アメリカに学ぶ、IoTがもたらす新たな職と夢
これまでも述べてきたことだが、あらためてIoTの成長は著しく、ネットワーク対応デバイスの新世代の先がけとなる熟練した専門家の需要が高まっている。業種を問わずあらゆる企業が、IoT技術の新しい活用法を模索しており、これら新しい技術を形にできる労力のニーズは高いものだ。
今回は、IoTとそれがもたらす「職」について考えたい。技術力のあるエンジニアにいい仕事を探すチャンスを与えてくれるさまざまな方法が存在する。
ブランド拡大への高い需要
IoT技術力が産み出した需要によって生じるギャップを埋めるため、エンジニアにはさまざまな仕事の機会が与えられるだろう。
Under Armourなどのこれまで技術とは関係のなかった衣料品メーカーは、フィットネスとヘルスソリューション全般を扱うようになるため、ビジネスモデルにIoTを取り入れた。
このビジネス拡張により、Under Armourは新たにコネクテッドビジネス部隊を設立し、ソフトウウェアエンジニアや他技術者を求めている。また、家電もIoT技術の導入で成長が著しい分野となっている。Whirlpoolなどの家電メーカーは一般家庭および企業向けにさまざまな家電製品を作っており、IoTの経験があるマネージャーやエンジニアの募集を多く募っている。
工業・ヘルスケア分野でも
工業もIoTの大きな1分野である。実際に、IoTの多くは工業・医療の分野において利用されている。モニタリングやオートメーションはこれらの分野で特に相性がいい。
病院で患者をモニタリングできることは非常に重要なことだ。ヘルスケアの専門家が患者にとって最適な治療を行うための情報を手に入れるために、正確かつアクセス可能であるモニタリングに依存する部分も多くある。IoT技術によって、イノベータたちが心拍やアクティビティレベル、血中アルコール量などをより正確にモニタリングできるポータブルなデバイスを生み出すことができるようになった。
ヘルスケアの専門家が患者の状態を理解するために十分な情報を提供するだけでなく、医療のプロが簡単に患者を理解するためのソリューションをつくり上げるための道はすでに開かれている。
工業においては、オートメーションが非常に白熱している。これは、製造者たちにとってより少ない労働賃金で単位時間あたりの生産性を挙げることができるだろう。収益も増加するため、会社にとってもありがたい話である。労働力となる人も入れ替わることとなり、システムアーキテクト、データサイエンティストおよびその他の職が、これら複雑な工業システムを構築するために新たに生まれることになる。
次世代のテクノロジーのための新しい仕事
インターネットができて20年ほどになるが、その間Webに特化したスキルの需要は上がる一方であった。実際に、ブラウザを使うインターネットがすっかり成熟したいまでも、そのweb開発者の需要は伸び続けている。労働統計局によると、2014〜2024年の間でweb開発者の求人は、27%増加するとのことである。
また、データサイエンティストは非常に求められている。彼らは、主にIoT技術によって生み出される大量のデータから役立つ知見を見出す存在だ。Indeed.comによると、米国におけるデータサイエンティストの平均年収は、$117,000になるといわれている。
IoTソリューションアーキテクトは、IoTに関わる企業の一般的なビジネス戦略に携わる人たちを指す。彼らはR&Dチームを編成し、プロジェクトの高レベルの意思決定をおこない、企業内のIoT戦略を司る。これもIndeed.comによると、米国におけるIoTソリューションアーキテクトの平均年収は$178,000になるとのことである。
エンジニアレベルの話をすると、ソフトウェアおよびハードウェアのエンジニアともに、需要はますます伸びており、IoTソリューション開発においてそれは顕著である。
多少調べただけでも、IoTに関わるエンジニアの求人で提示される給与は、ここ18ヶ月で大きな跳ね上がりを見せていることがわかった。これは技術のある人の需要の伸びを表すものである。Indeed.comによると、これらの分野に携わる人たちの平均年収は、$102,000である。最近の調査により、開発者の45%はIoT開発が自分たちのビジネス戦略において非常に重要なものになると考えているということもわかった。
ここに挙げた求人の例は多くのうちの極わずかでしかない。IoTの急速な拡大のせいで、分野を問わずほとんどあらゆる製品やシステム開発の機会が生み出されているのだ。
また、ここではほとんど何も述べていないが、企業や政府のネットワークでIoTデバイスが多く見られるようになってきたいま、データセキュリティの専門家の需要も増大している。より多くのデバイスがインターネットにつながるようになる中、これら接続性を活かしたセキュリティアプリケーションもまた増大する。これはセキュリティを手がける企業にとっても大きく伸びるチャンスであり、ネットワークセキュリティの専門家にも収入のいい仕事を見つけることができるチャンスである。
当たり前のことだが、データ分析を語るうえで、大量データの処理で企業の注目を集める人工知能のことを触れないわけにはいかない。人工知能によって企業は、人間が処理するにはあまりに複雑で整理されていないデータストリームを活用することができるようになるのだ。
スタートアップ企業で必要とされるプロフェッショナル
起業家精神に溢れたスキルのあるプロフェッショナルにとって、今ほどIoT開発会社を起こす気にさせられる時はないだろう。
IoTは、コネクテッドデバイスの考え方を大きく変えるものだ。つまり、既存の企業は自分たちのビジネスモデルとIoTをどう面白く組み合わせられるかを積極的に探している。先ほど述べたように、自社製品のIoT版を作るなど、ブランドが製品戦略に技術を持ち込むことはますます一般的なことになってきている。
一連の製品やスキルに恵まれたチームを作り上げる簡単な方法の1つは、企業を買収することであり、IoTスタートアップ企業は買収の対象として現在、非常に白熱している。
スタートアップ企業にとってのもう1つの大きなチャンスは、他社との補完的パートナーシップである。窓割れや水漏れその他を検知する小さなセンサーを作ったNotionというスタートアップ企業は、保険会社のLiberty Mutualからかなり高額な投資を取り付けた。というのも、Liberty Mutualにとって水漏れなどの問題が深刻化し保険の支払額が大きくなる前に、その問題に気づけることは、おおいに意味があることだからである。
新しいセンサーやその他の技術が、より実用的にかつよりインターネットへ繋げることが一般的になれば、イノベーションの機会は確実に噴出する。イノベータたちはIoTにより、「独創的に考え価値を生む」という意味で文字通り「車輪の再発明」をおこなうことになる。
なんと夢のある話だろうか。隆盛するであろうAI技術との兼ね合いという現実を考慮しながらではあるが、悪くない話である。
ReadWrite[日本版] 編集部
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