J1セカンドステージ第16節、浦和レッズがジュビロ磐田を1−0で破り、ステージ優勝を飾った。

 もっとも、その称号にさほど大きな意味はない。ステージ優勝はチャンピオンシップに出るための通過点にすぎず、今季に関して言えば、すでに年間勝ち点3位以内を確定させてチャンピオンシップの出場権を手にしている分、なおさらだ。

 ただ、浦和がセカンドステージ優勝という結果を残せたことは大きい。なぜなら、それはミハイロ・ペトロヴィッチ監督がチームを率いるようになってから、宿痾(しゅくあ)のように苛(さいな)まれてきた"失速"という課題を、ようやく克服できたことを示しているからだ。

 2014年シーズン、浦和は終盤に勝ち星を積み重ねられなくなると、ラスト3節は未勝利に終わって、確実視されていた優勝を逃した。翌2015年シーズンも終盤に差しかかった残り5試合で2勝しか挙げられず、年間勝ち点1位の座を広島に譲り渡した。それが今季は、最終節の横浜F・マリノス戦を残した時点でリーグ戦6連勝中、さらにルヴァンカップを含めると公式戦11連勝中と、シーズン終盤を迎えても快進撃を続けているのだ。

 いったいなぜ、今季は近年と異なるパフォーマンスを見せることができているのか。

 その行方を左右したのは、いわゆる「サブ組」と表現される選手たちの存在だ。

 MF高木俊幸は、その代表例のひとりだ。

 今でこそコンスタントにスタメンに名を連ねるようになったが、移籍1年目の昨季は途中出場が多く、今季もファーストステージまではベンチにすら入れない時間が続いた。AFCチャンピオンズリーグを含む今季開幕からの29試合で、プレーしたのはわずか4試合。ヒザを痛めて戦線離脱していた時期もあったが、復帰してからも出場機会には恵まれなかった。

 契機となったのは、大黒柱のFW興梠慎三がリオデジャネイロ五輪でしばらくチームを離れたことだ。その穴を埋める戦力として抜擢されたのが高木で、当初は試合感の欠如から不安定なプレーも見られたが、出場試合を重ねることでパフォーマンスがアップ。今ではペトロヴィッチ監督の信頼をつかみ、継続的にスタメンに名を連ねるようになった。

 DF那須大亮の存在も忘れてはいけない。

 昨季までは不動のレギュラーだったが、今季はDF遠藤航(湘南ベルマーレ→)の加入によって状況が一変。開幕から夏場までは、ほとんど出場機会は得られなかった。しかし那須も、リオ五輪で遠藤がチームを離れたことによって、スタメンを任され、そこから公式戦11試合連続で先発出場。堅実なプレーで全体の守備を統率し、チームに連勝をもたらし、終盤戦の勢いにもつなげた。

 また、MF駒井善成の活躍も大きい。

 今季、京都サンガから移籍してきたドリブラーは、開幕からしばらくは限られた時間しか出場機会を与えられなかった。しかし、最初は面食らったという浦和のインテンシティの高い練習とハイクオリティーのサッカーに慣れていくに従って、徐々にプレー時間を伸ばしていった。そして最近では、右ウイングバックとして欠かせない存在となっている。

 シーズン当初はあまり出番がなくて、疲労の蓄積もなかった彼らが、体力の消耗が激しい夏以降にプレー機会を増やしていったことは、チーム全体のコンディションを高いレベルに保つことにひと役買った。

 特に興梠と遠藤は、過密日程のシーズンを過ごしていたうえ、リオ五輪にも参加したことで、帰国後は当然のようにコンディションを大きく崩していた。ペトロヴィッチ監督はこれまで、コンディションの善し悪しに関係なく、メンバーを固定して戦う傾向が強かったが、今回は攻守の要であるふたりをスタメンから外す選択をした。

 彼らを起用しなくても、その穴を埋められる戦力がいたからだ。ペトロヴィッチ監督自身、「サブ組」だった選手が主力を務めても、レベルの高いサッカーができるという手応えを得ていたに違いない。

 休養を経てリフレッシュした興梠と遠藤は今、再びスタメンに戻って活躍している。もし、帰国直後から強行出場させていたら、現在のパフォーマンスは出せていなかっただろう。

 今や、「主力組」と「サブ組」に大きな力の差はない。それは、日々行なわれているゲーム形式のトレーニングを見れば、よくわかる。プレーのクオリティーは両チームとも高く、「サブ組」が「主力組」よりも好パフォーマンスを見せる日も珍しくない。

 レギュラーのDF森脇良太も、選手層がかつてないほど厚くなっていることを実感している。

「ビブスを着ているチームと着ていないチーム、どっちが試合に出ても戦えるだけのチーム力がある。もし"サブ組"がJリーグに登録して戦えたら、必ず上位争いができると思う。それは大きなことだし、チームの成長かなと思う」

 とりわけ際立っているのは、得点に強く関与する1トップ+2シャドーのポジションで、出場機会を得ている興梠、高木、MF武藤雄樹、FW李忠成、FWズラタンの5選手が、非常に高いレベルで競い合っていること。最近はこの5人の誰かがゴールを決めるという試合が続いており、セカンドステージ優勝を手繰り寄せる最大の原動力となった。

 シーズン前半戦はスタメンを張り、得点もふた桁に乗せている李であっても、現在はベンチスタート。そんな状況を見れば、いかに戦力の底上げがなされているかわかるはずだ。

 選手層が厚いことは、1シーズンを戦っていくうえで非常に大きなことだが、ひとつの試合で結果を出すためにもとても重要なことだ。運動量が落ちる後半、スタメンと実力の変わらないフレッシュなアタッカーを送り出せるのだから、チームが勝つ確率は一層高まる。

 いつでもレギュラー格に取って代われる選手がそろっている浦和。サブ組の奮闘が、例年のような失速を免れ、セカンドステージで勝負強さを発揮できた要因のひとつであることは間違いない。大一番となる、チャンピオンシップへの期待も膨らむばかりだ。       

神谷正明●文 text by Kamiya Masaaki