東京オリンピックまであと4年、「ウェアラブル」はプロスポーツ界で地位を確立できるか
リオオリンピックが終わり、ロスに苦しんでいる人もいればさっそく4年後に向けて動き出している人もいる。プロスポーツ界の人々は後者だろう。
皆さんのなかにも使っている人は多くいるだろう、試合の練習やトレーニングに「ウェアラブル」は広く活用されるようになってきた。しかし、ウェアラブルに対するアスリートからの反応は微妙なものであり、彼らはアドバイスや指導という機能面で不満を抱いているという。
Lux Researchのレポートによると、アスリートたちはウェアラブルを利用する利点をわかっているが、そのうえでアドバイス面などの機能拡充を望んでいる。
アドバイスには、練習中のパフォーマンス分析や怪我の予防、アスリートの健康についての助言などが含まれる。世界最大のウェアラブルベンダーであるFitbitは、一週間おこなったトレーニング内容や心拍数、カロリー消費などを利用した限定的なアナリティクスサービスを現在提供している。
「多くのウェアラブルは、さまざまな情報を報告するうえで素晴らしい働きをしているが、健康面やパフォーマンスをさらに向上するにはどうすればいいのかという提案までは行えていない」と、レポートを執筆したLux Researchのノア・ジャースン氏は語る。
そして、「2016年のリオオリンピックでは、ウェアラブルがフィットネスモニターだけでなく、高度なトラッキングをもおこなうことができる点に注目が集まった。しかし、ほかにもチームの戦略や安全上の目的に利用されるスポーツウェアラブルのアプリケーションが誕生したら、より多くの賞賛を集めることができるだろう」と、彼は付け加えた。
ちなみに、MLBでは ZephyrバイオハーネスとMotusの肘当を使うことで、コーチやドクターが細かなパフォーマンス分析などを行っている。コーチは練習中のパフォーマンス不足に気づいたらすぐ改善策を考えることができるし、ドクターは大きな試合がやってくる前に健康上の問題に対処することができる。
ウェアラブル導入に慎重なプロスポーツ
ほかアメリカスポーツ業界においては、ウェアラブルを採用するものの受け入れる速度は緩やかなものである。コーチがベンチングやチームからプレイヤーを除外するための理由として分析を使用することを懸念し、労働組合もウェアラブルの採用を延期している。
Lux Researchは多くのアスリートやコーチに対して、次のウェアラブル3つについて話を聞いた。HTCとUnder ArmourのHealthBox、Xmetricsの水泳用ウェアラブル、Vertのウェアラブルクリップである。
HealthBoxについては、「アスリートのパーソナルトレーナーの代わりにするためには、より高度な指導的要素が必要だ」と答えている。また、Xmetricsは測っているものがわかりづらく、Vertについては、怪我を避けるためのアラートやリコメンデーションの機能を備えるべきだと答えている。
上記のような、ウェアラブルにおけるアドバイス・指導機能の欠如や洞察のレベルの低さの理由の一つとして考えられることは、主にその機能のもとになる情報が規制されているからであろう。FDAは医療の分野に踏み込もうとするウェアラブルに対して厳しい態度をとっており、AppleもFDA にApple Watchの 認可申請を提出した際、あっさり却下されたことからこのことに気づいたという。
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より優れた洞察とアドバイスをアスリートたちに提供するには、米国および外国の規制機関がウェアラブルおよび従来のヘルスケア市場にはなかったものに対し、もっとオープンにならなければならないだろう。2020年の東京オリンピックでは、その活用が進んでいる国と進んでいない国とで大きな差が生まれるかもしれない。
ReadWrite[日本版] 編集部
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