アイディアの集積」を続けたからに他ならない。

2016年夏甲子園、鳴門8強・明徳義塾4強につなげた「ゲームプランニング」

中野 恭聖 (明徳義塾)

 夏の甲子園。四国地区の主役は徳島県・高知県代表へ移ろう。鳴門はセンバツ王者・智辯学園を2回戦で破り、3回戦では強打の盛岡大附との打ち合いを制し3年ぶりのベスト8。明徳義塾はその鳴門を準々決勝で破り4年ぶりのベスト4。県立鳴門は左腕・河野 竜生(JFE西日本入社予定)と4番の手束 海斗(ツネイシ入社予定)、明徳義塾では右腕・中野 恭聖(JR四国入社予定)と強肩捕手・古賀 優大(東京ヤクルトスワローズ5位指名)という軸はあったものの、選手層は決して他を凌駕するものではなかった。

 では、彼らはどうやってそのハンデを埋めたのか?「相手を知る」である。傾向を洗い出し、なおかつ自らの強みを発揮できる戦術を練る。鳴門・森脇 稔監督や明徳義塾・馬淵 史郎監督からのトップダウンだけでなく、選手側からの「ボトムアップ」を掛け合わせてチーム力に変える。これもまた「ハンデ」を「メリット」に変える一方法である。

そして秋から2017年へ。「ハンデ」をメリットに変える闘いは続く

 3年生球児たちがそれぞれの道へと踏み出し、2017年へ向けて走り出した秋の戦い。明徳義塾が四国の頂点を極めた一方で、ここでも話題を集めたのは「ハンデ」を「メリット」に変えた学校たちであった。

 高知では県立中村。平日グラウンドが使えるのは週3回のみ。19時半完全下校の校則がある中でも40年ぶりに秋の県大会を制覇。自主練習をもノルマに組み込んだスイング力強化で高知・土佐・明徳義塾の県内私学3強を撃破した。

 愛媛では帝京第五。元ロッテオリオンズ投手・帝京(東京)コーチの小林 昭則監督が考え方をシンプル化。四国大会準優勝で48年ぶりセンバツ出場へ大きく前進している。また4月創部の聖カタリナ学園は、横長グラウンドを活用し夏の愛媛大会ベスト8、さらに11月23日開催の「愛媛県野球フェスティバル」で準公式戦ながら「愛媛県大学選抜」に快勝を収めている。

 このような「ハンデ」を「メリット」に変えたものが、先んじる傾向は今後も引き継がれるはず。そういった切磋琢磨の中に勝利者は生まれることも間違いない。

 はたして2017年は今回紹介した各校がさらに一歩先を走るのか?それとも、新たな勢力が現れるのか?来年10月、この代の高校野球集大成となる「愛顔(えがお)つなぐえひめ国体」が終わった時、四国の高校野球関係者がすべて笑顔になるための闘いは、これからも続いていく。

(文・寺下 友徳)

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