中国企業の廃業増加!どうなるアジア経済の先行き/エクスペリアンジャパン 株式会社
やはり懸念は中国か?
件数推移の詳細は、図1に示していますが、なんと言っても中国の動向が気になるところです。同国の倒産法は2007年に整備され、清算型による法的倒産の手続きが可能です。ところが、再建型の倒産がないことや倒産申請すること自体にマイナスイメージがあってか、法的倒産の件数はさほど多くはありません。傾向としても2010年を境にやや持ち直した感すらあります。
他方で問題なのは任意整理です。これは、Experian Greater Chinaの定義によるもので、企業監督の機能を持つ工商局への情報開示が複数年にわたって行われず、登記抹消の措置が取られた企業の集計です。端的に言うと夜逃げ、いわゆるドロンです。
驚愕の件数
この任意整理の件数は、法的倒産が減少基調にあるのに対し、大幅な増加基調にあります。2015年ではなんとその数75万件(前年比1.4%増)に及びます。貿易保険会社では、中国企業に対する保険が逆ざや状態にあるとも聞かれ、保険申請が通りにくい状況です。そんな中でこの件数を見ると、相当の不良債権リスクを抱えている状況がお分かりいただけるのではないでしょうか。
台湾・タイ・シンガポールは安定
台湾、タイ、シンガポールの3か国では、倒産件数の推移に大きな変化がありません。ただ、台湾についていうと経済規模は日本よりも小さい中で、絶対数は6万件を超えています。やはり取引に際しては、債権残高と相手先企業の経営状態について定期的に観察していく必要がありそうです。
韓国は苦しい経営環境に……
円安ウォン高による韓国企業の競争力の低下など、韓国経済を取り巻く環境は厳しいものと取り沙汰されてきました。図1に記した任意整理は、不渡り手形を発行した企業の状況で、手形決済そのものの減少もあって倒産の実態を反映しきれていません。一方、法的倒産件数はここ数年継続的な増加傾向にあります。2016年上半期でもこの傾向が続いており、経営環境の厳しさがうかがえます。2017年に大統領選を控え、有効な経済対策が打たれる見込みはあるのか、マクロ的な動向も含め注視していきたいところです。
図1 アジア各国の倒産件数推移
出典
中国: Experian Greater China (旧SINOTRUST)
韓国: SaeHan Credit Information (SaeHan Databank)
台湾: China Credit Information Service (CCIS)
シンガポール: DP Information
タイ: International Research Associates (INRA)